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第6章4

王家が支配し、魔導士が魔法を使い、魔物が徘徊する世界。修行僧のイオは城から抜け出してきた姫サリューと旅をする。大陸を巻き込む戦争が勃発し、それを止めるためにサリューが特使になってイオと共に奔走する。収束の兆しが見えてホッとして母国への帰路、南の国が攻め入ってきた。


「セス、あの……」

「おともします」

 厳として言い切った。

「でもさ……」

「たぶん、こんなことだとは思いました。今までずっと姫様をお育て申し上げたセスの目を逃れることなんてできませんよ」

 セスはミティの方に向いた。

「メンター・ミティ。しばらくお暇いたします」

「そうですね。それではこれを使いなさい」

 セスはミティから魔法使いの杖を受け取った。

「あのさ、セスって、魔法使いだったの」

 目を丸くする。生まれてからずっと付いてくれた乳母の割にはその素性を知らなかった。

「はい、昔取った杵柄です。まだ私の魔法が使えるなら、姫様のお役に立てるでしょう」

「勿論、イサもお伴します」

「姫様のことを頼むと、前から王様に言われていたからな」

「バロス、みんな……」

 涙がこぼれそうになる。いつだってこの三人はサリューの力になってくれる。

「ありがとう、でも足がないわ。南の兵たちが飛竜の厩舎を押さえているでしょう。第一飛竜じゃワイバーンに襲われたら一巻の終わりだわ」

「大丈夫です。先ほど、伝書のやり取りをしました。リアンさんが空虫で秘密の庵まで来てくれます」

「ああ、セス!」

 言うなりしがみついた。

「セス、いいの、あたし、また勝手に飛び出そうとしたのに」

「わかっております。姫様はこんな状態で大人しくされているお方ではありません。きっと何かやらかすと思っておりました」

「あ、エドには……」

 またこっそりと出て行ってしまっては、心配をかけてしまう。

「世継ぎの君も分かっていらっしゃいますよ」

 舞踏会で見せたエクゥードの表情、あれはサリューにほほ笑みかけていた。すべてを悟っているかの様に。

 一行は秘密の通路を出て待つ。夜になると、三匹の空虫が降りてきた。

「姫さんの頼みだからな」

 リアンが降り立つ。見るとエトラとミラーノもいる。

「恩は返さなくてはならない。空虫は誰かが付いていないと目的地には向かってくれないからね。君たちのためにはおれたちも一緒に来なくてはいけないのさ」

 ミラーノは包帯が取れていないが、かなり元気になっている。

「空虫の触手に絡まっていけば休みも取れます。夜のうちに山を超えて明け方には魔の山のふもとに出ます。でも、そこからはさすがの空虫も飛べないの。魔の山だから」

 エトラが申し訳なさそうに話す。

「そこまで行ってもらえるだけで助かるわ。早速出かけましょう」

 エトラの乗ってきた空虫にサリューとセスが、リアンの空虫にイサ、ミラーノのものにはバロスが乗った。

 闇の中、眼下には何も見えない。ただところどころ、明かりではない火が見える。くすぶるその火の下でどれだけの命が失われたか、サリューは胸が引き裂かれそうな思いで見おろしていた。

火龍の剣があれば、戦争を止めることができるのでは。伝説の剣を求めてサリューは旅立つ。

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