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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第四章『夏休み、海編』
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第45話 理性の化身

 やばい、やばい。非常にヤバイ。なんなら世界が消滅すると言われた時以上にヤバイ。


「潤平君?」


「……ん?何でもない」


 何がって?水着だよ!皆大好きな、み・ず・ぎ。俺にとって反則級の可愛さを持つ美玖が、必要最低限の服しか着ておらず、俺に笑いかけてくるのだ。

 手を取って繋いでいたい。もういっその事抱き合いたい。

 だが、美玖は普通に俺との会話を望んでいるはず。一人、俺だけが欲を解放してはいけない。


「水族館以来だね」


「……遊園地でも2人きりは会ったぞ?」


「あれは少ししかなかったからノーカウント」


「……今も同じじゃないのか?」


 美玖は俺の言葉を聞き、残念でしたとでもいうようにくすっと笑った。

 俺は今、美玖のどこを見ても恥ずかしいので海を見ている。顔も体を今は見てもだ異常な場所がない。


「麗律が本気だしたら長いからね。2時間くらい平気で砂で作ってるんじゃないかな」


「……そうなのか」


「うん。そうだよ。だから、水族館以来の2人きり」


 分かった。それでいいからちょっとタイムをくれ。理性というブレーキが踏みすぎて壊れそう。

 しかし残念ながら、美玖には伝わらなかったようでくすくすと嬉しそうに笑っているままだ。


「2時間何を話そうか」


「……何でも。好きな話題は?」


 その時、俺の左手に何か温かい物が乗った。しかし、直感的に美玖の手だと確信する。


「潤平君はお団子とおろしている方だったらどっちが好き?」


「……どちらも好き」


 女性の髪がどう変形しようとも、その人はその人であり永久に変わることは無い。

 美玖は美玖だからいいのだ。


「その割に……無かった」


「……え?何が?」


「いや、知らなくていいよ」


 美玖は俺に何と言って欲しかったのだろうか。声が小さいのではなく本当に言ってくれなかったので分からなかった。


「潤平君の頭ってどうなっているの?」


「……素直にディスってる?」


「あ、違うよ。普通にどういう風にすればそんなに頭の回転が速くなるのかなぁって思って」


「……俺はそんなこと、考えたこと無い」


「回転が速いところは否定しないんだね」


「……ここ最近はフル回転させていたからな」


 俺は一学期の波乱な出来事を思い出した。入学から始まり、楽な生活もそこそこに再起部へ強制入部させ垂れた挙句、委員会もやらされ、恋愛相談も一見解決することが出来た。

 美玖はそんな俺の思いを感じたのかお疲れ、の顔を向けてきた。


「生徒会も来てほしいな」


「……俺の身体が流石に持たない」


「会長から声がかかったんでしょ?」


「……断ったけどな」


「どうして?」


「……俺一人がこなせる量じゃないからな」


 美玖は理解はするが、納得はしていないというような複雑な表情を見せた。

 しかし、俺も即断したわけではない。美玖が居るという事で相当悩んだのだ。そこも知って欲しい。


「じゃあ、莉櫻君と麗律はどうなるかな?」


「……どう、とは?」


「ずっと続くかなってこと。もう、潤平君のいじわる」


「……あいつらは続くだろ」


「私達ぐらい?」


「……それは何ともいえないな」


 日々の生活の様々なしぐさで人の印象は簡単に変わってしまう。今、好きだったとしてもある些細な行動1つですぐに嫌いになってしまう。

 嫌いの症状としては様々であるが、俺は莉櫻達にこの病気にかかって欲しくなかった。


「付き合ってまだ2か月しかたっていないしね」


「……対して俺達は、4年か」


 4年。そう言われると非常に短く感じるが、その実、とても長かったように思う。一番初めの時をしっかりと覚えている俺は相当長く感じている。


「高校、一緒になるとは思わなかったな」


「……それを夏休みに言うか」


「潤平君が()()()()に頑張ってくれたから」


「……学力がその時だけ増大しただけだ」


 美玖が悪戯っぽく笑みを浮かべて俺の腕をつんつんしてくる。俺達が通っている高校はそれなりの学力が必要とされていた。俺は落ちこぼれだったが頑張ったのである。理由は明言しないがな。


「もう、意地はっちゃって」


「……」


「ところでさ。私のこと好き?」


「……はい?」


 急に何を言いだした?俺の想像ならあり得ないこともないが、現実だよな。あれー。おかしいな。


「4年経ったし、潤平君反応が薄いし」


「……反応が薄いのは前からだと思うが」


「私、嫌われちゃったのかなって思ってるの」


 下を向き、つんつんもやめて思いを吐き出し始めた美玖。その表情は暗く、思い詰めているようで、俺は悲しくなった。

 俺が好きだ、という事実は昔も今も変わらない。しかし、それが美玖にはうまく伝わっていないようだ。どうにかして伝えたい。そしてそんな悲しい顔では無く笑っていてほしい。水着を着て、開放感のある海へきているのだ。湿っぽいのは肌だけで充分だ。


「……そんなことないぞ?」


「え?」


「……美玖が思っている以上に俺は美玖の事、好きだぞ?」


「えっ?!潤平君?い、今すすすすす好きって?」


 俺が普段「好き」等という言葉を言わないからか俺が思った以上に狼狽えている。

 ……恥ずかしいな。「好き」っていうの。


「……まだダメか?」


 美玖はすくっと立ち上がった。そして俺に背を向けた。その顔には赤みがさしているように見えた。


「嘘!全部嘘!潤平君が真面目に返すからびっくりしちゃった」


 美玖は足早に駆け出していく。


「でも、私も好き!」


 追いかけて行って抱きしめたいと思った。

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