第1話
ここはとある貴族家の一室。
夕食も終わり、食後のティータイム中である。
「シュウトももうすぐ十二才だな。将来の事は考えているのか?」
「はい、父上。僕も父上や兄上達と同じ騎士の道に進もうと思ってます」
当主であろう男性の問いに一番若い子が答える。
「そうか。これまでも何度となく話してきたが、他の人と違う事で苦労する事があるやもしれない。その覚悟もあるんだな」
その問いにシュウトは力強くうなずく。
そのうなずきにシュウトの母も違う道もあるといった話をするのはもう止めようと思うのだった。
シュウトは騎士爵家の三男である。
騎士の子はやはり騎士に憧れるものなのだろうか?
ただシュウトは左利きである。
これまで左利きの騎士というのは聞いた事がない。
それゆえにどんな苦労が待っているか想像が出来なかった。
そのため他の道もあると折を見ては繰り返し話してきたのだが。
ちなみに騎士爵とは一代限りの爵位で子供に後を継ぐ権利はない。
騎士として国に多大な功績をした者に対して与えられる爵位である。
その功績ゆえなのか伯爵相当の権力を有している。
ある程度は騎士爵家という肩書が守ってくれると信じるしかなかった。
「それでは誕生日には『契約の儀』を受けに行く。皆もそれでよいな」
当主のその問いに執事やメイドも含む全員が「はい」と答えるのだった。
『契約の儀』とは、召喚獣と契約をして魔力を使う能力を得る事である。
この世界には一般的な動物の他に魔力を持った獣達がいる。
例えば犬型の獣であれば、人間と契約したものは『犬型の召喚獣』と呼ばれ、野生のものは『犬型の魔獣』と呼ばれている。
魔獣は強大な力を持っており、対抗するには人間も魔力を得る必要がある。
その為の方法が『契約の儀』である。
魔力を得る事自体は誰でも出来るのだが『契約の儀』を受けられるのは騎士を志す者のみ、という規則があり十二才になると受ける事ができ、その後『騎士養成学校』に三年間通う事になる。
それから少ししてシュウト十二才の誕生日の日がやってきた。
シュウトの他には父コウセイと母シオリ、次兄のナツキとシュウト専属メイドのマリコが馬車に乗り、『契約の儀』を受けられる寺院へとやってきた。
マリコには馬車に残るように指示を出し、寺院の門を開き四人で中へと進んで行くと寺院の入口前で住職が出迎えてくれた。
「ご無沙汰いたしております。本日はよろしくお願いします」
「青葉さま、お久しぶりでございます。本日はご三男のシュウト様の『契約の儀』でございましたな」
「はい、よき獣と出合えるとよいのですが」
「そうですね。ご承知の通り、我々は儀式を行なうのみ。どのような獣と契約する事になるかはわからないものですので、そうなるよう祈りましょう」
とコウセイと住職が挨拶を交わす。
「それでは参りましょう」と中へと進んでいき奥の一室の前で立ち止まる。
「それではシュウト様と青葉様は『契約の間』にお入りください。奥様とナツキ様は隣の部屋でお待ちください」
と言われ、それぞれの部屋へと入り、いよいよ『契約の儀』が始まる。




