チェレンコフ光を待つ【詩】
空気シャワーが散らすミューオン
ニュートリノの雨は
肌を打つことなく
わたしを通りすぎていく
京とか垓とか秭とか穣とか
そういう途方もない素通りの中で
運良くわたしの体内の
最も純な水に出会ったなら
もしかしたら 青い 青い
チェレンコフ光を放つのかもしれない
きれいと思うだろうか
それとも恐怖するだろうか
体内の一瞬の輝きを
とらえられる人は多分いなくて
ただ、
ああ 今 光ったんだろうなぁと
想像するばかり
(けれどもその輝きを捉えようとする人々がいる)
(なんてこと!)
わたしを通りすぎた素粒子は
地球の裏側から
また宇宙へ飛んでいく
そういう離合があったなら
大切な思い出としてとっておきたいね
ところで 体の中で最も純な水って
なんだろう
赤ちゃんのよだれかな
2025.8.14制作。