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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第八章『学校という小さな世界』
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第94話 明李のリーダー

本日二回目です

 数日が経過した。調査は十分に成果を上げ始め、こちらとしても手を打てるようになってきた。真鐘の件は片付いたので残るは四人のリーダーだ。


 俺としてはあまりにも皆目見当がつかないので当然丸投げである。実に清々しい。


「潤平、話がある」


「……すぐに向かう」


 こうして美味しい所を貰っていくのだ。だが、ここで狂うことになれば責任放棄がはできない。ある意味でとらえると一番恐怖する役割だ。

 一輝に連れられてやってきたのは屋上前の階段だった。


「……こんなところに呼び出してどうしたんだ?」


「リーダーの足取りをつかんだ。この先の屋上ですべてのリーダーが月に一回集まる会があるらしい。それが今日だ」


 一輝はスマホを俺に見せつけてきた。そこにはびっしりと埋め込まれたスケジュールが映し出されていた。


「……ここまで調べていたのか」


「お前らのためじゃない。個人的に行ってしまえば派閥や学校なんかどうでもいい。ただ明李に頼まれたからやってやっただけだ。感謝してくれよ」


「……あっそう、どうも」


 とても気持ちのこもった声で感謝を述べる。


「感謝が感謝していないように聞こえるがまぁいい。情報提供ついでに助けてやるよ」


「……は?助ける?この先にいるのなら入っていけばそれで終わりじゃないのか?」


「リーダーの会合ってのは秘密裏にやられているものだ。鶴田から教わらなかったのか?」


「……いや、まったく。それで?どうして助けるになるんだ?」


 おそらく莉櫻はこれぐらいならわかってくれるでしょとでも思っていたに違いない。一輝が止めてくれなかったら危なかったな。いや、やる気を引き出した明李のおかげだな。


「リーダーにはそれぞれ突出した得意なものがある。だからこそ、その派閥であがめる五本の指のリーダーなんだ」


「……莉櫻は頭の回転だろう」


 俺といることでさらにその特技は伸びたようだが。

 一輝はしっかりと頷いた。


「今、一番勢力が弱いとされているのが、真鐘麗律の派閥。そしてその次が明李の派閥だ」


「……一輝は入っているのか?」


「くだらない」


 興味本位だったのだが結構強烈な返しだった。だが、明李の派閥が弱まった原因の一端は少なからず一輝にある。俺と長い間、コンタクトを取ろうとしなかったのもそのことを一人でやっていたからだろう。

 もちろん、俺に相談をされたところで頑張ってとした言わないのだが。


 こほん、と一つ咳払いされる。


「話がそれた。戻すぞ」


「……どうぞ」


「今のところ、お前らの作戦に乗ってくれているリーダーは鶴田しかいない。だが、ここで一気につぶしておかないと後々面倒だ。そこで作戦を使う」


「……作戦?」


「あぁ、作戦内容としてはお前を俺が裏切りとして拘束して鶴田のもとへ連れていく。以上だ」


 それを作戦とは呼べないのではないだろうか。だが危険だと言われたルートを手ぶらに等しい条件下で歩きたくはない。俺は乗るしかなさそうだと決定づけた。


「……リーダーの名前、知ってるか?」


「鶴田はもういいよな。明李の派閥リーダーは永見優斗。水原のリーダーは神鍋虹希。松下帆波のリーダーは曽川彩貴。瑞山美玖のリーダーは沖田烈」


「……間違いないんだな?」


「あぁ。情報が意図的に改竄されていなかったら」


 美玖のリーダーは沖田か。やはりそんな気はしていたのだ。不良だった過去を見れば腕は相当に立つだろうし、PTA会長や兄の効果もまた特大。一番気を付けないといけないのは沖田だ。


 その一方で松下帆波という生徒が不登校の生徒なのだろう。ほかの全員が知っていて消去法でそうなる。まさかそこだけ遂にしていることはないだろう。


「……行くか」


「ちょっと待て」


 なんだと振り向いた瞬間、顔面に強烈な痛みが走った。どうやら殴られたらしいと気づいたときには二、三発さらに殴られてたまらず座り込んでしまう。


「未傷は怪しまれる。かといって中途半端だと変にばれる。結構本気でやったからおそらくはバレないだろう。そう睨まないでくれよ。これで潤平との確執もチャラにしてやるんだから」


「……支払いが暴力かよ。あ~口の中が切れてる」


「それでそれっぽくなっただろ」


 ふん、と鼻を鳴らしているように見える。ここまでやっといて屋上に誰もいなかったら三倍にして返してやろうと思った。

 俺はよろよろと立ち上がりドアノブに手をかけた。


「どうした?いかないのか?」


 だが手をかけたまま回さなかった。いや、回せなかった。

 何かがおかしい。何かが引っかかる。そこに何の根拠もないが、直感が俺の動きを止めた。


 この先にリーダーたちがいる。一輝からの情報で明李が頼んだことなので嘘の可能性はゼロに等しい。だが、当人である莉櫻が会合のことを俺に話さなかった理由はいったい何なのだろう。

 俺と莉櫻ならば、目的も考え方も似通っているため、必要な情報は共有するはず……。しかしそれがないということは何か不利益なことが起こるからではないのだろうか。


 一回そう思い始めると可能性はとめどなく溢れてくる。

 俺はドアノブを音が立たないようにゆっくりと離した。


「……少し引っかかるんだ」


「ここまで来てビビったか?俺が明李のために調べてきた情報だ。偽物なはずがない」


「……そこは疑ってない。そこじゃなくて、俺たちの作戦がリーダー側にばれているのではないかと疑っている」


 一輝に衝撃が走った。

 一人で調査をしたのならば調査をしているという調査をされているのに気づくはずがない。相手は派閥、人も多い玉枝、簡単に役割分担で見張ることができてしまう。


「ならどうする、引き返すか?」


 本来ならそうするべきだがタイムリミットも迫ってきている。


「……今回は突っ切ろうと思う」


「正気か?」


「……リーダー側がこっちの情報をつかんでいる。これは莉櫻が会合の話を俺にしなかったことからもほぼ間違いなく正確な情報だろう。なら、こちらは知られていると分かったうえで動けばいいだけだ」


 俺としてはこんなに危険な橋を渡りたくはないのだが、仕方がない。一輝も俺の背うt名を聞いて納得はしていないが一理あるとは思ってくれているらしく、何も言ってはこない。

 傷もつけられるだけで帰るのは損をしているしな。せめて二、三人ぐらいを一緒に弄ってやりたいが、果たして……。


「侵略者の顔だな」


 一輝が一言。


「……もとからじゃないのか?」


 俺が一言。


「違いない」


「……ほっとけ」


 軽口をたたきあい、俺は両手を後ろに組む。一輝はその上から押さえつけるように見せかける。

 一輝がドアノブに手をひっかけて回す。

 一世一代の勝負とはこのことをいうのだろうか。高校一年生にしてはずいぶんと早いものだ。


「会合中失礼します。盗み聞きをしている生徒がいたので拘束して連れてきました」


 一輝が嬉々とした声で報告する。演技ではなく素のような気がしないでもないので何とも複雑な気分だ。俺はちらっと莉櫻を見る。

 その顔はこないでってメッセージを飛ばしてたのに……。けどまぁ、潤平なら来ると思ってたよ、適菜寛治だった。


「奴隷部長じゃないか」


「奴隷?そんな部、あったっけ?」


「あーあれだよ。再起部とかいう廃れかけの部活」


「どうでもいい」


 各々が口々に言いたいことを口にした。これがリーダー達か。俺は一輝にいまだ拘束されたままだったが、特にあらがうわけでもなく、おとなしく命じられるままに地面に正座した。


 さて、見物だな。

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