表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

企画参加作品

予知鳥

作者: keikato

 小鳥を飼うことになった。

 それは文鳥で、それまで友人が飼っていたものである。

 その友人によると、このたび会社の人事異動で遠くの町に転勤することになり、そこでは会社の寮に入ることになった。だが、その寮は生き物の持ち込みが禁止で、それで文鳥の処遇にこまり、気心の知れた私にしばらく託したいとのことだった。


 我が家には四歳の娘がいて、娘は文鳥と一緒に暮らすことを大いに喜んだ。そしてその文鳥のことをブンちゃんと呼んで、毎日よくかまって話しかけていた。

 文鳥も娘と一緒にいるのが嬉しいのか、娘が話しかけると、それにこたえるように美しい声でさえずっていた。

 そんなある日。

 買い物に出かけるとき、外はよく晴れているというのに、娘が自分の傘を手にしている。

「ブンちゃんがね、今日は雨がいっぱい降るって」

 娘が言うには、文鳥がもうじき大雨が降り始めると話していたのだという。それで娘は傘を持って出ると言って、どうしても傘を手放そうとしなかった。

 買い物途中。

 娘の言ったとおりとなり、私たちは急な大雨に見舞われた。

 娘は持ってきた傘で濡れずに助かった。

 かたや私はずぶ濡れになってしまった。

 文鳥の天気予報は娘の妄想で、雨が降ったことは単なる偶然の一致にすぎないのだろう。

 それにインコやオウムならまだしも、文鳥が人の言葉をしゃべるなんて聞いたことがない。

 私はそう思っていた。

 しかしその後も、娘がブンちゃんから聞いたということが、現実として起こることが何度も続いた。

 ただの偶然にしては続きすぎる。

 これらの一致の不思議に、私は文鳥を残していった友人に電話をして、以前にもそのようなことがあったのか確認をしてみた。

 友人が笑って言う。

 そんなことがあるわけがない。たとえ文鳥にそうした能力があったとしても、文鳥の鳴くことがわかるなんて、その方がよほど不思議な能力ではないかと……。

 冷静に考えればまったくそのとおりである。


 そして今日。

 目に涙をためた娘が私に言った。

「さっきブンちゃんが言ったの、もうすぐママがいなくなっちゃうって」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
予想外のラストでした。 これは怖すぎる! こういうのは教えてくれるだけで避けられないことが多いというのが悲しい所です……。 ついでに回避方法も教えてくれると助かるとは思うのですが……。
「梅雨のじめじめ企画」より読ませていただきました。 幼い頃って、何かが見えたり、不思議なことを体験したりしますよね。 最後のオチ、私的には当たらないとみた・・・。 これが実は女の子の予知だったら話は…
この予言を聞いて怖くなっていなくなるというパラドックス
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ