親切と勇気
「海楽しかったねー!」
「うん。」
そう言うなるは拾った貝殻を眺めている。
「気に入った?その貝殻。」
「うん!こんな綺麗なのよく見つけたね?」
「たまたまだよ。」
ふと前を向くと道の端にうずくまっているスーツ姿の人がいる。熱中症だろうか。この時期にスーツは酷だろう。自動販売機まで辿り着けるといいけど。
そう思い、隣を見た瞬間なるはその人の前にいた。
「あの、お水とか買ってきましょうか?」
私は想定外のなるの行動におろおろしつつも、その人が首を振るのを見届ける。
「でも...このままだと倒れちゃいますよ?」
その人は少し間を置いてじゃあ...と小声で呟く。
「じゃあそこの自販機で買ってきますね!ゆうちゃん待ってて!」
「う、うん。」
目の前のうずくまる男性を見ながら、なるの行動を心の中で反芻する。
正直、私にはできなかった。言い訳だけど見知らぬ人と関わるのが怖いというか、手を貸すことに躊躇いがあるというか。だからこそ、なるの行動が輝いてみえた。側で見ていただけなのに、ヒーローに救われたような感覚にすらなった。
人と関わるには多大な勇気がいる。
少なくとも私にとっては。人と関わるということはどちらにとっても少なからず人生を変えることで、私が関わらないことで出会える縁や、幸せがあったかもしれなくて、それを私のエゴひとつで塗り替えてしまうことが私は怖い。
いや、それはただの言い訳かも。人に嫌われてしまうのがただ怖いだけなのかもしれない。
ずっとそれではいけないと思っていて、でもやっぱり怖くて。中々勇気を出せない。
だから、なるが見知らぬ人に声をかけた瞬間自分の中で何かが少し変わった気がした。声をかけてもいいんだって思った。次から声をかける勇気をもらった。
なんだかもらってばっかりだな。私は。
「ただいま!今更ですけど、お水飲めそうですか?」
その人は頷いて、お水を飲む。
「ありがとうございます。」
小声ながらその人はお礼を言う。
もらってばかりなら、なるにはもちろん誰かにお返しするのもいいかもしれない。
「帰れそうですか?送っていきましょうか?」
ほんの少しの勇気を振り絞ってみた。
お読みいただきありがとうございます。
優しさには勇気が伴う。
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次回もお楽しみに。




