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時として、そう、

作者: 妖

 「もう大人なんだから ー」

電話口の母が言った言葉に私はいつも通り、呆れを隠した。幼少期から母とは折り合いが付かない。何故だろう、何故母を好けないのだろう。母が悪い訳でも、私が悪い訳でもない。なら、何が悪い。

 嘘を嫌う母、嘘で自分を守る私。互いに持つものが違う私達は本当に親子として成り立つのか。

 十代の頃は「まだ」子供なんだから、二十代になれば「もう」大人なんだから。その「まだ」と「もう」の境目は何が基準で何を示しているのか、未熟な私には到底、分からなかった。

 母はよく言えば心配性、悪く言えば干渉的。私の精神的な病には諦めを見せ、自分の心配が先行してしまう物事には酷く干渉してきた。私は嫌だった。もっと、脆い部分も見て、愛してほしかった。


 自由に生きる事を望む鎖のついた囚人、少しの縛りがあっても良いのでは、と悩む自由気ままなある国の女王。「自由の刑」という言葉の通り、人はいつしも自由を望むが自由には計り知れない代償がある。ないものねだりと言えば、済む話だがその結論は着地にはならない。


 「あんたは我慢しすぎなのよ。もっと言いたい事言って、ママを悪者にして良いから」

私の内心は「優しくない優しさだな」と言う感情で溢れた。切なく痛い、その母の優しくない優しさ。私は母を責めきれるほど、残酷な人間ではない。なのに、まるで、母の目にはそう映っている様に感じてしまった。

 いつからだろう。家にいたくなくなったのは。いつからだろう。母を嫌いだと気付いたのは。いつからだろう。時として、そう、死にたくなるのは。

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