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01 王太子からのプレゼント

 ランベス宮殿、そこが今私の暮らしている場所である。

 首都のある一画にあり、そこで私は少人数の者と生活をしていた。

 私は今年で七歳になった。


「ふぁぁ~」


 私は大きな欠伸あくびをしながら眼を覚ます。

 すると待ち構えていた侍女レディス・メイドがテキパキと私を着替えされてくれる。

 もう、そんな生活にもすっかりなれてしまった。


「ジェーン様、今日もお綺麗でございます」


 あいからわず歯の浮くような台詞だ。

 十分な時間をかけて身支度を整えた私は食堂に向かった。

 朝の食事はビュッフェ形式!

 なんと好きな物を好きなだけ食べられるのである。

 私は朝食にも関わらず、いつものように甘いお菓子をモグモグと頬張るのだ。

 そして、食事が終われば普段は家庭教師カヴァネスからお勉強をさせられるんだけど……。

 今日に限ってはその予定に変更があったのでした。


「えっ!?それ本当なの?」


「はい、王太子殿下がお視えになっております」


「わかりました、スグに会いに行きます」


 王太子殿下が一体何の用だろう?

 まさか王太子を待たせるわけにもいかない。

 私は急いで客間に向かう。


 そして客間に入ると、そこには、複数の男性の姿がありました。

 そのうちの一人は、そう、王太子、バート・ウィンザーその人である。

 少し視ないうちに、おかおに皺が増えたような……。

 王太子殿下は実の所頭も白い、私からみたら立派なおじいちゃんである。

 娘どころか、孫と言っても良いくらいの私と王太子殿下が、血を分けた兄妹というのは不思議な感覚がある。

 私は、膝を折り、家族に対する挨拶をする。


「王太子殿下、おはようございます」


「ジェーン、久しぶりだな。公式の場以外では私の事は兄と呼んでもよいぞ」


「承知しました。お久しぶりでございます、お兄様」


 そしてしばらくそのまま立っていると、


「ん?どうした?早く座れ」


 そう言って、いまだに立ちつくしたままの私に座るように促してくれたので、


「では、失礼させていただきます」


 と言って私は頭を下げてから椅子に座った。

 勿論もちろん座るのは下座です。


 私は自分の立場は理解している。

 同じ国王陛下の血を引くものとはいえ、公認愛妾の一人から生まれた末の娘など、王妃陛下から生まれた王太子殿下にとってみれば吹けば飛ぶような存在だという事を。

 さすがに機嫌を損ねても、スグさま殺されるようなことはないとは思うけど、それでも極力不快感を与えないように立ち回るのに越したことはないのだ。

 家庭教師カヴァネスから散々礼儀作法も叩き込まれているもんね。

 そんな私の振る舞いに機嫌を良くしたのか、


「ふむ、ジェーンはなかなかに礼節を心得ているな」


 と、王太子殿下は褒めてくれた。


「他の妹たちがジェーンと同じ年齢の時にはそこまで出来なかったぞ」


「おほめ頂きありがとうございます、お兄様」


「もう少し早く生まれていたら、私の子供たちの家庭教師カヴァネスを任せられたかもしれないな」


「将来の国王となられる人物の教育に、私が携われる機会が来るかはわかりませんが、努力を続けたいと思います」


「そうか、そうか。お前はどう思う?」


 と言って、王太子殿下は側近の一人に話掛けると、


「失礼ながらジェーン殿下は王族の家庭教師カヴァネスになるよりも、他国に嫁ぐ可能性の方が高いかと……」


 と、言われたのでした。

 あ、やっぱりそうなんだ。

 古今東西、王女の役割なんてそのぐらいしかないもんね。

 貴族などの上流階級の結婚は親が決めるのが普通なのだ、それが王族なら言われるまでも無い事。

 そして殆どの子供はそれにおとなしく従うものなのだ。

 とはいえ、勿論もちろん例外というものはある。

 ……私の結婚相手は今の国王陛下でなく王太子殿下が決める事になりそうね。


「まぁ、それもそうだな。でもそれは父上が決める事だ」


「それよりもお兄様、本日はどのような御用だったのでしょうか?」


「そうだな、今日はジェーンに渡す物があって立ち寄ったんだ」


 王太子殿下の合図で、側近の一人が不思議な気配が漂う箱を持ってくる。


「開けてジェーンに視せろ」


 中に入ってたのは素敵なアクセサリー……と思いきや、なんと小ぶりの棍棒のような物ではないですか。


「……これはいったい?」


「なに、良い物を手に入れてな。ジェーンへのプレゼントだよ」


「……そうですか、ありがとうございます」


 と一応レベルでお礼は言ったものの、意味がわからなかった。

 別に煌びやかな装飾が施されているわけでもない、古びた小ぶりの棍棒にしか視えない。

 これが良い物なの?

 王太子殿下を疑うわけでは無いけれど、これを私にプレゼントする意味が理解できなかった。


「どうした?手に取ってみろ」


 そう言われたので、私はうやうやしく、その棍棒を手にとった。

 小ぶりの為非力な私でも片手で持つことが出来る。

 が、実際に持って分かったのはそれだけ……。

 王太子殿下がなぜこれをプレゼントしてくれたのかについては分からないままだ。


「それはタイタンカジェルと呼ばれている物だよ」


 と、王太子殿下の発言に私は、


「タイタン?……それは土の上位精霊の?」


「そうだ、さすがジェーンだな。タイタンの事は知っているか?」


「はい。……確か大地の女神ガイアとその息子ウラヌスの間に生まれたという精霊の事ですよね」


「そうだ、よく勉強しているな」


「恐れ入ります」


「それはその名の通り、土の属性を持つ代物だ。土属性の適性が高いジェーンにピッタリだと思ってな」


「そうでしたか。私のような者の為に、このような貴重な物を下賜していただきありがとうございます」


「そうかそうか、思った通りだ。ジェーンなら喜んでくれると思ったぞ」


 そう言って王太子殿下は「うはははは」と笑ったけど、正直言ってどうせくれるなら私は最初に期待したアクセサリーの方が良かったよ!

 と、思いながら、私は心底嬉しいと思わせるような満面の笑みを浮かべるのだった。

 はぁ……。

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