最強の鎧
僕はカレン達がやってきて居た事など知らぬまま、精霊の感知能力を最小限にして魔宝玉の製作に没頭していた。
王宮から届けられる採掘したばかりの魔石や宝石と、王宮から支給された刀剣や弓、盾や鎧などで試作を繰り返していたのである。
中には何に使えば良いのか判然としないものも出来上がった。
その一つが水を発射するバースト水弓だ。
「うーん……火事の時には消火に使えるかな?」
そんなことを考えながら様々なパターンで試作をし、最終的にはほぼ完璧な防具をも完成させた。
どんな物理攻撃も当たらず、回避速度はSランクのスカウトを凌ぎ、魔法攻撃を吸い取ってしまうという究極の皮の服だ。
軽いのに途轍もない防御力を発揮し、女性でも着れて日常的にも管理しやすい。
「名付けて神威の衣……安直か」
やはりネーミングセンスがないのが自分でも悲しい。
古代の国宝のようにカッコ良い名前を付けたいのだけど思いつかないのだ。
ただ神威の衣は、1着作る為に多量の魔宝玉を使用するので大量生産には向かない代物である。
とりあえず5着作って4着を王宮に納品し、1着は自分用にとっておいた。
そんなことを10日以上繰り返していた日、王宮へ納品に出向くとセスがやってきて僕にカレン達の事を教えてくれたのだ。
「実は先日勇者カレン殿が参られましてな」
「え……それで?」
僕は、武器防具を引き渡す担当官との手続きの手を止めて訊き返す。
「ニース様を返せと言ってきました」
「はぁ……でも僕は帰りませんよ」
「おっしゃる通りです、ニース様は我が国の宝でありますので」
「カレンか……それで彼女達は今どうしていますか?」
「それが、帝国からの密偵がやってきてカレン殿を連れて帰られたようです」
「ふーん、密偵ね……どうしたのかな」
「これは推測ですが、帝国国内で起こっているモンスターの大事件の絡みかと思われます」
それは以前僕がアイテム卸し商から聞いた話のようだった。
「セスさんはあの事件をどう思いますか?」
「個人的には帝国が何かやらかしたのだと感じます」
つまり具体的な情報は完全に秘匿されていて、セスの情報網ではつかみきれないという事のようだ。
「困ったものですね」
「ニース様はお優しいのですな」
セスはふぅとため息をついて言う。
本来は敵対国なので帝国の不幸を喜ぶべき所なのかも知れないが、リーサの事を考えたら単純にそうは思えない。
「何か判ったら教えて貰えますか?」
「ええ、勿論です」
セスはそういうと去って行った。
僕は王宮に納品してから帰り道、久しぶりに酒場に繰り出した。
ここのところずっと自室に籠り切りで作業に没頭していたので、久しぶりの酒場の空気が恋しくなったのだ。
「やぁ、どうも」
混雑しているカウンター席の隙間になんとか割り込んでマスターにキープボトルを貰う。
「久しぶりですね」
マスターが僕に声を掛けながらグラスを置いた。
「ええ、何かありました?」
「時々ですがニース様の事を訊きに来る若い冒険者がいますよ」
「もしかしてカッツ達かな」
「お知り合いですか?確か、年齢は16かそこらだと思いますが」
「ああ、多分そうだろうね」
「あ、来たようです」
振り向くとそこに居たのはミニーだった。




