第1部 もう一つの世界 第1章 異次元の世界 ①
まずは 異世界のフィラ星が どんな社会で どんなルールのもとで生活しているのかを ご理解していただいて ストーリーを始めますね
2005-1-16(初稿) 2025/06/30 15:02 再投稿
フィラ星は、地球から遠く離れた星ではない。
次元の違うもう一つの世界。
地球とは違うが、兄弟のように同じ環境で育った星、と言った方がわかりやすいと思う。
フィラ星で生活しているフィランの姿も、この地球の人類と、ほとんど変わりはない。
地球と同じように、月や太陽に似た星の影響を受け、進化してきたフィランは、今の地球の人間にさりげなく交じっていても、その違いはわからないだろう。
フィランの生活も、地球とそれほど変わりはない。
ただ、フィラ星では、地球のように、超高層ビルが建ち並ぶという風景は、見当たらない。
ドームという、広い大地を覆った建物の中で、都市が形成され、ドームとドームがつながって、大きなエリアへと広がっていった。
点々とあるエリアには、それぞれにタイプがある。
新しいライフスタイルへ日々進化するエリアと、気軽に自由な生活を楽しむエリア。
2つのタイプのエリアが繁栄することで、この星の経済が動いている。
あらゆる食料を供給するエリア、生活に必要な技術や道具を提供するエリアが、その生活を支えている。
フィラ星から宇宙へと、宇宙船に乗って、生活の場を広げてゆく人々もいる。それを可能にする技術や産業も発展し、周りの星に移住した人々が、新しいエリアを創設した。
別の側面では、いろんなエリアで、民族や階級の違いによる縄張り争いの中、一発触発を回避しながら、共存共栄を図ろうとしている。
時には、民族や階級の違いが、大きなストレスや壁となって、紛争に発展し、ドームの外へと追い出される人達もいた。
そのことで、ドーム内外での貧富の差を生み出し、紛争は絶えずどこかで起こった。
そんな中、さまざまな分野で特徴を生かした小さなエリアも点在し、周りのエリアに原材料や製品などを輸出し、競争の激しいエリアの生き残りをかけて、駆け引きを行っている。
住む場所によって、言葉や習慣の違いはあっても、フィラ星の共通ルールで、仕事を分担し、与えられた任務を果たすと、ティムという単位でお金を受け取る。
これは、どのエリアにも流通しているマネー単位だ。
もちろん、フィラ星の各エリアには、独自のマネーが存在し、ネットで買い物をするための企業マネーも、さまざまに存在している。
ただ、そのエリアやマネーを扱う企業の状況によって、価値が変動するし、トラブルもあり、悪用されやすい。
そこで、合理的な生活を求めるフィラ星では、すべてのエリアで使用できる、統一したティムという通貨単位を普及させ、エリア間での交換に伴う問題を一掃した。
今の地球では、輸入に関税を加えることで、自国の利益を守ろうと、他国に圧力を加える国もある。
こういったやり方は、一時的には、有効な場合もあり、自国を守るためには必要なことかもしれない。
しかし、それが発端で友好関係が築けなくなり、紛争が起こる場合もある。
また、双方の輸出入に必要以上のコストがかかり、物価が上がる一方で、多くの人が生活に困難をきたしてしまう。
あらゆるエリアが共通して利用する資源を、コストを抑えて、各エリアへと分配することを目指すフィラ星では、そういった考えは一部にはあるかもしれないが、主流ではない。
どのエリアにいても、働いた給料が、ティムで自分の口座に振り込まれ、それから購入代金、光熱費、家賃、食事代、各種保険や税金などが引き落とされる。
私たちがスマホを使って生活しているように、フィランの生活は、フォラという情報機器が、支配している。
人々は、フォラで自分の口座の残高と、投資額の増減と、今後の収入のシミュレーションを確認しながら、旅行・デート・趣味・買い物等のプランを立てている。
フィランのフォラは、私達が使っているスマホより、格段に便利だ。
フォラは、腕にはめて使うのが主流だが、自分の身体・服・メガネ・アクセサリーに埋め込んで使う人もいる。
フィランは、このフォラの操作で、行きたい場所へ自分を転送できるし、モノも瞬間移動できる。とても便利な道具だ。
しかし、転送先が安全な場所とは限らない。
フォラでは判別できない障害物にぶつかって、人が大ケガをしたり、送ったモノが転送ミスで大破したり、ゼンゼン違う場所へと転送されたりと、被害も多く発生している。
そこで、緊急の場合を除いて、フォラだけで転送することは禁止。
フォラインという転送装置と、そのリモコンとして、フォラを利用した移動が、基本のルールになっている。
人の転送用としては、ドームの各階のフロアに、大人が3,4人入れるくらいのペアのフォラインが、点々と置いてある。
フォラインの右手が送り側。中に入って、フォラで行き先を指定すると、数秒後には希望する地点のフォラインの左手、受け側にたどり着く。
同じフォラインに、同時に転送しようとする人が何人いても、ボス・コンピュータからの指示で、重ならないように待ち時間があり、順序良く転送が行われるのだ。
ドーム内の住宅街は、同じような廊下が延々と続いているから、番地だけでは、自分がどこにいるのかも、さっぱりわからないことがある。
しかし、そんな時だって、フォラが目の前に3次元ホログラムを映し出し、現在地と行き先への道案内をしてくれる。
もちろん、人だけでなく、モノの転送にも、きちんとルールが定めてある。
製造されたモノは、企業名・製造場所・移動経路・所有者などがコード形式で表示され、ボス・コンピュータにも、暗号化されたコードが、圧縮して記録される。
モノの現在の位置も、フォラのGPS探索アプリで確認でき、壊れていなければ、瞬間移動で持ち主の所に返還することも可能だ。
ドームの住民の各部屋には、ネットの売買に利用する、モノの転送用のフォラインがある。
食べ物は、テーブルの上に置いた専用のフォラインに、大きな品物は、物置くらいのフォラインに転送される。
ただ、地球でもありがちだが、他人のモノを勝手に転送して、自分のモノとして使ったり、他の人に転売して儲けを企んだりする人達がいる。
このように、自分のモノを勝手に人に盗られてしまった時、フィラ星では、被害者が警察のメルアドに、被害届をフォラで送信すればよい。
警察は、フォラによる被害の内容が、秒刻みでメール処理をするAI機能で事実と認定されると、モノの場合は、製造コードとGPSで、現在の位置を特定して、犯人を追及する。
偽造したモノも、フォラをかざせば、製造コードを確認でき、ボス・コンピュータに記録されたコードと突き合わせ、本物かどうかをチェックすれば、偽物だとバレてしまう。
そうはいっても、地球と同様、犯罪はいつになってもなくなることはない。
日々、あらゆる場所にAI機能のついた防犯カメラが設置され、犯罪か否かを判定しながら監視を続けているが、犯罪の多さと巧妙さに対して、摘発数が追いつかないのが現状だ。
犯罪に対する教育も行われているが、人に隠れて悪さをして得をしたいと思うのが、人間の本性なのかもしれない。
どんなルール違反に対しても、罰則が決められ、犯人が逮捕され、裁判で罪が確定すると、罰則に応じたマネーの支払いか、役務を終えないと、その後の生活は保障されない。
ルール違反をすると、自分のフォラから警告を受けることもある。それを無視して違反を続けると、フォラが自動的に警察に通報するシステムになっている。
そのフォラに不正なプログラムを仕込んで、逮捕を免れようとする輩もいるが・・・
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