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転生令嬢マチルダ・リリカントの過酷な日々  作者: 劇団騎士道主催
第1章 転生と家族と青の祭剣
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1 転生令嬢 1

「探偵さん?」


 ……あれ?

 何?

 ……。

 どこですか、ここ。

 すごく、豪華な場所にいます。

 結婚式か何かなのか、かなりの人が集まっていますし、みんな豪華なドレスを着ています。よく見れば私もそうです。

 何といえばいいのでしょうか。まず状況からしてよくわかりません。なぜ私はこんなところにいるのでしょうか。


「…よって、マチルダ・リリカントは王家にとってふさわしくないと判断した」


 さっきから誰かがなんか言ってます。他にしゃべっている人がいないのでよく聞こえます。


「この場を持ってこの私、サリバン・ジーダ・トルークとマチルダ・リリカントとの婚約は破棄する」


 私の目に前にいる人が口を開いています。金髪と澄んだ海のような碧眼を持った男の人です。見た目はかっこいいんですがなんだか私の好みじゃないです。

 顔つきが険しくて、しかも眉間にしわが寄っていて明らかに起こっている怒っているのが分かります。その視線は明らかに私に向けられています。

 その後ろに金髪の少女が、これまた豪勢なドレスを着て立ってます。いえ、隠れている、あるいは庇われている感じです。その表情は怯えている感じです。

 理解できません。一体どういうことですか?

 だいたいここはどこなんですか?

 あなたは誰なんですか?


「黙っていないで何か言ったらどうだ?」


 そんなこと言われても、私には何が何だかさっぱり分かりません。。

 どうしよう。理解が追い付いていなくて頭の中が疑問で埋め尽くされています。

 いえ、……待ってください。マチルダ・リリカントという名前、聞き覚えがあります。

 少し前にやっていたゲームに出てくる敵キャラにいました。そう、確か”青き魔女”って呼ばれて、その力で王国全土に破壊と混乱をもたらす存在です。第四章のラストで本格的に現れてボス戦になったんですけど、そういえばそこで中断したままですね。

 ……え?

 つまり、ここはゲームの世界ということですか?

 なぜ?

 どういうことですか?

 夢か何かなんですか?


「ッ!?」


 ……痛い。

「仮にも名門貴族の令嬢ならば、最低限の責務ぐらい果たせ」

 ひっぱたかれた頬が、痛いです。鼓膜が破れたかと思いました。

 頬も足も、腰だって結構な勢いで打ちました。バランスを崩して尻もちをついてしまったからです。

 ……何なんですか。

 なんだっていうんですか。

 頭の中が真っ白です。

 周りからの視線だって集まってきて、なんだか惨めです。

 一体何がどうなっているんですか? 何で私はこんなところにいるんですか? 何がどうなっているんですか?

 誰か説明してください!

 何なんですか!

 ……私をひっぱたいた人はずっと睨みつけてきます。私へ手の伸ばそうとしました。差し伸べたわけじゃないのはすぐに分かります。

 でも届きませんでした。


「殿下、少々気が立っておいでのようで」


「放せ、ライオネル!」


「もちろんです。落ち着いていただければ」


 目の前で男の人が二人、少しもみ合うようになります。

 周りの騒ぎも大きくなりつつあります。

 私のせいですか? 私が原因なんですか? そもそもいったい何だって言うんですか。


「お前はこの女の肩を持つのか? リリカントの名前だけで好き放題していただけの女に」


 私が何したって言うんですか。


「お気持ちは分かります。ですがアイリーン嬢をご覧ください。怯えています」


「当然だろう。今までそういう仕打ちをしてきた相手が目の前にいるのだから」


 何の話をしているの。


「殿下の御一存でマチルダ嬢との婚約破棄は決められません。公平公正を貴ぶ殿下のお気持ちはよくわかりますが、ここは王立騎士団副団長であるこの私の顔を立てていただきたく」


「……いいだろう」


 なんなんですか、本当に、何でこんなことされるんですか。いきなりこんなところにいて、いきなり睨まれて、いきなりひっぱたかれて。

 なんなんですか、一体なんだって言うんですか?

 本当に。


「マチルダ嬢」


 理解が追い付かない。本当に一体、何なの。


「マチルダ」


 呼ばれてハッとしました。すぐ目の前に私と私をひっぱたいた人の間に割って入ってくれた人の顔があります。


「は、はい?」


「こうしてお会いするのはずいぶん久し振りだな。ライオネルだ。忘れられてないといいんだが?」


「あ、あの、その」


「君の家の馬車はいつでも動けるそうだ。この場は任せてもらいたい。殿下にもそうお伝えしたのでね」


 お言葉に甘えます。とりあえず一分一秒でもこの場にとどまりたくない。

 うまく立てない。こんな高いヒールの靴履いたことない。

 あの人、ライオネルさんが手を出してくれた。


「……ありがとうございます」


「グローデンによろしく伝えておいてくれ」


 足早に立ち去る私の姿はあの場にいた人たちにどう映っているのでしょうか。同情されているのでしょうか。滑稽に見えているのでしょうか。それとも自業自得だとでも?

 考えたくない。

 玄関というべきかエントランスというべきか、飛び出すように外に出ると辺りはもう真っ暗です。

 すでに一両、馬車が止まっています。あれが私の家のものなんでしょう。

 馬車までにはそれなりに長い階段があります。シンデレラだったらここでガラスの靴を落とすことでハッピーエンドにつながりますが、私の場合はそういうわけにはいきません。とりあえず転ばないように注意しながらできるだけ早く降ります。

 私を待っていたかのように馬車の、運転手って言えばいいんですかね? その人が馬車の扉を開けてくれます。

 私が乗り込んだことを確認すると。運転手が扉を閉め馬車を走らせました。

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