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第一話『窃盗師(スティーラー)リカルダス』

【レムリア大陸】愛と平和に満ち高度な精神文明が栄えた、インド洋に存在したとされる大陸。

【アトランティス大陸】『地上の楽園』とうたわれ高度な物質文明を築いた、大西洋に存在したとされる大陸。

【ムー大陸】かつてない栄華を極めたが天変地異により一夜にして滅んだという、太平洋に存在したとされる大陸。

読者諸兄姉は、これらの大陸をご存知だろうか? この物語は、これらの三つの大陸の滅亡の真相に迫ります。「壮大なホラ話」をお楽しみください。

かつて栄えた高度な文明たちは、時代とともに風化し、伝説として忘れ去られようとしていた。好奇心に溢れる、一人の男が発掘するまでは。


第一章『エーゲ海・放浪編』

第一話「窃盗師(スティーラー)リカルダス(Ricardus)」


【エンペラドール暦612年】

ユーラシア大陸の西に浮かぶブリトン島では、かの伝説的なアーサー王が「円卓の騎士団」を結成し、島を統一してから数十年の月日が流れていた。大陸の東に浮かぶジパング島では、人格と人徳に溢れた統治者により善政がしかれていた。世はまさに「剣と魔法」の戦国時代。強い者が当たり前のようにのし上がれる「夢と力と魔法」の時代であった。


【ペロポネソス半島の都市:スパルタ】

夕暮れの森の中を、茶色のローブを着て、フードを深く被った一人の男が旅をしていた。ズタ袋を背負って1.5mほどもあるクルミの杖をついて歩いていたが、荷物はそれだけらしかった。もうすぐ森を抜けるというところだったが、ずっと盗賊に狙われていた。

「来たぞ! 配置につけ!」山賊のリーダーが手下に合図を出して襲撃態勢に入った。

「! キュ~」男の懐からリスが出てきて危険を知らせた。

「エルデム(Erdem)ちゃん、気付いていたさ。敵は六人の筈だ・・・。殺意はあるが、悪意はない・・・。おかしいな、山賊ではないのか?」男はリスを懐に隠し、臨戦態勢に入った。

「風の障壁!(バリーラ・デ・ビエント) (Lv.25)」男は、左手の人差し指と中指を立て鼻の前に持ってきて呪文を唱えた。すると男のまわりに、薄い10㎝ほどの目に見えない風の膜が出来た。

上昇(エレバール)! +5 (Lv.25→30)」[ストックレベル80→75]山賊の頭領が、男の目の前に現れて忠告した。

「おい、そこのよそ者のお前! 身ぐるみ置いて、立ち去りな! スパルタとアテネは戦争中だ! 怪しい奴を通すわけにはいかない!」頭領は、巨大な斧を突き付けて命令してきた。仲間は頭領の背後に二人いた。

「(伏兵が、あと三人いるはずだ・・・)」と、男は身構えた。

「嫌だね! この中にはお宝がたんまり入っているんだ! 簡単に、くれてやるわけにはいかないね!」あっかんべーをしながら答えた。フードを取ると、赤茶色のチリチリ髪が現れた。左の頬には、火傷の痕か、刀の切り傷のようなものがあった。

「普段は木だけ切ってりゃいいんだが、こう不景気じゃ、山賊でもするしかねぇ! お前には恨みはないが、俺らを恨むなよ! 世の中の貧困を恨め!」と言って、斧を両手で構え背後に振りかぶった。

「言い訳は聞いた! お前らも、俺にやられても恨むなよ! 俺もお前らには恨みはない!」と言って杖を構えた。

斬りかかって来る頭領の斧の刃先を(かわ)し、小器用(こきよう)に柄の部分を杖で受け流した。体を捻ると同時に頭領の身体を手のひらで触れた。

吸収(アブソルシオン)!」

「触っただけか? 何だ? その一撃は!」

「これでいいんだよ。俺の場合、体に触れだだけでいい」すると、頭領の力が少し抜けた。

「(ガクン!) 何だこれ?」

「ん~? レベルが一つ下がったのさ・・・。戦士レベル7か。思ったよりも少ないね・・・」頭領のレベルが6に下がった。頭領のレベルを吸収して自分のものにしたリカルダスだが、ストックレベルは75から上限の80に戻った。

「相手のレベルを下げるだと? お前は何者だ?」

「俺は、魔術師系(マジシャン)窃盗師(スティーラー)だ! アンタの基礎レベル7つ頂いた。今のアンタは、基礎レベル6だ。俺は、相手に触れば触るほどレベルを吸収して下げることが出来る。そしてどんどんスキルを盗むことが出来る。でも今謝れば、返してあげるけど、どうする?」と軽やかに聞いた。

「そんなことが、ある筈がねぇ!」と言って、飛び掛かって来た手下を軽くあしらった。あしらわれた手下は叫んだ。

「? 何ともないぞ! やっぱりハッタリだ!」

「ん~? お前はレベルが低すぎだな。盗むものが何もない。戦い損だ!」

「めんどくせー! やっちまえ! モンターニャ(montana)、リノ(Rio)! 行くぞ!」頭領の合図とともに、本格的な戦闘が始まった。三人同時の攻撃は、男に全く当たらなかった。

「お前のレベルが低すぎるんだよ。だから、魔術師の俺にまるで攻撃が当たらない。ちっ、諦めないのか? 面倒だな!」面倒くさくなった男は、素早く印を結んだ。右手の人差し指と中指を立て、左手と組み合わせた。

「火の柱!(クルンマ・デ・フエゴ)」即座に三人の山賊を火柱が包んだ。

「ぐわえぇ~!!!」

「ぐ、ぐお~! ウノ(Uno)、ドス(Dos)、トレス(Tres)! 今だ! 打て~~!」頭領に命令された三人の伏兵は、それぞれに矢を放った。男の背後から横から、同時に三本の矢が飛んできた。が、男に当たると軌道を変えて、威力を失って、それぞれに力無く落ちた。

「ぽて・・・」

「ぽて・・・」

「ぽて・・・」

「あ~、レベルが三つ下がっちまったよ。もったいね~」(Lv30→27:消滅判定失敗! 消滅回避!)男は矢の飛んできた方向に向き直ると、

「そこか! 火の(フレチャ・デ・フエゴ)!」三本の火の矢が三人の伏兵に次々と突き刺さった。

「グサッ、 ぐえ~~!」 

「グサッ、 ぐわ~!」

「グサッ、 あっち~!」バタバタバタ、と伏兵が木から落ちてのたうち回った。

「何だ、お前ら? そんなもんか?」一人ずつ顔を確認していった。

「まぁ、大した殺意もなかったし、見逃してやるよ。レベルとスキルだけもらっておく。命だけは助けてやるよ」と言って、右手の人差し指と中指を立てそれぞれの悲鳴をあげている山賊の額にあてた。

「お前は、2レベル。スキル無し! お前は2レベル。スキル無し! お前は2レベル・・・・。スキルは無いね・・・。ってか、お前らレベル低過ぎ! 誰も何のスキルもないのか?」木から落ちた三人を諦めて、頭領たちの方へ移動した。

「こっちは、4レベル。そっちは3レベルか・・・。しけてんな~」やはり、盗める物は何もなかった。呆れながら、最後に頭領のレベルとスキルを貰いに行った。

「どれどれ、頭領ならレベルが高いだろう・・・。うむ。やっぱり7レベルか! しけてんな~。お前も大したスキルも持ってないし、戦い損だよ! 消えろ(サリール)!」と言って、術を解いた。

「ぜ~! ぜ~! は~!」山賊たちの息が荒かった。

「六人いたからな。レベルの低い三人を木の上に待機させ三方向から矢で射る。レベルの高い三人が目の前に立ちはだかり、逃げ道をふさぐ作戦か。狙いは悪くないが、実戦経験の少なさと個人個人のレベルの低さが災いしたな。それでは勝てないよ」

「・・・」頭領は、黙って聞いていた。

「火は消えているんだ。苦しくないだろ?」山賊たちは火に包まれていたはずだが、怪我をしていなかった。

「あれ? 俺たち平気?」

「焼かれたハズだが・・・」

「幻術だよ~。お前ら全然怖くないもん。脅しで充分だ」男は、身支度を整えながら言った。頭領は男に向き直ると聞いた。

「俺たちをこのまま、放っておくのか? お前を襲ったんだぞ!」

「まぁ、勝つのは分かっていたし許してやるよ。それにしても、六人合わせて合計20レベルしかないのか? お前ら弱すぎ~。これで俺に勝てる訳がないじゃん! まぁ、仕方ないか。弱さに免じて許してやるよ。じゃあね~」と、言いながら歩き出した。

「名前ぐらい、名乗るもんだ!」と、頭領は言ってみた。

「ロードス島から来た、リカルダス(Ricardus)だよ~!」

「俺は、バンディドス(Bandidos)だ! 借りは返す!」

「忘れなかったら、覚えておくヨ~!」

「忘れるなよ!」

「忘れていたら、覚え直すよ~!」リカルダスの声は小さくなった。そして、辺りは闇に包まれた。山賊の一人がバンディドスに聞いた。

「頭領、ロードス島から来たということは、クレタ島を通って着たはずです。クレタ島では最近結構大きな戦があったはずです。アイツは、そこから来たというのでしょうか?」

「うむ。アイツは、そこの生き残りか? 数千人ほど死んだはずだが、アイツが怪我一つしていないのはおかしいな? 調べてみるか・・・」山賊の一味は、リカルダスと名乗った男を追った。



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