どうして青いの?
「どうして青いの?」
娘は無邪気に空を指さした。
「それはねぇ、白い雲が見やすいようにだよ」
本当は光の波長で、と言いたいところだが、幼稚園生の娘が面白がるように、私は答えた。
休日に散歩をしながら、娘の子供ならではの疑問に答えるのが決まりになっていた。
子供の成長とは目まぐるしいものだ。最初は言葉もたどたどしく、なにを指しているのか、わからずに答えられないことも多かった。
質問が難しくて、答えに窮するときもあった。調べて答えてみても、理解できない娘は、泣いて「どうして」「なんで」と繰り返すこともあった。
それがどうだろう――――
「どうしてお花はきれいなの?」
「虫さんに気に入ってもらうようにだよ」
公園のパンジーに、モンシロチョウが止まっていた。
娘はじーっと見つめていたが、はっと閃いたような顔をした。
「ってことは、ちょうちょさんはお花が好きなんだね。お花が好きだから、飛べるようになったんだね!」
――――与えられた情報から、自分で考え導き出せるようになっている。
日々見ているつもりでも、ふとした瞬間に成長に気付かされる。この間までこんなことできなかったのに。なんならこの間産まれたばかりのような気さえするのに。
「ねぇねぇ、どうしてキャンディは甘くて美味しいの?」
「子供たちに喜んでもらうためだよ」
「じゃあキャンディ作る人は、子供が大好きなんだね!」
「どうしてそう思うの?」
「だってママのお料理美味しいのは、ママがあたしのこと大好きだからなんだよ!」
そのときの輝くような笑顔を、ママに見せてやりたかった。
ママはきっと、君が大好きだし幸せだと思うよ。
帰ったらママに聞かせてあげよう、きっと喜ぶだろうから。
「どうして青いの?」
娘は無邪気に私の顔を指さした。
「それはねぇ、ママが怒ってて怖いからだよ」
勝手にお菓子を買い与えないで、と。守れなければお小遣いを減らします、と、妻に脅されたばかりの私は答えた。
2020/10/02
血管が収縮して⋯⋯え、そうじゃなくて?