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第十三話『捨て駒への道』

「ここの神殿には、あなたと門番しかいないのですか?」リカルダスがシントリスタに聞いた。

「神々が、直接こんな所に現れるはずがなかろう」

「それもそうだね」リカルダスが納得した。

「それはそうと『レムリア』って知ってますか?」

「! レムリア?」シントリスタはぎくりとした。

「知ってんだね?」リカルダスがシントリスタに詰め寄った。

「知っていても知らないね。『神々の試練』に勝ったからって言えないね。『神のご加護』を得たからって、言えないね」シントリスタはしらばっくれた。

「教えてよ」

「ダメだね。守秘義務破りになる」

「何処で教えてもらえんの?」

「王都アテネに行きなさい。教えてもらえるかも知れないよ」

「じゃあ、行ってみるよ! 誰を訪ねればいいの?」

「宮廷歴史家のイストリア(historia)を訪ねなさい。私から聞いたとは言わないように」

「分かりました(あなたの紹介だと伝えます)」リカルダスとエルピーダは頭をさげながらほくそ笑んだ。

「? (意外にあっさりしているなー)」シントリスタは拍子抜けした。もっとしつこく聞きまわされるのかと思っていたからだ。

「お主たちは、夢大陸レムリアを探してどうする? 『王道楽土』でも作る気か?」

「・・・ニヤリ。(それだ!)」

「・・・ニヤリ。(それですね!)」二人とも同時にニヤけた。

「きゅ~」エルデムが反応した。

「まぁ、探せたところでどうにもなるまい。人間如きにはな・・・」

「・・・?」二人とも、シントリスタの最後のひと言が気になった。


「それはそうと、お主たちはレベルが上がっとるのぅ。一端状態(ステータス)を整理して、能力(アビリティ)を確認しよう」シントリスタが言った。

「気付きませんでした。上がっていましたか?」リカルダスは自分のレベルアップに気付いていなかった。

「レベルは、敵を倒したときだけ上がるものではない。負け戦でも、あらゆる手段を試みたことで上がることもある」

「なるほど・・・。死にかけたりしましたから・・・」

「赤茶色かみの毛君。キミはLv30だ。丁度いいの。職業を変えなさい。新しいスキルを獲得しておる」

「新しい職業は何ですか?」

「ズバリ『剝奪師(プランドラー)』だ。相手のスキルを盗むどころか、根こそぎ奪える職業だ。剥奪された相手は、文字通り、何も残らん」

「今までとどう違いますか?」

「『窃盗師』は倒した相手からしかスキルを盗めなかったが、『剝奪師』は戦いの最中でもスキルを奪うことが出来る。相手のレベルを吸い取った後も、相手のレベルを一気に5~50下げることが出来る。しかし、ライフを奪えるのは『窃盗師』と変わらん。死にかけの相手からだけだ」

「それは、凄い職業です」

「リカルダス様に相応しい職業です」

「お主も、レベルが上がっておるのぅ」シントリスタは、今度はエルピーダに向き直った。

「私もですか?」

「窃盗師Lv25じゃ。(ロカ)系、(トルエノ)系、補助魔法系の相性がいいであろう。本格的な魔術師系に進めるかも知れんの」

「ありがとうございます。すぐに術を買い求めます」

「二人で同じ道を歩むか、違う道を辿るか。これからの成長次第だの」

「ありがとうございます」


リカルダスは気になることが一つあった。

「先ほど、この二年ほどで十数人が『神々の試練』を受けに来たと仰っていましたが、どんな人たちが来ましたか?」と、質問した。

「光の騎士、巨大な剣を持つ格闘家、東洋人の忍者、やせ細った魔術師、龍の騎士、ゴーレムの武闘家、操り人形魔術師、格闘家魔術師、自惚れ邪悪司祭、ゾンビ武闘家、獣武闘家、召喚術剣士、・・・他にもいたなぁ・・・」

「・・・個性的な方ばかりですね」エルピーダが言った。

「東洋の忍者は、呀龍だ! ここに来たのか! 誰と闘いましたか?」

「それは、言えんな。守秘義務だ」シントリスタは回答を拒んだ。

「(くっくっく。東洋の忍者はワシの陣営ががスカウトしたわ・・・)」二人に気付かれないようにニヤけた。

【シントリスタの回想】髭の生えた猟師に導かれて『神々の試練』を受けに来た呀龍は、地獄の番犬「ケルベロス」を分身の術と苦無で倒した。

「拙者は、獣系と相性が良いで御座る」呀龍は勝ち誇った。

「挑戦者の勝ちー!」シントリスタは、勝ち名乗りを挙げた。

「拙者は、試練を乗り切れたで御座るか?」

「見事に乗り切ったで御座るよ」とシントリスタが言うと、目の前に(地上最大の英雄)『ヘラクレス』が現れた。

「以後、お前を助けよう」

「ギリシャ神話の最大の英雄ではないか!」シントリスタは驚愕した。

「これで、我が陣営は安泰だ!」髭の生えた猟師は歓喜した。ニヤケる二人だったが、呀龍には意味が分からなかった。呀龍が「神々の試練」を受けた一切が、リカルダスとエルピーダの頭の中に映像として流れてきた。

「(ほうぅ。ヘラクレスを引き当てたか。やるなぁ・・・)」リカルダスは感心した。

「(何人もの人が、神様のご加護を頂いています。これは、どういう意味があるのだろう・・・?)」エルピーダが疑問に思った。


「巨大な剣を持つ格闘家はきっと、アーヴィンだ!」リカルダスはシントリスタの顔を見た。

「・・・」シントリスタは沈黙を貫いた。

「そうか、教えてくれないのか、残念だ・・・」リカルダスは悔しがった。

【シントリスタの回想】十二時の方向を選んだアーヴィンは、狼とハゲワシが合体したような怪物と闘った。

「これが、髪のご加護か? 案外弱いな・・・」アーヴィンは、吐き捨てた。

「挑戦者の勝ちー!」シントリスタは、勝ち名乗りを挙げた。目の前に会わられたのは(戦争の神)『アレス』だった。

「今後お前に力を貸してやってもいいぞ! 存分に暴れるがいい!」

「くくく・・・。それでは、力を借りようかのぅ・・・」アーヴィンは、神殿を後にした。シントリスタがスカウトしないのを見た門番は、神殿の外に出たアーヴィンに声をかけた。

「(くっくっく。誰も声をかけないのかねぇ。こんな逸材(いつざい)を! 声をかけない理由もわかる。コイツは、敵にはなるが、味方にはならない性格だ! アレスを引き当てるんだ。問題児だ。しかし、だからこそスカウトするんだよ! 手ゴマは多い方がいい。たとえ捨て駒でもな!)」アーヴィンは、門番にスカウトされ何処(いずこ)かへ姿を消した。

「(くっくっく。コイツを連れて行けば、10万ドラクマルクになる。美味しいぜ!)」門番は、下衆な笑みを浮かべた。アーヴィンが「神々の試練」を受けた一切が、リカルダスとエルピーダの頭の中に映像として流れてきた。

「(ほうほう、そんなことがあったのか・・・)」と、リカルダスは思った。

「(二人とも試練を受けに来ていたんですね)」と、エルピーダは思った。


「光の騎士ってどんな人でしたか?」リカルダスは何気なく質問した。

「教えることは、出来ないと言っているだろう!」シントリスタはイラついた。

【シントリスタの回想】金髪に輝く長髪に、(わし)を模った兜が印象的だった。白い鎧は金色で(ふち)取られており、緑色のペルシャ風のきらびやかな文様が入っていた。全身から善意のオーラを放っている好青年だった。神殿内に入ってきてアーヴィンと同じ十二時方向を選んだ。

「わたくしは、ここを選びましょう!」と言って、剣を抜いて盾を構えた。

「さぁ、存分に戦いましょう! 全力を出すことでしか、分かり合えぬこともあるのです! 私の名はアスタル(aster)、暗黒の世に降り立ち、光り輝く一筋の星となる運命を託されています!」

「(何だ! 何だ? コイツは・・・。主役か?)」シントリスタは困惑した。そして、アスタルの目の前に現れたのは、体長10mほどもあるクラーケンだった。

クラーケンが現れると同時に、神殿内に海水が流れ込んできた。アスタルは、岩場に立ちクラーケンに立ち向かった。空が曇り、雲のすき間から太陽が差し込んだ。雷が鳴り、雨が降り出した。いつしか神殿内の壁がなくなっており、海上戦が展開された。アスタルは剣を天空に(かざ)し、落雷を受けた。

「雷の(ライトニングソード)!」と叫んで、受けた雷をクラーケンに放つと同時に、腕を二本ほど叩き斬った。

「爆発の剣!(エクスプロシオン)」と叫んで、クラーケンを葬り去った。クラーケンは内部からはじけ飛んだ。

「挑戦者の勝ちー!」シントリスタは、勝ち名乗りを挙げた。アスタルの目の前に現れたのは(海・地震の神)『ポセイドン』だった。

「今後貴様に力を貸そうではないか! ワシの力になりなさい!」

「ありがたく存じます」アスタルは丁寧に頭を下げた。

「(ほほぅ。強いな彼は・・・。仲間に欲しいな・・・)」リカルダスは感心した。

「(性格が、主役ですね。誰しもが、仲間にしたい存在です)」エルピーダも感心した。


「やせ細った魔術師って、どんな勝ち方をしましたか?」

「知らん! 何も覚えていないわい!」シントリスタはしらばっくれた。

【シントリスタの回想】群青色のローブを身にまとった、病弱そうな魔術師だった。神殿に入ると、一時の方角を力無く指さした。

「げほっ」と、咳をすると目の前に鷲を模った兜を被った巨人が現れた。

「(ティタン族の巨人ではないか! コイツ、こんなものを引き当てた! 勝てるか?)」シントリスタは驚愕した。

「ふふっ、軟弱な小僧ではないか。一つ術を出してみなさい。受けきって見せよう」巨人は魔術師を見下していました。

「げふっ、全ての物を包み込み、全ての物を我が物に・・・。引力(グラベダ)!」やせ細った魔術師を邪悪な闇が包み込み、その闇が肥大して巨人を包み込んだ。

「ぐ、わっ!」巨人は、その闇に包み込まれて消えていなくなった。

「? 魔術師の勝ちか?」シントリスタは戸惑った。

「小僧・・・。やるではないか・・・。迂闊(うかつ)だったわ!」魔術師の目の前に現れたのは(宇宙・天空・雷の神であり最高神である)『ゼウス』だった。

「まぁ、暇つぶし程度なら、力を貸してやろう。その代わりに、私の手足になりなさい」とゼウスは命じた。

「ありがとうございます」魔術師は力なく頭を下げた。

「(! ゾフォスだ! 何故、ここに!)」リカルダスに衝撃が走った。


12人の「キャラ大喜利」をしてしまいました。この12人は、今後の物語の中で全員出てきます。

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