第51話 双子との生活
家に帰った俺達は早速、夕食の準備に取り掛かった。作る献立はハンバーグだ。2人共小学生の高学年となったからか、女子を磨こうと思ったのか、俺の手伝いをしてくれるようだ。……キッチンが狭く感じる。
「お兄さん。玉ねぎやります」
「ならボクは……何をすればいいの?」
「……茜、気をつけろよ。IHとはいえ、やけどなんて簡単にできるからな」
ふぁーい分かりました~と茜の声が聞こえる。自分は絶対に大丈夫だと思っているようだ。
「兄ちゃん兄ちゃん」
「……瑠璃は…そうだな。タネを作ってみるか」
にこっと笑みが零れる。やるべきことがなかったのが嫌だったようだ。
玉ねぎがフライパンによって音を立て始めた。いう真でもないが、俺によって既にみじん切りにされている。
「お兄さん。やりにくいです。台が欲しいです」
身長が足りないらしい。俺は近くにあった台を茜と瑠璃の元に置いた。
「ありがとうございますっ!」
「ボクは無くても平気!」
とことん同調する気のない2人である。
俺はどちらにも答えず、黙々とボウルに具材を突っ込んでいく。……あとは玉ねぎを入れてから時間との勝負だ。
「ボクは無いの?」
「……玉ねぎを入れてから捏ねる作業をしてくれ」
「分かった」
瑠璃の蒼い眼が俺を真っ直ぐ見つめてくる。……楽したい訳ではないのです。だから見つめないで!
「お兄さん。眼がぁ」
泣き顔で助けを求めてくる茜。玉ねぎを炒めるると眼が痛くなるのは当たり前の事だ。……どうして口呼吸をしていなかったのか。
「……おっ。上出来だ。上手だな」
素直にそう思った。玉ねぎは見事なきつね色をしていた。俺は茜の頭を撫でてやる。
「ありがとう」
泣き顔で言われると少々複雑な気分だ。
ごしごしと涙をぬぐった後、茜は自分の頭を見て、俺の顔を見てくる。……なんだ?急に顔まで赤くして、
「さ、触らないでください!」
バシッと手を払い、ドタドタと階段を下りて行った。急な罵声で、驚き、何が起こったのかわからなかった。
「兄ちゃん、玉ねぎは?」
おっと、時間との勝負だ。
「……すぐに入れて捏ねてくれ。それが美味さを分ける」
そういうと瑠璃は一生懸命に捏ねはじめた。意外と素直である。そして一年ぶりの俺の印象は“食い意地が張っている”だ。
ここで俺はようやく俺は茜の事を思い出した。……もしかして頭を触ったことで機嫌を損ねてしまったのだろうか。しかし、それでは「ありがとう(茜の言い方を似せて)」の意味が解らない。
悩めば悩むほど、絶対に解読不可能なパズルゲームを解いている気分になる。
「……なんなんだ。あいつは」
瑠璃は手を止めないまま、俺の呟きに返してくれる。
「茜は素直じゃないの」
「……それは知っている。スーパーの件がその証拠だ」
「ん~ん。兄ちゃんには本当の茜の気持ちが見えてないんじゃないかな」
「……どういう事だ?」
「そこまではわかんないって言っとく。双子だけどボク達は違うから」
瑠璃はそういって手を動かすも、段々と疲れてきているようで、動きが鈍くなっていた。
「……もっと速くだ」
いても経っても居られなくなった俺が、後ろから抱え込むようにしてボウルに手を突っ込む。
「兄ちゃん?!」
「……弱い。全然ダメだ」
驚いた様子の瑠璃だが、かまってやる余裕はない。コネが足りていないにもかかわらず、体温で温かくなっていたのだ。
「ひゃっ?!」
俺は瑠璃の小さな手を握り、勢いよく混ぜていく。これでコネも大丈夫になるだろう。
「……これで大丈夫かな」
「ボクが大丈夫じゃないよ!」
瑠璃が赤い顔を振り向かせて俺に抗議をしてきた。眼がいつもより碧くなっている。……一体どうしてというのだろうか。
「……どうした?トイレか?」
「違う!分かってて行っているの?」
いえ、本気で思ってます。
「……じゃぁなんだ?」
「ボクももう小学五年生なんだよ?」
「……まだ、な気もするが、それで?」
「さっきのは……少し……強引だった」
あ、痛かったのか。確かに言われてみれば強引にボウルの中をかき回した。小学五年生に、それも序足には少し、しんどいことだったようだ。
「……すまなかったな」
俺はハンバーグの形を作りながら謝罪を口にした。瑠璃はすっと居れとキッチンの間を潜り抜け、手を洗い、ドタドタと同じリズムを奏でながら下へ降りて行った。……何も言わないのかい!
俺の部屋だろうか。荒らされているため、もはや手遅れな気もするがあまり入って欲しくは無い。
別にエロ本やエロゲーがある訳ではない。そこら辺には手を出していないからな。……まだ。本当の理由は『手紙』だ。
4年も付き合っていると、家族旅行の土産や誕生日などでものをくれることが多々ある。
俺は煮込みにして、下へ様子を見に行こうと決意した。……ものと一緒に入っている美玖からの手紙を見られるわけにはいかないのだ。
「……ふー。下準備は終わりだな」
急いで俳句が、足音を立てないようにそっと降りる。そして俺の部屋を見て、絶句した。
俺のベッドの上でスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている2人が居たからだ。
「……」
案の定、寝ていたのか。こいつらをさっさと起こして食器の用意でも……。
「……マジか」
2人の手に握られていたのは『手紙』だった。2人に美玖との関係を知られてしまった。……謎の罪悪感が俺を襲ってきた。
「……オレハナニモミテイナーイ」
俺はこっそりと何事もなかったかのように逃げた。
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