出会いと一目惚れ
一応初連載ですが、多分すぐ終わります。
高校生活も慣れてきた6月の始め、先生に促され教室に彼女が入ってきた瞬間、私は初めて恋というものを思い出す。
「篠宮鳴です。よろしくお願いします。」
肩の高さで切り揃えられた髪を揺らし、控えめに微笑む彼女を私は不覚にもかわいいと思ってしまう。それが友達などに向けられるものではないことも、普通ではないことも私は嫌なほど知っていた。
「じゃあ篠宮さんは前から2番目の一番左に座って。」
奇遇にも私の隣に座った彼女は
「なるって呼んで?名前は?」
と優しく微笑みかけてくる。
「えっと、朝比奈結梨です。」
「じゃあゆうちゃんだ。よろしくね。」
かわいい。顔赤くなってないといいな。
「えっと、どこから来たの?」
「九州から。」
「真反対じゃん。」
「うん。北海道は寒くてびっくりしたよー。」
「そんな違うんだ。」
「そうだよー?」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴る。私たちはあわてて、授業の準備をする。
「あっ教科書忘れたかも!」
「え?」
「入れたはずなんだけどなぁ。」
「いっしょにみる?」
「えっほんと?いいの?」
「うん。」
「ありがと!」
教科書を見るために彼女との距離を縮める。肩が触れて不覚にもドキッとしてしまった。鼓動が鳴り止まない。顔が火照る。彼女が教科書に集中していてよかった。彼女の所作ひとつひとつに振り回されていて、私らしくないなと思う。でもなんだか心が暖かい。私は高鳴る心臓をおさえながら、全く内容の入ってこない授業をやり過ごした。
休み時間、私の隣の席には人だかりができていて話しかけられそうにはなかった。みんなの真ん中で笑う彼女にキュンとすると同時にモヤモヤとした感情が胸に広がる。なに嫉妬してんだ私。転校生なんだからみんなに囲まれるのは当たり前じゃないか。私の胸に広がる広がるモヤモヤは抑えこもうとする私の想いとは裏腹に、増幅していく。
「でねゆうちゃんが教科書を見せてくれたの!」
彼女、なるが私を指さして言う。急な発言に私は飲んでいた水を吹き出しそうになる。
「ありがとう!助かったよゆうちゃん!」
笑いかけるなるに私はドキドキする。顔が赤くなっている気がする。こんな大勢の前で私の醜態を晒そうとしないでくれ。
「そんな大層なことはしてないよ!」
声がうわずっていないだろうか。あまりの恥ずかしさに私は思わず顔を背ける。
「大層だよー!今度お礼させてね。」
「お礼なんて...!」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴る。なるの机に集まってた子達は蜘蛛の子を散らすように一斉に去っていった。
「ゆうちゃん!」
「なに?」
帰る準備をしている私になるは話しかけてくる。
「今日放課後あいてる?」
「大丈夫だよ。」
「やったー!じゃあいっしょに帰ろ!先に玄関で待ってるね。」
「うん。」
まさか相手から誘われるとは思っていなかった。私は緩む頬をおさえながら玄関へ向かった。
「なる...さん?お待たせ。」
そういえば名前で呼んだことがないことを思い出す。
「なにそれ?普通になるでいいよ。」
「なる、ごめん。あんま人を呼び捨てで呼ばないから。」
「そうなの?じゃあ呼び捨てで呼べる数少ない1人になれたってことだね!」
「そうかも。よろしくね。なる。」
「うん!今更感あるけどね!」
「たしかにね。」
お読みいただきありがとうございます。
誤字脱字等教えていただけるとありがたいです。
初心者なのでわからないことだらけですが暖かい目でみていただけると嬉しいです。