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転生令嬢マチルダ・リリカントの過酷な日々  作者: 劇団騎士道主催
第1章 転生と家族と青の祭剣
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7 来訪者

「どうかしました?」


「お客様がお越しになられました。ミスティオン子爵とご息女のグリシラ様です」


 グリシラっていうと昨日見た、あの手紙の束の、一番枚数が多かった子でしたか。マチルダと結構仲がいいような雰囲気だった人ですね。


「グリシラ様がぜひマチルダ様とお会いしたいとのことでしたので」


 正直乗り気じゃないです。何と言っても私はまだマチルダの人となりを知りませんので、下手に仲のいい人と会って話したりするのはまだまだ避けたいです。だいたい家族相手だって会うのが怖いっていうのに。


「そうでしたか。せっかくだけれど、昨日のこともあるし……」


「マチルダ様!」


 誰かが来ました。着飾った外見から見て明らかに使用人ではありません。ということは。


「……グリシラ?」


 クレアに客間の一つを用意してもらいました。給仕してもらいました。こういうのアニメとかで見たことありますが、いざ自分がこの場にいるとなると緊張します。


「……マチルダ様がお帰りになられた後、本当に大変でしたよ」


 グリシラが言うには、あの後、アイリーンは足早に立ち去っていったそうです。当然でしょうね。あれだけ目立ってしまったんですし。サリバン王子は追いかけようとしたんですがそういうわけにはいかなかったそうです。学院の学院の生徒だけではなく貴族たちも参加していたわけですから。といっても子爵、男爵ばかりで伯爵クラスはいないみたいですね。お父様だっていなかったのですから。

 王子は混乱収拾のため貴族の方々を集めて別の部屋に移動したそうです。

 残された生徒たちはというと、腹の探り合いだったようです。


「ひどい話です。昨日までみんなマチルダ様、マチルダ様ってくっついてきていた子たちが一斉に手の平を返すのですから。でも問題はどこにくっつくかです」


 王国の貴族たち、まとめて中央貴族界とか言われてるみたいです。有力な家はいくつかありますが中でも強大な影響力を持っていたのがリリカント家とメイデン家です。メイデン家は代々王立騎士団の団長職を継承している他、軍事方面において国王陛下に助言する立場にあるそうです。ちなみにリリカント家は政治方面での助言が多かったらしいです。

 ですがメイデン家にはちょうどいい年頃の子女がいません。なので学院内はリリカント家、つまりマチルダの影響力がかなり大きかったようです。

 でもそのリリカント家が王子の怒りに触れた。これまではマチルダが婚約者だったので、そのままいけばリリカント家は王室の身内となり更に絶大な影響力を持つことになります。もちろんメイデン家とのパワーバランスも崩れますし国内勢力の構造が大きく変わる、なんて危惧もされていたらしいです。そういうことならみんなマチルダについてきますよね。

 でも昨日のあれで全部流れてしまった。

 誰についていけばいいのか、みんな不安ですよね。

 王子はアイリーンとの婚約を進めようともしているとか噂が流れているらしいです。よくある無責任な噂ですけどみんながそう考えるのはごく自然ですね。先を知っている私からすればくっつくのは間違いないと思いますが。

 そもそもアイリーンは少し前から学院内で見かけなくなっていたらしく、逃げ出しただの、追い出されただの、いろいろと憶測が飛び交っていたようです。久しぶりに姿を現したのが昨日だったようです。

 アイリーンの境遇を見かねて王子がかくまっていたのではないか、というのが大方の予想だそうです。

 ……何だろう、私の知っている話と微妙に食い違うような。アイリーンと王子が出会うのってもっと先だったと思うんですが。

 サリバン王子は正義感の強い方で、貴族という存在、特に大きな影響力を持っているリリカントのような家を快く思っていないみたいです。事あるごとに批判的なことは言っていたみたいです。となると婚約破棄というのもかねてから機会をうかがっていたのかもしれません。


「今は大変でしょうけど大丈夫です。私はマチルダ様から離れてたりしませんから」


 グリシラが手を握ってきました。なんかちょっと圧倒されます。


「そ、そう、ありがとう。心強いです」


「勿体ないお言葉。学院入学初日にお声をかけてもらってからずっと、私と友人になっていただけているのですから、その恩を仇で返すことなんて絶対ありません」


「そんな、友達なんですから、恩とかそういうのじゃなくて素直に仲良くで十分ですよ」


「勿体ないお言葉です」


 なんだかいちいち大袈裟な気がします。

 ……グリシラの手紙がやけに多かったのも納得できました。マチルダはどんな気持ちで手紙とか書いてたんだろう。


「もちろん、お父様もリリカント伯爵を全力で支援したいとおっしゃっていました。それで今日リリカント伯爵を訪ねるとおっしゃったので無理を言ってついてきたんです」


「そうだったんですか」


 味方、と考えていいのでしょうか。

 昨日のことがあって真っ先に駆けつけてくれたんですからそう思っても大丈夫そうですが。


「マチルダ様、これを」


 グリシラはバッグから小さな箱を取り出して私に渡してくれました。

 開けてみるとイヤリングが入っていました。


「近いうちに何かプレゼントをと思っていまして。本来なら昨日お渡しするつもりだったのですが、あの騒ぎで叶わず。こういう時なのはわかっていますが、せめて気だけでも紛らわせられれば、と」


「気遣わせてしまってごめんなさい。でもありがとう。うれしいです」


 ちょっと付き合っていくには大変そうな部分もありますけど、いい子です。

 それにこういう状況ですと、味方の存在はありがたいです。

 ついでに私がアイリーンに何をやったのかも聞いてみたかったのですが、うっかり変なこと言うとまずいので止めておきましょう

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