業選別編1章
初投稿です!自分なりに頑張って書いたので、面白いと思ってくれたら嬉しいです!誤字脱字とかもあるかもしれないけど、温かい目で見てください!
ー ダンッッ。鈍い音が部屋中に木霊する。
「チッ。また3発か。」
そう呟きながら、フードを目深に被った少年は、地面に落ちたサンドバッグを、まるで殺人犯が死体を引き摺るように別室に運ぶ。
「もうすぐだな。」
そう独り言を部屋に残して、少年ー 緋陰氷我は重い扉を開け、歩き去った。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
「あぁ、もうホンット最悪。入学初日から寝坊なん
て。昨日あんだけアラームセットしたじゃん。」
そう言って澄んだ銀髪をたなびかせながら廊下を走る少女ー アイス・サーヴェントの目にある少年が留まった。
(……なにこの人?もうこんな時間だってのになんで歩
いてるの?まぁ人のこと言えないけど)
少年のことも気になるが、人の心配ができるほどアイスには時間がなかった。
「はぁはぁ……なんとか間に合ったけど……もう席が端
っこしかないか。」
すると間もなく、教師らしき女が入ってきた。
「初めまして。私はグレン・カルトリスク。短い間だ
がよろしく。」
長い黒髪に鍛え上げられた肉体。そして起伏に富んだ女性らしい身体という何とも羨ましいハイスペックな女性だった。
「まずは、この学校の説明から。皆さんには1年間共
にーー」
と、グレンが説明をし始めたときーー
ガラガラ
そこには、つい数分前にアイスが廊下で見かけた少年だった。
「お前は?もうホームルームは始まっているが。」
「すみません。無駄なことにエネルギー使いたくなか
ったんで、歩いて来ました。」
「ほう、なかなか面白いことを言うな、お前。名を聞
かせろ。」
「別に、俺の名前知ったところで何の得にもなりませ
んよ。」
と言って、彼は名乗らず黙って空いてる席に向かった。
しかし、席はもう既にほぼ満席。必然的に残ってる席は……
「隣座るよ。」
「え?あ、あぁうん……」
そう言って、彼はアイスの隣に座った。
「それじゃあ、説明を続けるぞ。」
それからグレンは再び説明を開始した。
「この短期学校では、みんなはこのクラスで1年間共
に学び高め合い成長していく。最終的には、国家精
鋭近衛騎士団のトップである業になるため
の適合試験を受けてもらい、合格すれば業になるこ
とができる。業の中には[剣業][魔業][策業]
[銃業]の4つがあり、各々が好きな業の試験を受
けるということだ。何か質問はあるか?」
教室は静寂に包まれていた。
「説明は以上だ。今日はこれで終わりだから、各々解
散しろ。」
そう言って、グレンが教室を出ると、徐に生徒たちが話し出した。
各々、友達を作り、午後の予定でも立てているのだろうか。
しかし残念ながら、アイスにはそのようなコミュ力はあまりない。
かといって、誰とも話さないのは今後のスクールライフに支障を来すためーー
「ね、ねぇ君……」
「何?」
「あ、えっとその……」
「用がないなら帰るけど。」
「あ!待って!」
そそくさと帰ろうとする彼をアイスは必死で制する。
「名前……教えて。」
「ーーー緋陰氷我」
「ひとかげひょうが………。かっこいいね!!もしかし
て、倭国出身?」
「いや、オヤジが倭人で母さんはここで産まれた。」
「あ、混血なんだ。混血なんて初めて見たな……」
「お前は?」
「え?」
「お前の名前」
「あ、私?私はアイス・サーヴェント。キャスタル地
方っていうちょっと田舎な所出身。氷我君?は何業
を目指すの?」
「ーー剣業」
「おぉ、なんで?」
「ーー特に理由はない」
氷我は少し間をおいて、そう言った。
だが、その顔がすこし沈痛だったことに、アイスは気付いていたが敢えて触れなかった。
「私は魔業!小さい頃に先代の魔業に助けてもらった
時から絶対魔業になるって決めたの。」
「ーーそうか。頑張れよ」
そう言い残し、氷我は教室を去った。
「ふぅ……なんか凄い緊張したなぁ……」
今思うと彼は、端麗な銀髪に細くも逞しい身体と整った凛々しい顔立ちと、容姿端麗を体現したような人物だった。
「そうだ、買い物行こ。」
そして、荷物をまとめ1番最後に教室を去った。
ー 自分の頬が仄かに赤らんでいることも知らずに。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
雑踏に紛れ、氷我は静かに息を吐いた。
「何だったんだあいつ」
氷我の歩みが次第に速まっていく。
ー 別に気になっている訳じゃない。
ただ、何かが胸に引っかかっている。
この気持ちを何と表すか、氷我には的確な言葉が見つからなかった。
ただ、何故か言葉で表すべきではないと、直感的に感じた。
「そう言えば、エストは何してんだろ。あいつに飯、
買ってやるか。」
そう言って、再び歩を進めたのと異様な光景を目にしたのは同時だった。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
アイスは先程の氷我との会話を反芻していた。
「氷我君……もうちょっと話してみたかったな……」
ふと、アイスの足が止まった。
「なんだろう……さっきから氷我君のことしか考えてな
い…………だめだめ!まだまだやる事は沢山あるんだ
から。」
そう言って、己に喝を入れ再び歩き出した。
「まずは、夜ご飯の用意と……あ、その前に寮の手続き
とらないと。その後、荷物を運んで……それからそれ
から……あぁもう!都会は色々めんどくさい……」
そうアイスが都会の煩瑣さに嘆いていた時、ふと背後から異様な気配を察知した。
それは今まで感じたことの無い、ただ本能的に脳がその存在に警報を出していた。
恐る恐る振り向こうとするが、身体が萎縮し、筋肉に力が入らない。
そのまま、その場に倒れ込むように膝をついた。
そして、背後の怪物に心臓を刺され……
「え?」
銀髪の少年が金色の剣を怪物の心臓に刺し、2~3m先に止まっていた。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
自分の目を疑いたかった。目を逸らしたかった。
ただ、現実はどうも氷我に厳しいらしい。
あまりにも異質な、しかし他者からは認識されない。
氷我はあんなものを誰も気付かないことがとても恐ろしく信じ難かった。
ただ、その理由を考えるより速く、怪物が少女に腕を上げていた。
そしてその少女こそ、氷我がつい数十分前まで話していたアイス・サーヴェントだった。
「俺はもうあの頃の俺じゃない。ーー剣業・緋陰氷我
の初陣だ。」
そして、氷我は腰を低くし………
「サウザード・ブレス」
詠唱と共に、世界が緋陰氷我を祝福し、手の内に金色の大剣が顕現する。
「緋陰流 戯・抹殺」
そう口にすると、光よりも速く怪物の背後に剣を突き刺し、そのまま地面に刺して制止した。
「え?」
背後から少女の声が聞こえる。
そのことに安堵しながら、
「大丈夫?」
返り血を乱暴に拭いながら、緋陰氷我はアイス・サーヴェントにそう微笑みかけた。
いやー、なかなか楽しかった。速くハーレム書きたい。