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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第八章『学校という小さな世界』
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第91話 進撃の一歩

 まず、俺達はこれからどうすれば正解に行くことができるのだろう。俺のプランでは会長と一輝を使ってしまえば簡単に解決すると思っていたが、事はそううまくはいかない。こちらが攻めの準備をしている最中に黙って見ているアホはいないからだ。


 水原結女の相談というアクションはそれだけで十分な破壊力を持っている。なぜなら関係者が増えるからだ。そうなると必然的に会長との協定が崩れてしまうことになってしまう。


 行動としては一刻も早く、リーダーを見つけ出すしかない。ただ相手もリーダーとして動く存在。もともと、他人と関わらない主義の俺や、普通に生活している人に気付かれることはないだろう。ただ隠れるよりも見つけ出すほうが楽なのは誰もが思う共通意見だが、探し出すにも時間がいる。


 時間がない中で時間を渇望している、という状態が今なのだ。

 俺にできることはもうない。いや、最後にあるかもしれないが、今、この瞬間にできることはなかった。


 新山さんが提供してくれたら……と結女の幻想を望む。実際、あの書類があれば、こんな情報に四苦八苦してないで、さっさと終幕に移動し、ハッピーエンド(?)のはずだったのに。


 思い出してイライラしてきた俺は、そばにあった机を蹴り上げようとし、足を上げたが寸前のところで止める。どうして俺がここまでしないといけないのか。そんなどこにもぶつけられない俺の思いだったように思う。


「今日は百面相だな、松平」


「……顔が変顔になってましたか?」


「いや?表情は変わらずだが、考えがコロコロ変わっている」


 どうしてわかるんだ……。エスパーかよ。

 大原先生はどや顔だ。どうやら俺がエスパーかよ、と思ったのも気づかれているかもしれない。


「……先生の気のせいですよ」


「そうか?いや、そうだな。私の気のせいかもしれんな。だが松平、一人でまた抱え込んでいるのはわかるぞ」


「……抱え込んでなんかいませんよ」


「いや、お前はもう少し人に背中を預けるというか、人を信頼して任せるべきだ」


「……信頼、ですか」


「そうだ……とここではあれだな。職員室にこい」


「……また、あそこですか」


「あぁ。泣いて喜べ?あそこに来るのは松平がダントツで多い」


「……無理なんですけど。俺が一番悪い奴みたいに思われてますよね、しかも」


 軽く、緊張がほぐれていく。職員室のいつもの場所につく頃には大分話すようになっていた。


「えっと、信頼となんだ?みたいな顔をしていったん中止したんだったよな?」


「……言い方に不満はありますが、まぁその通りです」


「相手に完璧に丸投げをする。その人ならやってくれるだろうと確信が持てる人に送るものだ」


「……迷惑ですね。勝手に信頼されてやること押し付けられるなんて」


「頼られているほうは確かに迷惑だと思うかもしれん。だが私は頼られた時の話ではなく、頼ることを前提として話している」


「……丸投げするほうは確かに楽だ。けど、そうなると、貸しを作ることになりませんか?」


「貸しを作るのは嫌か?」


「……まあ。一人で難なくできることならないほうがいいんじゃないですかね」


 貸しを作るぐらいなら人なんて使わない。俺の中にあるのはいかに効率よく物事を動かし、自分の役割を減らすか、のそれだけだ。


 先生もそんな俺のポリシーを薄々感じているようで呆れられたため息をつかれてしまう。


「可愛くない生徒だ。だが、そこまでひん曲がっているとおまえのみているものが私とどう違うのかも垣間見られる気がしてなかなかに面白い」


「……そうですか。小馬鹿にされた感じがしないでもないですが、あえてツッコまないでおきます」


「何もツッコミどころではないぞ?……まぁ、本題に戻すとだな、誰かに頼む、という行為を実際にやってみろ。そうすれば何かが見えてくる」


「……何か、ですか」


「抽象的すぎて嫌いか?」


「……いえ、ですけど俺がどう結論を出してもその回答は何かに当てはまりますよね」


「可愛くないなぁ。お前は。だがその通りでもある」


 先生は前に落ちてきた髪を片手ですくい上げる。


「だから少し、ヒントをやろう」


 俺と先生が何やら話し込んでいると勘違いした教師たちが不思議な表情をして俺を見た。そして何事もなかったように去っていく。何を話しているのかが気になるが、自分のことや面倒ごとなら仕事が増えるだけなので首を突っ込むことはない。


 先生は高校生ならお構いなしの心理を先生たちの中でということで封印したのだろう。


「今回の依頼を出したのは先生一同のように思っているかもしれないが、実はそうじゃない。それからこの依頼はただ解決すればいいというわけじゃない。ヒントはここまでだ」


「……ヒントですか?ヒントだとしたらなぞかけをしている気分なんですけど」


「ヒントだってただ教えているわけじゃないぞ。ヒントはヒントだ」


「……それで読めるのは神様ぐらいでしょ」


「神は確かに一瞬で解くかもしれん。だが、人間にだって知性があり、考える力がある。現にお前はそれぐらいのことを今までやり続けてきている」


「……それはたまたまで次も解けるかなんてわからないんですけど」


「解ける解けないの問題じゃない。解くか、解かないか。この二択だ」


「……わかりました」


 今の状況で分かったことが二つある。


 一つ目は今回の依頼をしてきたのは大原先生だということだ。自身はポーカーフェイスをかまして読まれないようにしていたが、時折窓を除く姿は未来を案じているように見えて頭から離れなかった。


 二つ目は依頼の裏にあるものだ。全員が善で行動できるわけがない。あくが交わって初めて人という動物は動くことができる。


「……これで先生に頼ったことになりますか」


「本当は私以外のほうが好ましいがそういうことだ」


「……先生は何を狙っているんですか?」


 言葉はまだまだ終わらせない。先生が頼れというのだから、知らないこと、分からないことは訊くしかない。

 先生は大きく目を開いた後、軽く微笑を浮かべた。


「私が腹に一物抱えていると思っているのか?」


「……えぇ、後は不発弾とかじゃなければいいんですけど」


「私は狙っているわけではない。狙われているものを守ろうとしているだけだ」


「……誰から?」


「沖田優だ。だが、幸いにも今回はお前のおかげで身動きが取れなくなっているようだな。……だから接触を試みたんだが」


「……最強のタッグじゃなかったんですか?」


 俺の記憶では大原先生と会長は仲が良く、いい協力関係だったはずだが、どこかに亀裂でも入ってしまったのだろうか。先生は容赦のない冷酷な目を向けてくる。


「表裏を見ろ。あれは外向けようだ。何も知らないのか?」


「……私と沖田、そして瑞山の因果関係」


「……別に知りたいとも思わないのでいいです。俺がきいたとしてもどうすることもできないので、話すだけ時間の無駄ですよ」


「本当に可愛くないな」


 そもそもだが、俺に可愛さを求めるのがおかしいと思う。俺より愛想のいい奴や、頭の回るやつなど多く居るはずなのにどうして俺だけこんな非難の眼で見られなければならないのだろうか。


「とりあえず、私が言えることはこのくらいだ。後は自分で考えて答えを出せ。期限は一週間だ。高校は義務じゃないからな」


「……すべて終われば話してくださいますか」


 ハッと息をのむ感触が伝わってきた。


「あぁ、約束しよう」


「……一週間で片づけます」


 俺はとある引っ掛かりを覚えていたのでまずはそいつに会いに行くことにしようと決めた。

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