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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第五章『夏休み、双子の悪魔編』
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第53話 幼女使い

「あっちに行った!」


「任せて莉櫻兄ちゃん!」


 遠くの方で莉櫻と瑠璃の声が聞こえてくる。俺はバレないように押入れの中に入り込んだ。真っ暗な視界と何一つ使っていない新品の布団。……あとであの2人用に出してやろうと思った。

 俺が何故、隠れているのか。それは簡潔にすると、“恋バナを話したくないから”である。莉櫻の恋バナは小学5年生を胸キュンさせるには良かったらしい。が、俺の恋バナなど誰も胸キュンしないことは容易に想像がつく。……まぁ、驚きはするだろうが。

 そんな訳で逃げているのだ。


「ここは?」


「お兄さんの部屋ですから安易に入らない方が……」


「問題ない。行くぞ瑠璃ちゃん!!」


「あいあいさー!」


 茜は辛うじて俺のプライバシーに気を遣ってくれているらしい。残念なことにそれは自分には適応されず、2人にも無視されてしまったようだが。

 俺の部屋は誰かたちのせいでぐちゃぐちゃである。その中に入るとはまた……物好きだな。


「茜ちゃんは押入れとか見てきてくれない?」


「私はそんなに必死に探す必要がないと思います」


「何言ってるの?経験談は何でも聞いておくべき!」


「それはそうかもしれませんが……」


「それに俺、潤平の恋バナを訊いたことがないんだよね。だからこの機会に訊いておきたい」


「茜、行って来て」


「あぁもうっ!分かりました。見てくればいいんでしょ」


 茜が来る。……莉櫻の癖に立派に幼女使いになりやがって、お前はスバル君か!

 押入れの中に入るため、会話は音でしか聞き取ることが出来なかったが、莉櫻と瑠璃は本気で茜はそこまででもないらしい。いろいろとツッコみたいことがあるが、バレてはいけないので黙っておく。

 コツコツ……と、足音が近づいてくる。我が家で押入れは俺が隠れている場所を含め、同じルームに3か所しかない。つまり、簡単に見つかってしまう訳で……。


「こんなところにいましたか」


「……消去法で最後に当たりました」


 眩しい光を目が取り入れているときに、茜は自身のラックの低さを堂々と語ってくれる。


「……無い胸を張るな」


「あ、あります!私の胸を馬鹿にしないでください!」


 ググッと更に胸を張る茜。腕を組んで見せかけているが、無いものは無いのである。


「……閉めてくれないか?」


「い、嫌です」


「……見つかるんだが」


「お兄さんなんて見つかってしまえばいいと思います」


「……何か怒っているのか?」


「別に。怒ってません」


 つん、と顔をそっぽに向けてしまう茜は眼が紅くなり、少し顔に赤みがさしていた。


「……わかった。胸の件は悪かった。ごめんな」


 俺は少し度が過ぎたと思ったので、謝罪した。しかし茜の怒りはそれではなかったようで、つんとしたまま反応がなかった。


「……話さないといけないのか?」


「みんなの前でとは言いません。私だけに」


 こいつもやはり小学5年生の少女、子供なのだと思った。皆の前では見栄を張り、興味ない風を装うが実際は知りたくてたまらないというやつ。

 茜は大声で、「お兄さん、居ませんでした」と叫び、俺が入っている押入れの中に入ってきた。そして、すっとドアを閉めた。


「これで大丈夫です」


 暖かい小さなものが俺の足の上に乗った感触がした。俺と向かい合っているのか、俺に背を向けているのかは急な暗転のせいで分からなかったが、ともかく手を伸ばせば茜がすぐそこにいるというのは分かった。


「……一体何が大丈夫なんだ?」


「恋バナを話すムードです」


「……暗くて何も見えないぞ」


「だからこそ人目を気にせずに話せます」


 莉櫻の時は何だったのだろうか。俺はそう聞きたかったが、訊けなかった。コミュ障のせいではない。茜が更に話し続けたからだった。


「お兄さんは随分と変わっています」


「……変わってる?」


「去年と一昨年も違いましたけど、去年と今年は全く違います」


「……自覚は無いけどな」


「何か心境の変化でもありましたか?」


「……まぁ、てか、心配してくれているのか?」


 瑠璃といつも一緒。喧嘩をして大泣きすることがあってもその日の内にはケロッとしてずっと2人の世界だったあの茜が?俺は夢である可能性を捨てることが出来なくなった。


「し、心配なんてしてません!たっだの興味本位です!……あ、おお兄さんに興味とかそんなことはありませんから!!」


 最後は勝手に自爆していきやがった。


「……分かった分かった」


「ならいいんです。……はやく話してください」


「……待て、そうせかすな」


 これでもちっぽけな男のプライドはあるのだ。小学5年生に話すのが恥ずかしい訳ではない。俺と美玖の事を語るのが恥ずかしいのだ。


「は~や~く~」


 茜は俺の方を向いてい居たようでポカポカと俺の胸板を軽く叩いてくる。……何故だろうか。相当後ろめたい気持ちが湧き上がってきた。


「……話すから離れろ」


「い、嫌です!」


「……な、なんで?」


「それは……そう!お兄さんの声を一言一句、聞き逃さないためです!」


「……ちゃんと聞こえるぐらいで話す」


「信用できません!」


 今度は頭を擦りつけてきた。……こんな奴だっけ…?暗闇で理性が外れているのか、気のうねれていないのかもしれない。

 女の子の甘い匂いが漂う。こいつも女の子なのか…。


「……話を聞く気がないだろ」


「いえ!この状態で訊きますよ。さぁ」


「……声が大きい。……あ、バレたかも」


 俺の耳には2人の足音が近づいてくる音が聞こえた。しかし、茜はハイテンション(?)のせいで気が付かない。

 呼びかけようとした時、バンと開けられた。


「兄ちゃん見っけ」


「大人しくお縄につけ!潤平!」


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