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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第八章『学校という小さな世界』
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第95話 圧倒的弱者

 俺の介入には莉櫻でさえも驚いていた。それほどまでにこの会議は重要で慎重にやらなければならないようだ。こんなことになるのならば会長を連れてくるべきだったな。とはいえ時間の問題だが。


 それぞれのリーダーは俺なんか比べ物にならないくらい存在感を醸し出していた。

 野郎の外見説明は面倒なので省こう。どれもドングリの背比べのように特徴は薄い。


「何の用だ、ここは本来立ち入り禁止の場所だぞ?」


 自分たちのことはたまに挙げて大声で叫んだのは永見優斗だった。こいつは確か明李のリーダーだ。一輝がずっとにらんでいるので間違いじゃない。


「……それはお前らも一緒だと思うんだが」


「うるせぇよ。質問に答えろ」


 永見は足で俺を押し付けた。痛くもかゆくもない。本人は辱めようとでも思っているのかもしれないが、残念ながら俺にプライドなんてものはない。されるがままにしておこう。


「まぁまぁ優斗、この話の本質はそこじゃない、だろ?」


「なんだよ虹希」


 こいつが神鍋か。インテリ系か、少し面倒だな。


「何の用かはもう全員が知っている。ここで訊くべきはどうやってここを割り出したか、だ」


「適当じゃない?」


「いや、鶴田。それはないだろう。松平はそんな感情で動くような人間じゃない」


「何か知ったような口ぶりだな」


「癪だがこいつの知恵を借りていたことがあってな」


 感情で動くやつではない、か。

 確かにそうかもしれないなと思う。未来にあるはずの可能性が1%でも上がるように行動しているのは事実だからだ。沖田とはそこまで話した記憶はないのだが……。よく見ているな。


「……お前らの会議を傍聴しに来た」


「何のために?」


「……俺のためだ」


 はぁ?と不思議そうな顔を浮かべる永見。こいつは頭が弱そうだ。とはいえリーダーとしてここにいるからには何か持っているはずだ。


「松平君。君の思いは残念ながら聞き入ることができない。ここから去るんだ」


「おい。野放しか?口止めがいるんじゃないのか?」


「優斗はすぐに拳を使いたがる」


 なぁ、俺はずっと静かに座っているのに殴られるの?さすがに痛いし、嫌なのだが。


「……待て。聞きたいことを全部話す。だから殴るのは勘弁してくれ」


 早々に降参のポーズ。永見8っと舌打ちすると素直に収めた。リーダーたちは俺の条件にさも当然とばかりに頷いた。


 だが、残念だったな。


 俺は全部話すといった。だが真実を話すとは言っていない。歩いているあいつにも聞こえているはずだ。そして俺の真意を理解しているはず。


「どうやってここを知った?」


「……屋上への階段は本来使われることがないが、ここだけ使われた形跡があった」


「どうして屋上階段を調べた」


「……俺の昼飯場だから」


「それは少し悪いことを聞いたな」


「目的は?」


「……派閥の調査。状況次第では解体」


「はっ。笑わせんな。何もできやしねぇくせによ」


「……知ってるか?今、派閥の暴動が問題視されている。証拠が立証された時点で、解体は確実だろうな」


 最初にすべてをハンスト言わなければこんなものはただの噂話と片付けられていただろう。俺は真実を振りかざし、のどに狙いを定めた。


 真実は暖かくなった嘘よりも冷たく、つらいものだ。そして真実に脚色を施すことで、より真実が真実らしく信じてもらえるようにしていた。


「はったりはそこまでで十分だ」


「……神鍋虹希。心当たりがあるような顔をしているな」


「別に、元からだ」


 目は口よりも素直に真実を吐く。

 神鍋は俺たちが動くことになった原因の水原結女のリーダーだ。俺はあえて、心当たりがありそうと言葉を濁したが、ないはずがなかった。


 だが、論より証拠。どれだけ真実を吐いたとしてもそれを裏付ける証拠がなければ信じるにはなりえない。

 人間が人間を信用していないことがこれでもかと伝わってくる。まぁ。信用をしない点に対しては完全に同意だが。



「……そうか、ならいいんだ」


「心配などいらない。今、必要なのは君の処分だけだということをもう少ししっかりと自覚した方がいい」


「……俺は話した。まだ聞きたいことがあれば聞く。ないなら俺に残されたものはない。好きにしてくれ」


 リーダーたちは顔を見合わせ頷いた。

 ここまで予定通りだと調子が狂いそうだな。俺は盗み見るようにして顔色をうかがいながら毒づいていた。


 永見が俺に近づいてきた。ちょうど、殴るほどの間を開けて。


 俺は瞬時に悟ったがもう遅い、刹那の空白があり、その間に俺の体は宙を舞った。


「なら後悔しろ。お前が一人でここに来たことを」


「派閥の調査?笑わせないでくれ。そこまでmをつけられるようになったのはすべて君のせいじゃないか」


 意識が混濁とし、空が青いことしかはっきりわからない。俺は殴られたのか、右ほほを手で優しく触れると地理っと痛みが来た。痛い。


「松平君を殴るのはそれでも間違ってる!!」


「鶴田、松平の肩を持つのか?」


「俺は富貴委員として言ってるんだ」


「ちょうどいいじゃないか沖田。こいつもネタは上がってる」


「あぁ、まさか自分が成功したのに飽き足らず、ほかのことにも首を突っ込んできているなんてな」


 リーダー同士で分裂が起こったようだ。ターゲットにされているのは莉櫻か?だとすると非常に不味い。


「“五本の指”の3人が彼氏持ちだってことにはもう気づいてんだよ!」


 心の底から吐き出すような永見の言い方は俺のすべてを否定するのには十分だった。


「おい、立てよ、話はまだこれからだぞ」


 永見は俺を強引に立たせ、もう一発殴ってきた。抵抗したところで対格差や力の差があまりにも違いすぎるため、意味がない。俺は最低限守るべきところはどうにか防ぎ、永見の暴行に耐える。


「如月明李は!お前のせいで!そこにいる北山に!とられたんだっ!!」


「やめろ。それ以上は身が持たなくなる」


「人のこと言ってる場合かい?鶴田君。君は彼を手伝った、つまりは同罪さ。あと思念も混じらせるなら一人だけいい気になりやがって」


 神鍋が莉櫻に突っかかっていった。うっすらと見えた中で莉櫻は神鍋にやられていたように思う。


「沖田!どうして動かないんだ?!」


「永見、殴るのをやめろ。一つ聞きたいことがある」


 永見は手を止め、俺を突き飛ばした。

 こんな状況、俺は考えもしなかった。殴られることもそうだが、相手が既に情報を得ていたことが何より大きい。


「美玖と付き合っているのは、お前か?松平」


 俺が敵に回したくなかった人物が目の前に敵として立っている。同頭の中で組み立てても俺にはどうしようもないことがわかる。


「……あぁ、俺は美玖と付き合っている」


「最初の友達になれると思っていたが、残念だ」


 俺の作戦は失敗で間違いだったが、筆頭だけ俺は正解を言った。はっきり、堂々と言い切った。もうあとなんかどうでもいい。清々しい気持ち。

 どうしてか俺は心の内でこいつをライバルだと思っていたのかもしれない。だからこそ一番、警戒し、一番遠ざけていた。従兄弟だというのも俺にはないアドバンテージとして認識してしまい、謎のコンプレックスを抱えていたのだろう。


「……殴るなら殴れ。お前にはその権利がある」


「歯、食いしばれ」


 俺はおずれた痛みにたまらず意識を手放した。そしてこんな状況になって悪いと思いつつも、ドアが開く音にすべてを任せ、うまくいくことを願った。

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