予知鳥
小鳥を飼うことになった。
それは文鳥で、それまで友人が飼っていたものである。
その友人によると、このたび会社の人事異動で遠くの町に転勤することになり、そこでは会社の寮に入ることになった。だが、その寮は生き物の持ち込みが禁止で、それで文鳥の処遇にこまり、気心の知れた私にしばらく託したいとのことだった。
我が家には四歳の娘がいて、娘は文鳥と一緒に暮らすことを大いに喜んだ。そしてその文鳥のことをブンちゃんと呼んで、毎日よくかまって話しかけていた。
文鳥も娘と一緒にいるのが嬉しいのか、娘が話しかけると、それにこたえるように美しい声でさえずっていた。
そんなある日。
買い物に出かけるとき、外はよく晴れているというのに、娘が自分の傘を手にしている。
「ブンちゃんがね、今日は雨がいっぱい降るって」
娘が言うには、文鳥がもうじき大雨が降り始めると話していたのだという。それで娘は傘を持って出ると言って、どうしても傘を手放そうとしなかった。
買い物途中。
娘の言ったとおりとなり、私たちは急な大雨に見舞われた。
娘は持ってきた傘で濡れずに助かった。
かたや私はずぶ濡れになってしまった。
文鳥の天気予報は娘の妄想で、雨が降ったことは単なる偶然の一致にすぎないのだろう。
それにインコやオウムならまだしも、文鳥が人の言葉をしゃべるなんて聞いたことがない。
私はそう思っていた。
しかしその後も、娘がブンちゃんから聞いたということが、現実として起こることが何度も続いた。
ただの偶然にしては続きすぎる。
これらの一致の不思議に、私は文鳥を残していった友人に電話をして、以前にもそのようなことがあったのか確認をしてみた。
友人が笑って言う。
そんなことがあるわけがない。たとえ文鳥にそうした能力があったとしても、文鳥の鳴くことがわかるなんて、その方がよほど不思議な能力ではないかと……。
冷静に考えればまったくそのとおりである。
そして今日。
目に涙をためた娘が私に言った。
「さっきブンちゃんが言ったの、もうすぐママがいなくなっちゃうって」