表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Scrum Hearts  作者: Lio
プロローグ
3/58

芽生えと枝分かれ

 主人公登場。名前はまだ明かしません。イルが言っていた名前の意味はもうすぐ分かるかと。


 キャラクターがその瞬間考たり思ったりしている事と、深層心理的に自然と認識している事をごちゃ混ぜに書いていますが、口語か堅苦しい文章かで書き分けています。

 よぅわからんわ!!って方は作者にケンカ売られてます。そう、貴方の読解力と想像力が試されているのです。作者に。 何様だ。




 「ぃやー、参ったなぁ…」



 日曜日、晴天。


 天気とは裏腹に…………いや、違うな。

この青い空のように俺の心はブルー。

 もっとも澄み切った綺麗な色ではなくどんよりと暗い青。

 ガシガシと頭を掻き毟る指に黒い金たわしが纏わり付いてくる。



 誰しもが経験があるのでは無いだろうか?


 学生の頃、部活動に熱中し過ぎて疲れ切った次の日の授業中。

 いい歳してゲームで徹夜した後の会社の、これどうでもいいなって内容の会議中。

 大学のレポート発表会、教壇の上でド下手糞なプレゼンを披露する知人を見ながら。

 興味も無いのに恋人に連れて行かれた音楽会の会場ホール客席で。



 まずい時にこそ何故か穏便に済ませてくれないあの『ビクンッ!』ってやつ。正式名称はジャーキングとか言うらしいけどまぁそんなのはどうでもいい話だ。

 久々にヤツに襲われて今日やらかしてしまった。それも盛大に。





 なんだか大切な夢を見ていた気がする。

 …………ダメだ思い出せん。


 そもそも〝大切な夢〟ってなんだ。聞こえだけは良いけど別に〝将来の夢〟とかじゃあるまいし、就寝中の夢なんて大概どうでもいい事ばかりじゃないか。




 地元は比較的田舎。何か拘りたい買い物が有ればこれまた比較的都会で近い(と言っても電車で片道1時間程かかる)隣の市へ行くのがお決まりだ。

 ドライブは好きなのだが、普段田舎道ばかり走る()()()には都心部の、それも休日の車道はストレスの塊だ。

 本日も車の運転を諦め、久しぶりの電車の中でリンゴ社製の精密機器に触れていた。

 田舎の始発駅の為、いつも座れる程には空いている。膝の上に鞄を載せて座り込み、ファンタジーの世界に入り込み、頭の中で物語を反芻し、妄想に耽り、そうしてうつらうつらとしていた時だった。

 夢から叩き出される感覚と共に、今の時代しなくなった脚気(かっけ)の検査を受けた様に右足が跳ね起きたのだ。

 目の前にはいつの間にか年若いカップル。ガラが悪そうだ。跳ね起きた右足の爪先は狙い澄ましたかの様に彼女さんの脛に吸い込まれた。



 ・

 ・

 ・



 「………った!! ハァ!? マジであり得ないんですけど!!」


 「あぁ済みません! 申し訳ありません!」



 あーーこれはやっちまった。今のは痛いだろう。


 立ち上がり腰を曲げで謝罪をする。



 「おぉい ぶざけてんのかテメェ あぁ?」


 「いいえ、ふざけても居ませんし喧嘩を売るつもりもありません。どうやら寝惚けてしまっていた様です。本当に申し訳ありません」



 周囲の視線が冷たいが今はどうでもいい。悪い事をした。ならばしっかりと謝罪をせねば。

 そう思い一度顔を上げ彼氏さんに向き合って弁明し、もう一度彼女さんに向け頭を下げる。


 一瞬見えた男性の目の奥にある物には気付かないフリをする。

 と、視界の端で急速に動く物を捉えた。





 いや、ちょっと乱暴すぎないか?





 自分でも驚く。反射神経等はまだまだ衰えきってはいない様だ。先程までとは逆の方向に腰を少し傾け、横っ面に飛んでくる握られた拳を条件反射的にギリギリで回避する。



 「っ! テメェやっぱふざけてんだろ なぁ?」



 男性は少々驚いたようだが、嗜虐的な感情を抑えきれない様子で、玩具を見つけた悪ガキの様な笑みを浮かべる。



 ふざけてません。悪い顔してんなーオイ。躱されてバランス崩して恥かいた八つ当たりしないで欲しい。

 ってか外してたたら踏むぐらい腰入れて振り抜いたのこの人!? あの体勢からよくあの速度で腕振ったもんだよ、すげーなこの人。こわい。



 ガッシリと胸倉を掴まれ引き込まれる。が、



 「 !? 」



 男性の方がこちらに引き寄せられて来た。それはそうだろう。学生時代はラグビーに全力を注ぎ、暫くは日本を守る部隊に所属していたのだ。現役を退いたとは言え、この程度で崩れる様な体幹は持ち合わせていない。とは言え、だ。



 どうすっかなーコレ。正直言ってガラ悪いって言うより頭悪そう。話通じなさそうだ。素直に殴られときゃ良かったか。つってもほぼ条件反射だったし。

 はぁ……こういう時って妙に冷静になるよなー。

 まぁ冷静なのは頭の中だけであって、足は大笑いしているんだけども。



 そう。膝が震えているのだ。いくら格闘球技や戦闘訓練等々の経験を積んできているとは言え、喧嘩慣れ等しているわけでは無い。こう言った状況に慣れてはおらず、無意識の恐怖で膝がガクガクと笑い出す。

 実は体幹が崩れなかったのも張り合って踏ん張ったわけではなく足が地面にへばり付いて離れなかっただけ。

 悪いのはこっち。抵抗する気など余り持ってはいない。だというのに男性は度重なる思わぬ事態を恥に感じたのかヒートアップしていく。こちらにとっても思わぬ事態だ……………

 ハッキリ言って胸倉を掴まれた今、完全に組伏すチャンスなのだ。組伏すどころか、その気になればいくら体が震えて居ようと返り討ちにするくらいは出来る。

 余裕。そう思えるだけの事は今まで積み重ねて来ている。


しかし、それでも



 今回悪いのは明らかにこっち。組伏せるとか無ぇな。謝らなければいけない相手がいる。



 つまりはそういう事だ。


 例え男性の目に最初から嗜虐的な輝きが見えていたとしても。


 大義名分を得て意気揚々と暴れ回ろうとする薄寒い感情が見え透いていようと。



 女性に対してはきちんと謝意を伝えなければなるまい。










 結局、合計4発の拳が鳩尾と顔面にめり込んだ。


 初手・男性。1発顔面。 痛い。



 「大変失礼いたしました。」



 次手・俺。女性に謝罪。 ホントすいません。


 3手目・男性。鳩尾にアッパー気味のモーション。


 4手目・俺。効かない(フリ)


 もう1発鳩尾。 


 ねぇ!?めっちゃ重いんだけど! 痛え!苦しい!ヤッッバイこれぇぇ!!

 こいつっ………ボクシングか何かやってんだろ!? モーションめっさ綺麗ね! 軌道全く同じね! スゲェよ! お前スゲェ! スッゲェ痛え!



 「本当に済みませんでした。」



 息苦しさを隠すようにもう一度腰を傾けて女性に頭を下げる。



 「…………ねぇゆー君、もういいよ行こ?なんかコイツキモいし」



 キッ!? ウッソだろ!? 謝ってただけじゃんか? ヤローに対してはもう謝る気もないし喜ばせるのも癪に触るから歯牙にも掛けないフリして無視して謝罪してたけどもキモいって!


 ……あぁ……………キモいな。


 傍から見ても殴られながら微動だにせず謝罪する男はキモいわ。ホントだ〜。


 6手目・ダメ出しの顔面。痛いっての揺れるわ脳が!

 唾まで吐きかけられた。酷い。泣くぞいい加減。



 ・

 ・

 ・



 年若いカップルはその後隣の車両へ移動していった。 痛む胸部を抑え、口内に血の味を感じながら席に着こうとすると、隣に座っていたおばさんが立ち上がり離れていった。そこでまた周囲の視線が意識の中に蘇って来てしまった。



 冷たい。



 最近になって漸く気が付いた、いや、気が付かなかったフリをしていた。

 遠い親戚にあたるという育ててくれた叔父 叔母の瞳の奥にある暗い何かを思い出してしまい、居た堪れなくなり目的地を前に電車を降りて来た。


 地下鉄に乗り換えようと進みはするものの、駅を出た途端に感じる柔らかな日の光に包まれ、心情とかけ離れた暖かさに少し落ち着きを取り戻してベンチに腰掛けたのだ。 鞄からチリ紙を取り出して顔にへばり付いた、乾き始めて異臭を放つ液体を拭き取り、ぼんやりと空を眺める。



 同じ青なのに気持ちのブルーとは違い、こちらはこんなにも暖かい。



 振り返り駅のホームの壁に取り付けられた、体育館にありそうな時計を見る。分針は6の少し手前。

 8時27分



 「……………帰るか?」



 PCのマウスがイカレたので『大きい写真機』に買いに来たのだが、不便ではあれど無くてはならない物でもない。こんな気分で強行してまで買い物に行かなくとも…………そう考えていると、



 リ…………ィィイイン



 鈴の音。この空の様に澄み渡る響きが微かに聴こえる。思い出せそうな不思議な感覚。

 夢の内容を忘れてしまった事すらも既に忘れていたのに。



 導かれる。夢に。



 未だ思い出せもしないが確かに記憶に刻まれた夢に。

 夢の中で誰かに言われた言葉に。

 この降り注ぐ暖かい日の光に。




 ─── 光の導を ───




 耳に、記憶に、意識に。

 文字通りに輝くように微かに残るその言葉。


 突然の不可思議な感覚に聴こえた綺麗な音色の事など頭から抜け落ち、意識する暇すらなく立ち上がり歩み始めていた。


 多分、何かがある。


 今日この時に目的地へ向かう事に、何か重要な事がある。昔から勘は良い方だった。今はこの感覚に逆らわない。勝手に進む足に全てを委ね、地下鉄へと乗り込んだ。







 口内にも不思議な感覚が…………。


 ………ん? あ!?

 ……………歯折れてんじゃねぇかクソが!


 第三者視点とかも書きたくなる事あると思うんだけどそれはそれで上手く書き分けられたらいいのになーって第三者的に考えてます。まだ他人事。


 もう教えてもいいなって思った情報、主にキャラクタープロフィールやバックストーリーでその時何があったのか、また間延びしそうな回想などは〝Scrum Hearts 〜Veins of a leaf〜〟という関連作品として描いていこうかと思っています。



 あ、因みになんですが今回出て来たカップル。女性の方は『里美』さんと言います。

 …………あれあれぇ〜?



 まぁこんな感じにモブキャラにも細かい設定一杯あるんですよね。通退勤の車の運転中暇でして。音楽聴いてそこからストーリーの細部のインスピレーションを得たりモブキャラの設定考えたりしてます、はい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ