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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第八章『学校という小さな世界』
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第93話 麗律のリーダー

「……ちょっといいか、莉櫻」


 俺が莉櫻を呼び出したのはあくる日の夕方だった。俺の神妙な面持ちにただならぬ意を感じた莉櫻は一瞬だけ眼光を鋭くし、俺の真意を読み取ろうとした。そして自分の中で整理したらしくすぐに行くと返事があった。

 俺が呼び出した場所は生徒会室だ。


 生徒会室は学校の中枢機関としても役立っているため、防音設備がなされている。こういう私的なことに使うのは本来いけないことではあるのだが、以来の一環であるし、生徒会長からのお墨付きももらっているため大丈夫だ。


「お待たせ。潤平が会長に見えた」


 最初からジョークを入れて来る。俺はあいつとは違う。


「……早速、本題に入ってもいいか?」


「ちょっと待って。最初に一つ、確認させて。どうして今回、俺を頼ってくれなかったんだい?」


 確かにそうだ。前みたく莉櫻を使っていればこの真実にもう少し早く気が付けることができたかもしれない。だが、


「……俺が一輝を使ったほうがいいと判断したからだ」


「そっか」


 莉櫻は深く追及することをしてこなかった。言葉とを濁した俺に鋭い反撃の一つや二つしてくれものだと思っていたのだが。莉櫻は俺が思い描いていた莉櫻とは少し異なっていたらしい。


「そして俺をここに読んだってことは頼らないといけなくなったってことかな?」


「……当たらずも遠からずかな」


「煮え切らない答えだね。……本題に入ろうか」


 なかなかに、言いにくいことを切り出すというのは勇気がいるものでそれが、男に対してでも全く変わらない。


「……気分を悪くさせる前提で訊く。お前が“真鐘麗律の派閥リーダー”か?」


「うん、そうだよ」


 意外にもあっさりと認めた。しかし、莉櫻が続けた言葉に俺は驚愕する羽目になった。


「といっても今は俺一人だけどね」


「……どういうことだ?!」


「どういうこともなにも……。今、麗律の派閥は俺だけなんだよ。だからリーダ-ともいえる」


 いや、俺が聞きたいのはそこではない。俺の中での図式は、『みんなに人気→“五本の指”→五つの派閥→人、ウジャウジャ』のはずだったのが一人?!いったい何があったというのだろうか。


「……一人か」


「うん。一人」


 この時、ある一つの仮説が浮かび上がってきた。もしその派閥が真鐘の人気低下ではなく誰かがわざとしたのだとすると巧妙な一手だと評価せざる負えないのではないだろうか。

 そしてそのことができる人を俺は今、目の前にいるやつしか知らない。


「……わざとか?」


「まぁ。といってもここまで先を見てやったってわけじゃないけど」


「……どうやって?」


「簡単なことだよ。みんなに話したんだ。『俺と麗律は付き合っています』ってね。祖したみんな、急に白けた顔になって最後に残ったのは俺一人さ」


「……それは――――――」


「知ってたんだ。このままじゃ危ないって。絶対に結ばれることない派閥が麗律をいずれ苦しめることになるだろうってことぐらいはさ。わかってたんだ……」


 悲しそうに漏らす。莉櫻もまた、人間関係などには頭が回る気の利く男だ。そんな彼が、忍び寄る影を察知するのに不思議はない。


 ただ、今のこの表情を見る限り、行動は不正解のように見える。代償が莉櫻一人では背負えないほど、大きいのだ。莉櫻は派閥の存在が脅威になると判断し、自ら交際宣言することで、半ば強制的に解散させた。

 しかし、人間の支持というものはそれだけで自信へと変わるものだ。真鐘の人気は人と言う数値で表されていたものだったがそれをなくしてしまったために、背徳感やこれでよかったのだろうかと後悔が生まれる。

 一言でいえば莉櫻は後悔していた。


 人間はよく『後悔しないように』というが、後悔しないことは無理だ。


 片方を選んだとしてもそこで得られる過程や、結果などよりもう片方を選んでいれば、という期待や喜悦感の方に憧れを抱くからだ。だから、後悔はどうしてもしてしまう。


 したくないのなら。

 選ばないという選び方をするか、自分の選んだ方にしかないメリットを掲げるしかないだろう。


「……どうしてそこまでしたんだ、方法はあっただろ」


「中途半端に忠告しても聞きっこない。そんな人たちに一ン番有効なのは何だろうって考えたらこれしか見えなくなった」


「……」


 つらかっただろう、という言葉を飲み込んだ。どこか他人事のような気がしたからだ。俺に莉櫻のような漢気はないし、自己犠牲する勇気も持ち合わせちゃいない。


「……偉いな、莉櫻」


「俺はこれで会ってたのかな、危険はこれで完全になくなって言えるのかい?俺はそれだけが知りたい」


「……悪いが断定はできない。俺がこうして莉櫻の前にいるのがその証拠だ。だが、莉櫻のやったことは絶対にプラスに働くはずだ」


 莉櫻のやったことは正しいのか正しくないのかの二択で問われたときに、莉櫻面から見ると正しくなくて、全体面でみると正しいということになるだろう。


 心のダメージがいつにも増して酷いので、真鐘にいろいろいやしてもらえるようにつたえておかなかければならないようだ。


「断言しないところが潤平らしいや」


「……一番信用できるだろ?」


「まぁね。それで?これだけで終われるならここじゃなくてもいいよね」


 何かまだあるはずだよね、と訴えてくる。言わなくても大体察してくれているのが楽だ。


「……ほかのリーダーを知っているのか?」


「残念だけど、知らないよ。でも派閥で一番大きいのは一番知ってる」


「……もしかして、美玖か?」


「当たり。ちゃんとみんなにも聞こえているかな?」


 俺はそっと気づかれたスマホの通話を切った。ただ、会長に伝われば十分だ。


「……悪い、バレてたか」


「少し不思議だったんだ。潤平が手をぽけっとに入れてるの」


「……今、会長が探しているはずだ」


「俺は何をすればいい?」


「……真鐘に癒してもらえ」


 莉櫻はえっ?!と驚いた声を上げた。


「……お前は十分役目を果たしたんだ。少しぐらい恩恵があってもいいだろ」


「でも、自分でやったことだから」


「……会って話したい、と思うならするべきだと思うが」


 少し意地の悪い質問を投げてみる。

 ちなみに今更ではるが、俺が仕掛けた通信機、スマホのみなはずがない。しかも、会長とだけ言ったが、その中にはもちろん関係する皆さん全員が含まれている。


「少しだけ……甘えてみてもいいのかな」


「……おうおう、そうしろ」


 今頃赤面してんだろうな、片方。


「潤平は美玖ちゃんに甘えないの?」


 な、なんだいきなり?!強烈なカウンターを放たれて困惑してしまう。昨日話した事実が詳細に記憶から呼び覚まされていく。


「……お、俺は何もしてないからな」


「今迄からすると十分してると思うんだけど……。早く仲直りしなよ」


「……いや、実はもうしたというかしてたというか」


 これ以上はやばい……。この会話は真鐘をはじめとして今回の主要メンバーが全員聞いている。……その中には当然美玖もいる。


「どういうこと?!きいてない」


「……言ってないもんな」


「ちょうど二人だし、潤平がさっき通信機も切ってたし、ここは防音、今なら話せるね」


 ひ、ひぃいいいいいいっ!


「……俺のはいいだろ、……あぁああっ!」


 この後、俺は莉櫻に逆らうことができずに、仲直りの経緯や今まで黙っていたことまですべて吐く羽目になった。自分の用意周到さを呪った。

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