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転生令嬢マチルダ・リリカントの過酷な日々  作者: 劇団騎士道主催
第1章 転生と家族と青の祭剣
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4 転生令嬢 4

 とりあえず着替えるんですが、それはクレアが手伝ってくれました。こういうのってアニメとかで見た時な何人も使用人が集まってきて為されるがまま、みたいな感じだったと思うんですがクレア一人で手際よく脱がされて行きます。何というか複雑なものですね。成人式の時に着物を着つけてもらったんですがそれよりも面倒なものです。

 そんなことを考えているといつのまにか圧迫感から解放されました。

 意外ですが下着は私も見慣れた普通というか、上下揃ってるものなんですね。こういう時代というか世界観だと下着ってネグリジェみたいなのかハーフパンツみたいなので、股の部分が縫われていないって聞いたことがありますけど、全然違いますね。

 それからクレアが持ってきてくれた服に着替えます。勝手にパジャマみたいなものを想像していたんですが、普通に余所に来ていけるような服です。さっきのドレスと違ってそんなに複雑でもありませんので一人で着られそうですね。形を整えるフレームみたいなものは多少入っていますがきつさは感じません。

 それでも鏡越しに映えるのは、マチルダのスタイルが一部分を除いてものすごく良いからです。骨格からしてスマートで、しばらく眺めていたいほどです。

 こういうシュッとしたスタイルには昔から憧れてました。子供のころから剣道を本格的にやっていて無駄に筋肉がついてしまったので叶わぬ願望でしたが、意図せず手に入れたというところです。

 ……なんかちょっと恥ずかしくなってきました。

 ま、まあとりあえず着替えは終わりました。


「ごゆっくりお休みください」


 着替えが終わったのでとりあえずは終わりです。

 クレアが出て行って部屋には私一人。

 まず何をしましょうか。

 情報を集めるのが先決ですね。

 日記か何かつけていないんですかね。とりあえず引き出しを漁ってみましょうか。

 日用品が整理されています。マチルダは綺麗好きなんでしょうか。それともクレアがやってくれているのでしょうか。あ、手紙があります。結構な量ですね。えーと、文字が見たことないものです。

 そりゃそうか。まさか異世界転生した先に”日本語”なんてあったら明らかにおかしいですもんね。

 でも、不思議なのは読めるということです。不思議ですね。でもそもそもさっきから普通に会話とかできてたんですから当たり前といえば当たり前ですか。

 不思議と言えば、私の言葉遣いもずいぶん変わってるような気がしますが。というか脳内の思考も、なんていうかお嬢様思考的な感じになってるような気がします。

 普段考え事してて、いちいち、ですます、なんてつけませんよ。

 どういうことなんでしょう。これも転生の影響でしょうか。

 やめましょう。謎が謎を呼びます。まずは目の前のものを調べましょう。

 手紙の内容は当たり障りのないものです。一番多いのはグリシラって人です。文面を見る限りずいぶんと好意的な人のようです。友達か後輩でしょうか。

 マチルダが出した手紙の写しとかは流石にないですね。あったらいろいろとマチルダの人となりを把握するうえで助かるんですが。

 それでも貴族として生きる人たちの人となりが分かるのは、今の私にとってありがたいことです。

 手紙を読む限り、マチルダは他の貴族子女と同じように王立学院というところへ通っていたようです。お嬢様学校みたいなものですね。手紙と一緒に出てきた資料によると、貴族社会における淑女の礼儀作法及び一般教養としての学問、魔術を総合的に学習すると共に、貴族間の精神的格差の解消を望み、現国王が創設した、とあります。

 お題目は立派ですけど、そうそううまくいくものではないと思いますね。

 貴族の格差なんて、結構えぐいって相場が決まってます。家の格が当人同士の格にそのまま紐づいちゃいますし。国王陛下はそこまで考えが及ばなかったのでしょうか。

 それとも陛下の意図がいつの間にか歪められてしまったとか。

 とりあえず手紙の内容から家族の名前は把握しました。お父様がアルガイル・リリカント、お母様がマデアン・リリカント、お兄様がグローデン・リリカント。これで全員だと思います。私が覚えていた家族構成とも一致していますし。他に何かめぼしい情報があればよかったんですけど、特にそういうものはありませんでした。


「マチルダ様」


 扉をノックする音とクレアの声です。

 中に入ってもらいます。持ってきた貰ったのは湯気の立ったミルクです。牛、なんですかね。そもそも普通に馬が馬車を引いていましたし、牛がいてもおかしくありません。そもそも私も含めたこの世界の人だって見た目から多分内側まで私の知ってる人間と全く変わりありませんから。

 でも冷蔵庫もないのにミルクなんてどうやって保存してたんでしょう。ミルクって常温保存できましたっけ? まさか今絞ってきたってわけじゃなさそうですし。

 もしかしたら魔法ですか。この世界には魔法がありますからね。しかも初歩的な物なら勉強すればほぼみんな使えるとか、そういう設定だったはずです。

 きっと氷魔法とか使ってるんでしょう。それなら納得できます。今度こっそり調べてみましょう。

 それと何か一緒に持っています。


「ご所望されていました新しい日記帳です」


 タイムリーなことです。マチルダは日記をつけていたんですね。

 でも新しいってことはどこかに古いものがあるんでしょうか。さっきから引き出しやら、その辺を漁っていますがそれらしいものは見当たりません。


「ありがとう。ところで古いものが見当たらなくて、何か知らない?」


「申し訳ありません。マチルダ様が管理されていましたので私には何とも」


「そ、そうよね。ごめんなさい、変なこと聞いてしまって」


「大丈夫です。いずれ見つかると思いますから」


 そう言ってクレアは微笑みました。でもなんでしょう。何か引っかかるようなものがあるような、ないようなそんな気がします。

 別に意地悪そうに笑っているわけではないので気のせいだと思いますが。


「そ、そう? だといいけど」


「それと、こちらを」


 クレアはペンダントを差し出してきました。透き通ったエメラルド色の宝石がはめ込まれています。手のひらに収まる程度の大きさです。

 私の知っているエメラルドかどうかは知りませんが、宝石には違いありません。

 色、と言いましたが実際には光ですね。どういう原理なのか緑色に淡く光っています。もしかして何か魔法の力でも入っているのでしょうか。この世界には魔法がありますからね。

 いざというときの照明には、さすがに使えそうにないですね。


「奥様からです。肌身離さず付けているように、と」


 肌身離さず、ですか。

 何か意味があるんでしょうか。別に形見とかそういうわけでもないのでしょうに。


「旦那様、奥様も当分は屋敷の外に出る必要はないとおっしゃられておりました。屋敷でゆっくりしているといい、と。私も付いています。ご安心ください」


「ありがとう」


 本当に感謝です。

 あんなことがあってすぐ人前に出たりしたら何言われるか分かったものじゃないですから。出来る限り人に会いたくありません。


「はい。ではマチルダ様、おやすみなさい」


 用も済んでクレアは出ていきました。

 とりあえず明日以降、時間はあるようです。でも時間ばかりあっても何の意味もありません。

 これから私はどうなってしまうのでしょうか。

 とりあえず目の前にあるものは調べましたし、もう寝ます。

 もしも、もしもですよ。ここまで来たらむしろこっちの考え方の方が妄想としか思えなくなっていますが、これが夢であれば、朝目が覚めた時、私はいつもの自分の家のベッドで横になっているはずです。

 どうなんでしょうね。

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