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さまざまな短編集

異世界のサイドカー(救命)

作者: にゃのです☆

 サイドカー。日本語名は側車付自動二輪車(そくしゃつきじどうにりんしゃ)である。

 バイクの隣に人が入れる箱を取りつけ、三輪のタイヤで走る自動車。

 軍用では主に偵察として使われたりした。

 今回はちょっと趣旨が違い。道路が狭く車では走りにくい道路事情がある異世界のお話だ。


 室内ではトランプゲームを行う者、仮眠を取っている者、書類仕事を片付けている者それぞれが夜勤という時間を過ごしていた。

 この四人は普段も救急隊員として働いている人たちで、右肩についているヘビと十字架のワッペンが退院である証。

 トランプが切られる音とペンを走り書きする音に加えて窓の外から雨が降る音が聞こえている。

 こういう日は突然、急病人、けが人が出たりする。

 なんせ、ここの道路事情は悲惨なのだから。

 そんな音に紛れて、ベル付きの電話、略してベル電が勢い良くなり始める。

 受話器を取ったのは書類仕事を片付けていたモリノ。


「はい。救急一二番」

「おお、今日はモリノ君か」

「そうです。で、部長用件は?」


 電話の相手はレリマ部長。ベル電は緊急時にしか鳴らさない決まりなのだが、レリマ部長はそれを無視することがある。


「今回は緊急だ。道路でスタックした車があるのだが、急病人を運ぶ途中だったらしい」

「はい」


 どうやら、今回はまともな緊急要件だ。と思いモリノは他の隊員に向かってエンジンをかける様にジェスチャーをして知らせる。

 ため息をつきながらも三人は立ち上がり装備を整え、バイクへ向かって行く。

 救急車両はバイク三台。二台は救急セットを取りつけたオフロード車、もう一台はタンカが積めるように改造しているサイドカーだ。

 

「わかりました。それでは向かいます」

「頼んだ」


 モリノは受話器を置いてエンジン音が響くガレージへ急ぐ。

 オフロードにはトランプをしていた二人が乗り込み、仮眠をしていた隊員からヘッドセット付ヘルメットを受け取りマイクに向かって状況を伝える。


「全員聞けッ! この道に沿って北上し約一〇キロ地点で車がスタックしたとのこと、急病人がいてさらに先の病院までの搬送が任務だ。オフ車は先行し接触し状況確認を行え」


 二人はグッドと親指を立ててスロットルを開け、最大速度で向かう。

 雨により道路状況は最悪だ。

 先行するオフ車はサイレンも鳴らしていたが、その音はもうかすかにしか聞こえない。

 ヘルメットのスピーカーからは二人の声が次々に入ってくる。


「いつも通り、タイヤがとられる!」

「滑りまくりだ! 気をつけて!」


 状況は最悪だ。

 でも、行かなければいけない。


「行こうか」


 すでにサイドカーに座っている隊員が頷く。

 これはいつものことだが、モリノとペアを組んでいるのは新人隊員でまだ、バイクの免許とか車の免許も持っていないのだ。

 だから、サイドカーの運転は常にモリノだ。

 オフ車の二人もバイクの免許は持っていても、車の免許がないのでサイドカーは乗れないのだ。

 今回の様に道路が悪く、すぐにタイヤを取ら蹴る不整地走行ではサイドカーは二輪駆動で走ることになるため、車として区分されてしまうのだ。


「行くぞ」


 アクセルを開けて加速しすぐに道路を左に曲がる。

 雨はそこまで強くなく視界がある程度は確保できるが、道路はぐっちょぐちょ。

 走るたびに土を巻き上げていく。

 それでも前に進む。

 しばらく走ると通報のあった車に先行したオフ車が到着したらしい。

 無線で状況が伝わってくる。


「接触した。急病人は女性、妊婦だ!」

「まずい! 産道が開きかかっている!」


 モリノは状況を聞いて不味いと思った。

 産道が開きかかっているとしたら、不整地走行の振動で生まれたり、土が被ったりするといろいろとヤバイ。

 それでも、搬送が仕事だ。


「彼女のバイタル、陣痛の間隔を記録しとけ! 今からもうすぐに追いつく!」


 指示を飛ばして状況の整理もしておく。

 車までは数分で到着した。

 搬送の準備も完了していたため、新人隊員が急いでタンカを設置。

 土とかを被らないようにシートで覆っておく。

 この間、モリノは乗ったまま病院へ連絡を付けた。

 直進したら病院はすぐそこなのだが、道路状況が悪いため時間が掛かる。

 オフ車が病院まで先導するが、一台は先の道の状況把握、一台は中間にいて状況報告を行っていく。無線の中継という役割。


 こうして慎重にかつ早く搬送を進めていく。

 病院に着く頃にはどの車両も泥まみれ。唯一良かったのは妊婦に泥とかつくことなく、無事に病院につけたことだった。


「それじゃあ、帰ろう」


 来た道の泥を跳ねのけながら進む。

 この国では道路整備が全然できていないからこういったバイクはどんどん活躍できる。

 ただ、バランスのとり方が難しいのだがね。


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