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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第四章『夏休み、海編』
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第47話 麗律の作品(ネタ)

「あとはここだけなんだけどな……」


「そこは本当に要らないからっ!」


「ここがないとダメだろ?大事だぞ?」


 俺が真鐘と莉櫻の元へ向かうと、2人は何かを言い合っていた。というより、莉櫻が一方的に言われていた。

 この2人は現在合作中である。莉櫻をキャンパスとして真鐘がいろいろと芸術を組み合わせていくのだが、


「……よりによってこれかよ」


「ん?松平か。どうだ?この作品の出来」


「……この作品に感想を求められても困る」


「潤平?真面目顔でそんなこと言ってないで助けて」


「……その状態で言うな」


 莉櫻は砂によって一糸纏わぬ姿にされていたのだ。その姿はまさに莉櫻の身体という感じがしていた。多少の筋肉の盛はあるものの男性の身体という意味では非常に精巧に作られていた。問題は、


「ここだ。さっぱりわからん」


 真鐘が指し示したのは、男の証明部位だった。真鐘は1人っ子らしく、勿論父親と風呂に入ることなど無いため、シンボルマークの形を知らないようだった。

 教えたい。だが、教えては放送禁止状態まで成功に作り上げてしまうのではないだろうか。それは困る。警察が来るのも困る。


「……美玖は?」


「美玖なら莉櫻の姿を見た途端に、顔を手で隠してテントに走っていったぞ」


 先に気になっていたことを解決しておく。まだまだ実物とは程遠い莉櫻の砂シンボルであるが、場所が場所なだけに恥ずかしさの方が勝ってしまったのだろう。美玖は乙女である。平気でいる真鐘の方が女子として駄目なのに違いない。


「ミケランジェロを思い出せ」


「あれを凝視する女子がどこにいる?!覚えているわけないだろっ!」


「潤平?麗律?終わりにしないか?」


 この世に終焉が訪れたかのような様子で莉櫻は叫んだ。だが、俺も真鐘を「なら、やめようか」とはならなかった。


「自分はこの作品を完成させたいんだ」


「……縦に長い棒を掛け」


 最早、合作になりかけている。いや、それでもいいんだ。この作品への思いをここで形にして見せる。


「2人から物凄い熱気が伝わってくる。俺の声は訊いてくれないんだね」


 はい。その通りです。

 俺は口には出さないが心の中で莉櫻にツッコんだ。俺も馬鹿なことをやっているという自覚はある。海水浴に来て海で泳ぐのもそこそこに砂浜で人の身体を全て再現しようとしているのだ。しかも真鐘と2人で。美玖をほったらかして。


「……そこ違う。もっとこっち」


「すまん。ここか?」


「……それはここに置くものじゃない。取り外し可能になってしまうぞ。それ」


「こうか」


「……位置はそれであってる。大きさだぞ」


「分かってる」


「……ミケランジェロぐらいか?」


「覚えてないといってるだろ!」


 莉櫻は諦めモードに入っており、俺と真鐘がどれだけうるさく言い合ってもピタリと眼を閉じ、仙人のように静かだった。

 すると真鐘が俺の腕をつんつんとさしてきた。その顔はニヤついていて瞬間的に真鐘は莉櫻にどうにか反応をさせようと思っていることが伝わってきた。


「合わせてくれよ」


 真鐘の悪い声が、俺の鼓膜を震わせた。

 言うが早いか真鐘は途中まで完成していた莉櫻の砂シンボルを両手でクシャット握りつぶした。……うぉう。超痛そう。恐らく、遺体どころでは済まないだろうなと、同性の勘が告げる。


「……痛そう」


 おっと。声にまででてしまった。

 真鐘は今更ながらに自分の行った行為を振り返り、さっと顔を赤く染めた。


「……莉櫻。真鐘が」


 今までピタリと閉じて動かなかった莉櫻の目がぱっちりと開き、真鐘を探していた。

 あんな面倒なことをしなくても、「真鐘の関連ワード」であればすぐに反応するのだ。


「今、どんな感じ?」


「さっき、シンボル潰されたぞ。松平に」


「……さり気無く責任転嫁するなよ。真鐘だろ?」


 シンボルを潰されたと、訊いて急いで下を見る莉櫻。そして砂のはないが生来のものがしっかりと生きているのを確認するとほぅと一息溜息をついた。


「それで今は何を?」


「性別のクラスチェンジだ」


 そういって真鐘は綺麗なかたりをした砂を莉櫻の胸あたりの上に置く。

 む、胸だ。先程までどう頑張っても考えることを止めることが出来ず、理性をフル動員させていたあの胸がそこにはあった。


「貝殻とってくれ」


 俺はそこら辺に落ちていた大きな貝殻を渡した。その貝殻を真鐘はあろうことか胸の上とシンボル位置に置いた。


「……女になった気分はどうだ?」


「最悪だよ。特有のものであるはずのものがどちらもあるからね」


 など言っているとパシャッと音の良いシャッター音が聞こえた。その音が聞こえた方向へ振り向くと真鐘がカメラを持って佇んでいた。


「作品記録」


「……さいですか」


 記者会見であった。無数のシャッター音が響き、莉櫻が少し涙目になっているのもまた会見(謝罪)を連想させてくる。


「これぐらいで良いかな」


 かれこれ15分ほど、シャッターボタンを押していた真鐘は一言いうとどこかへ行ってしまった。


「……ご苦労様」


「本当はずっとトイレに行きたかったんだ」


 まぁずっとその状態なら行きたくもなる。


「でも、麗律が楽しそうな顔をしてたからつい…」


「……お前はすごいな」


 付き合ってまだ半年も行ってない奴に言われるとは思わなかった。最近5年目に入ってようやく進展した俺達に見せつけられているようだった。


「さっきから波の音が気かづいてきているのは気のせい?」


「……満潮だろ」


 莉櫻はごそごそと壊さないように這い出てきた。


「この姿で今までいたの?!」


 大層ショックを受けていた。

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