5 上杉討伐軍議
5 上杉討伐軍議
真柴は敢えて上杉景勝と直江兼続を国元である会津へと帰した。
たかが、三万強の軍勢に何が出来るというのだという驕りの心がすっかり芽生えている。
此方は軽く十万以上の兵力を即座に動かせる。負ける道理などあるはずがなかった。
しかし予防線を張って連日大坂城評定の間で諸大名と軍議を重ねて上杉家の動向を注視していた。
だが、事態は急変する。
「秀頼様に報告! 上杉家は『会津王国』を建国した等と謳い、上杉景勝が国王に即位しました!」
物見の兵が大坂城評定の間にて、続々と上杉家の動向を報告する。
これには諸大名も真柴も動揺する。上杉景勝が国王……日の本から独立してしまった。
真柴は拳を力強く握り、歯ぎしりをして悔しがり、怒りを必死で堪える。
――己! 上杉景勝……天皇家という存在がいるのに国王とは何様のつもりだ。
怒りを押し殺して沈黙する。だが、真柴は切り札を持っていた。
大富豪で例えるならばジョーカーとも言える戦力が上杉の隣国にいる。
「秀頼様。これは渋い状況になってきましたな。しかし、ご安心を……伊達政宗がいます」
相国……時の権力者となった黒田官兵衛が顎髭に手をやりながら悠然として言った。
そうだ。伊達政宗がいる。仙台を領する伊達政宗一万八千を既に討伐軍として出撃させている。
伊達政宗……戦国の盲夏侯とも言える隻眼の武将。奥州藤原氏を自称する由緒正しき武家貴族だ。
「ああ、官兵衛……伊達政宗を出撃させて正解だったな。そして後詰に佐竹に最上……総勢四万。負けることはあるまい」
既に官兵衛は後詰として佐竹に最上義光などの武将を援軍に送っている。
兵力だけで見れば二千ほど上回っている。
「秀頼様……戦は兵力だけでは決まりませぬ。この前田利家に出撃の下知を下され」
老境に至った長身の武者、五大老前田利家が、か細い声で真柴に忠告する。
前田利家も本来ならば鬼籍に入っていたが、秀吉と同じように健康食を与えて生きながらえさせてやっている。
舌打ちをして真柴は露骨に態度に著した。
「前田利家殿、確かに戦は兵力だけでは決まらぬ。地の利と戦略、補給の絶妙な采配こそが肝要。
余でもそれぐらいは知っている。
しかし、利家殿は老齢につき、利家殿のご長男、前田利長殿に二万四千の兵力は余も頼りにしている。
とりあえず、伊達政宗と与力する佐竹、最上の戦いぶりを見届けようか」
利発な物腰で真柴はカッコつけて言った。真柴の体から溢れ出す圧倒的な才覚の片鱗を覗かせる。
前田利家は孫の成長を見るような面持ちで感嘆していた。
そして隣で目を見張るような顔で真柴を見ていた徳川家康が言葉を投げかけた。
「秀頼様は本当に利発な御子であられますな。この徳川家康、秀頼様に改めて忠誠をお誓いします。
出来るならば後で二人だけで話がしたい。秀頼様、この年寄りの頼みを聞いてくだされ」
これには真柴はかなり嬉しかった。当初の仮想敵にして警戒していた徳川家康からの好意に素直に嬉しい。
「徳川殿。後で是非話をしましょう。余も元禄元亀を生き抜いた徳川家康殿に教えを請いたい」
「有難く」
真柴の了承に徳川家康は大喜びの様子だった。
真柴が本当は四百年後の未来人で高校中退の歴史オタクだということを徳川家康は知らない。
この対上杉討伐軍議は暫く続くことになる。
今回はここまで。
読んでくださりありがとうございます。
ブックマークも励みになります。
上杉景勝が大王様になり、黒田官兵衛が相国に。
日の本はどうなってしまうのか。