ゼリーと思い出
なるはそっと口を開く。
「昔、まだお母さんが家にいた頃、5歳くらいかな。体調を崩して寝込んでたんだ。移すといけないからってお母さんと隔離されてて、体はつらいし1人だから寂しいしでベッドで泣いてたんだよ。」
「うん。」
「そしたら、お母さんがこっそり来てね、そっと抱きしめてゼリーを口に入れてくれたの。それが美味しくてね、一瞬で笑顔になっちゃったんだ。」
「そっか。」
「それから、お母さんはだんだん仕事で家に帰って来れなくなって、でもあの味が忘れられなくて、士郎さんにねだったりしたんだ。...あの時は大分無理言っちゃった。」
「うん。」
「料理できるようになってからは自分で出来ないか何度か作ってみてるんだけどなかなかできなくって、お母さんレシピ聞いてみたこともあるんだけど教えてくれなくてさ。」
「あれ?これ、飲んじゃってよかったの?」
「ちょっと飲んだぐらいじゃ困んないよ。」
「そっか。」
「あの子も分からないしね。」
「あの子?」
「うん。ひとりだけ、同じゼリーを作れる子がいたんだ。」
「え?」
「自分で作ったんだって言って持ってきてくれて、食べた瞬間あの味だ!ってなって、急いでレシピ聞いたんだけどわかんないって言われちゃった。そんなに美味しいならまた作るよって言って何度か持ってきてくれたんだけど結局未だにレシピは解明できてない。」
「そっか。」
「あの味はもう食べれないのかなー。」
「またその子に会えれば教えてもらえるかもしれないね。」
「そうだね〜。」
お読みいただきありがとうございます。
思い出に残る味っていいよね。
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初心者なのでわからないことだらけですが暖かい目でみていただけると嬉しいです。