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ボーナス


 その洞窟でエルダーリッチがため込んでいた財宝を何度か往復して持ち出す。


「モンスターの癖にこんなに貯め込んでどうするつもりだったのかなぁ」


 カッツが馬車に積まれた財宝の山を見て呆れ言う。


「多分奴の趣味だったのだろうな」


 死霊系には時々こういう奴がいるのを僕は知っていた。そして、今回ファーストアタックの成果としてそれを全て押収したのだ。


「あとで皆にボーナスとして特別報酬をだすよ」


 僕はそれを独り占めするつもりもなかったので皆に大盤振る舞いを約束する。


「やったあ!!」

「ありがとうニース様!」


 皆それで大喜びだ。仮に彼等に2割等分で配当をだしたとしても大金になる。家を買えるほどの金だ。


 ただ、それだけ一度に大金を手に入れると冒険者をつづけるモチベーションが無くなるタイプの子がいるので、そこは最後に確認しておく。


「ボーナスを出す代わりに一つ約束をしてほしい」

「どんとこい!」

「はい」

「はい」


「今後最低1年は僕と探索や開拓に付き合ってもらいたいのだ」

「勿論!」

「私も!」

「ずっと付いていきます!」


 3人は快諾してくれた。僕を信じ切り頼りにしてくれる、彼等の眼が僕には眩しく魅力的に見えた。


「よし、帰ろう」




 僕らは財宝で重くなった馬車を走らせ王都にもどり、その場で鑑定して配当を手渡した。


「うわぁ……」


 カッツ達は鞄に入りきらないほどの金貨を別の袋に入れて肩に担ぎギルドに向かった。


 ギルドの冒険者貯金に預けるのだ。


 僕は一旦家に帰り、全ての財宝を担いで部屋のクローゼットに積み込んだ。

 ギルド貯金では量が多すぎておそらく入りきらないだろうと考え、急遽作り付けのクローゼットを金庫に改造して全部仕舞う。


「よし、と」


 そこに多重のカギと罠を仕込み閉じる。


 そして数十枚の金貨を雑にポケットに突っ込んで酒場に繰り出した。



 すっかり日が暮れ、酒場に行くといつも通り大賑わいだ。


 何とか開いていたカウンター席に座り、金貨をテーブルに乗せて注文をだす。


「これで特上の酒と何かつまみを下さい」

「へぇ、お兄さんうちは金貨のお釣りは困るんだ」

「釣りは良いよ」


 僕が気前よくいうと途端にマスターの顔が明るくなる。


 貴族では時々そういうタイプが居るが、旅人は普通ケチだから僕みたいな奴は滅多にいない。


「ありがとさん」


 マスターが金貨を持っていくと、その代わりに僕の席の前に特上の酒がボトルごと置かれた。


 それで周囲がどよめく。


「おい、豪勢だな……」


 そんな声が聞こえてきた。


 僕がそれで一人で呑んでいると突然後ろから女性の声が掛かる。


「ニースさん!」


 振り向くまでもなくそれはリジーだった。


「やぁリジー、一緒に呑むかい?」

「うれしわ」


 僕が長椅子のスペースを少しずらして隙間を空けるとリジーが体をねじ込んでくる。

 仄かに香水の匂いがしてリジーがくっついて座った。


「良かったらこれ飲みません?」


 僕はボトルの酒を指さして言う。


「ええ、ごちそうになるわ」


 マスターはサービスでグラスを出してきて彼女の前に置きそのボトルの酒を注ぐ。


「どうも」


「乾杯!」

「はい、乾杯」


 リジーとグラスを軽く打ち飲む。


「リジーさんは、ここによく来るのですか?」

「ええ、常連なの」


 やはり一日ギルドに缶詰めになる仕事はストレスが溜まるのだろうか。


「今日は何があったのですか?」

「カッツ達の事?」


 僕が訊くと彼女が頷く。多分大金持ち込んだので僕が関係していると思ったのだろう。


「一緒にエルダーリッチを討伐してきたのだよ」

「ええ!もしかしてディート山の?」


 そうだ、と言うとリジーは興奮していう。


「だって、あそこ誰も攻略できなかったのですよ~」

「カッツ達もそれだけ成長したという事だね、はははは」


 僕は適当に言って笑った。酒が効いて少し気分が良くなってもいた。


「どうせ貴方の仕込みなのでしょう?ニースさんって何者なの~~?」


 リジーはカッツ達がそんなに急に強くなるわけがないと考えているようだった。


「知りたい?」

「あはは、じらさないでくださいよ」


 僕は彼女がしている指輪を指でつまみ言った。


「……これは、幸せを呼ぶと言われる幸福の指輪だね」

「え!」

「僕はただの鑑定師だよ」


 もう!と言って彼女は笑う。だけど、僕を見る目は一層疑り深くなっていた。


 しかしその目は僕には妖艶に見え、リジーの女性としての魅力が増幅して感じられる。


「面白いものだね」

「え?何がですか?」


 信じることと疑う事は、その両方とも僕には魅力的に見えていたのだ。



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