土魔法覚醒
バシーン!バシーン!
それからの僕は次々と宝石やレアメタルが眠る岩石をゴッドハンドで粉砕し採掘して回った。
「凄い!」
「ニースさんて」
「何者なのだろう……」
3人が茫然とする中ひたすらに回収作業を続ける。
そしてころあいを見て作業を中断した。
「さて、そろそろ地獄ムカデが来るぞ、マーシーちゃんは全員に防御魔法を、ミニーちゃんは魔法矢を構えて」
「え!」
「なんでそんなことが解るのですか?」
「大丈夫だから、準備してくれ」
不審に思っている3人に迎撃の準備をとるように指示を出す。
「はい、清浄なる気流……ポイズンシールド!」
マーシーが毒防御のバフを全員に掛ける。
「ミニーちゃん、もう少し右下の方向だね」
そう言って美少女のミニーの後ろからそっと弓に手を添えて矢の方向を修正させる。
「カッツ君はムカデがひるんだら急所の口に剣を突き入れて思いっきり横に振りなさい」
「は、はい!」
「さ、来るぞ、ミニーちゃん打って」
バシュン!
ドン!
ギギィー!!
完全な視界の外から放たれた矢はムカデに命中し、奴は僕らの見えない所で悶えていた。
「来るぞ、3、2、1」
次の瞬間に魔光ランプの明かりに照らされて巨大なムカデの姿が現れる。
ムカデの顔面に魔法の矢が突き刺さっていてムカデから正常な判断力を奪っていた。
「とりゃぁああ」
カッツが叫びながらムカデの開いた口に剣を突き刺し横に払う。
ドシュ!
「カッツ避けて!」
それでカッツが横に逃げるとミニーが2射目を放つ。
バシュ!
ドン!
顔面に2本の魔法矢を受けてなお強靭な生命力で暴れる地獄ムカデの顎をカッツが長剣で突き上げる。
ズン!
崩壊した下あごを突き抜けて刺さり、カッツはそのまま地面に頭を叩きつける。
しかし、ムカデの生命力は強くいくら急所の頭を叩いても中々とどめにはならないようで、ムカデは暴れていた。
「どうしたのだ?我が友よ」
僕がどうしようかと思案していると、また精霊の声が聞こえる。
「今ムカデと戦闘しています」
「そうか、ならば我の力を授けよう」
僕は全身に土の精霊力がみなぎるのを感じる。
「え?これは……そういう事か」
瞬時に精霊からのイメージが伝わって来て、僕はそれを理解した。
「カッツ、少し下がってくれ」
「は、はい!」
カッツが剣を抜いて後ろに下がると、僕は精霊と一体となる感覚で祈り大地に命じた。
「地よ唸れ」
ドドドーン!
その瞬間坑道内の地面が巨大な針山のように持ち上がり、深手を負ったムカデの全身を貫き天井に突き刺さった。
そしてムカデは絶命し動かなくなる。
「きゃぁ!」
あまりにも巨大な土魔法の出現にミニーが悲鳴を上げる。
「なんですか、これは……」
3人が僕を振り向くと僕の全身がうっすらと土色に光って見える。
「え!!」
「すぅ……」
「なんと!」
今の僕は大地の精霊と一体となっていたのだ。
「ニースさんって何者ですか?」
「僕は鑑定師だよ」
僕の言葉に誰も納得はしていない様子だった。
「土の精霊と仲良しの鑑定師だよ」
「ははは……」
「ふふふ」
「素敵」
カッツは笑い、つられてマーシーも笑う。ミニーは僕を褒めてくれた。
目の前に出現したのは紛れもなく土の精霊魔法、それもSランクの攻撃魔法だったのだ。
その後、僕はひたすらに宝石、貴金属の原石類を採掘して彼等にも担いでもらい、夕方に坑道を出て王都に戻った。