砂浜とヤドカリ
「わー!砂浜に入ったよ!砂だよ!」
なんか国境越えた時みたいになってる。地元の海だけどね。
「海は初めてかい?」
「うん!」
「そうか、私は結梨。君の名前は?」
「絶対RPGの案内してくれるひとでしょ。」
「そう!よく分かったね。」
「まかせろ!」
自慢気になるが胸を叩く。
「で、ゆうちゃん海では何をするの?」
さっき胸を叩いたことが幻だったのかと思わせる言葉に私は吹き出す。それに釣られたようになるも笑い出す。2人揃って酸欠になるんじゃないかってぐらい笑う。これは箸が転げてもおかしい年頃ってやつだ。物事を表した言葉じゃないけど。
「なんだっけ?あー何するかね。」
ひとしきり笑いも落ち着いて本題に入る。
「忘れてたのー?」
なるが笑い混じりで突っ込んでくる。
「ごめんごめん。泳がないなら貝殻集めとかかな?」
「貝殻集め!ぽい!」
「じゃあ貝殻集めにしよっか?」
「うん!」
やることも決まり、なるが真剣そうに砂浜を見つめる。そんな横顔を見てるだけで幸せな気がした。
「ゆうちゃん見て!ヤドカリ!」
「わぁ!かわいい!」
なるは手に乗せた小さなヤドカリをこっちに見せてくれる。
「ちっちゃいねぇ。」
「そうだね。」
ヤドカリよりもなるの方を見てるのは秘密だ。
「ばいばい。」
なるがヤドカリを砂浜に帰す。
「なんかいい貝殻あった?」
私は首を振る。
「整備されてるから貝殻あんまないね。ごめん。」
「楽しいからいいよー!」
混じり気のない笑顔で笑うなるがとても輝いてみえる。
「私も。」
自然と、口にしていた。それでもそれは本心で、楽しいと言ってくれたことが嬉しかった。
「...ちょっと海入ってみる?」
イタズラっぽい笑顔でなるが囁く。こんな言われ方して断れるわけがないでしょう!
「うん。」
靴と靴下を脱ぎ、砂浜に足をつける。
「あっ意外と熱くない!」
なるのいう通り、砂浜はぬるい程度だった。
「ねぇねぇ!波だよ!海だよ!しょっぱいのかな?!」
一足先に海に足をつけたなるが興奮気味に伝えてくれる。
「舐めてみたら?」
「えっ汚くない?」
「多分汚い。」
「えー。」
海水は夕方だからか少し冷たくて、気持ちいい。波が足の周りを押しては引いていく。たまに海藻が流れてきて、足に絡まらないかヒヤヒヤする。
「うわ!なにこれわかめ!?」
「はは、昆布じゃないかな。」
案の定なるの足に絡まったらしい。
「食べれるかなぁ?」
「食べれるんじゃない?」
「食べないけど。」
「なんの会話だったの...。」
「ねぇゆうちゃん。」
「なに?」
「...夏休みいっぱい遊ぼうね。」
「うん。旅行でも行く?」
「高校生でお泊まりって早くない?」
「そうかな?」
「うん。」
「まぁ日帰りでも楽しめるとこいっぱいあるしね。」
「たしかに!」
なるの顔が暗い気がしたのは夕焼けのせいにした。
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