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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第三章『再起部の闇』
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第34話 再起部の依頼人

 ある日、2人目の相談者が来た。会長に報告した大原先生の過大評価により、再起部の知名は全校に知れ渡ったらしい。ここまではいいことだ。入部者がいないのは残念ではあるが。

 悪いことというのは、恋愛相談ではなくなってしまったことだ。……要するに"何でも相談”として全校に知れ渡った。再起部の名前の起源からすると間違ってはいないが、俺の負担が大きすぎる。3人の部活だが、1人は全く相談できないし、もう1人は仕事を頼まないと動かない。……な?結局俺しかいないだろ?

 実際に、2人目の相談内容は、部活内のもめ事をどうやって解決すればいいか、だった。


「先生との問題ならば部員でリストラでも起こし、生徒間なら先生に言えばいいのでは?」


 と、適当に返したら、


「ありがとうございます!!」


 と、全力で走り去っていった。バカだったらしい。

 ともあれ、こんな10分もかからずに解決できる相談など自力で考えているのをやめているだけである。これは相談ではなく、もはや愚痴を聞かされているだけ。


「ブチョーしんどそうだね」


「……誰のせいだと思っているんだ」


「彩花のせいですね。部長はお疲れですよ」


 流石だね。新山さん。けどその中に自分も入っていることを自覚して欲しい。


「なら、肩揉んであげるよ。おじいちゃんにいつもやってあげてるから上手にできるよ」


 俺が答える前に、吉田さんは俺の後ろへと回り込み俺の肩に手を置いた。

 くすぐったい感触が俺の感覚器官から受け取られる。俺は長机のパイプ椅子に座っていたので肩が出ていたが部長椅子であれば、肩以上に背もたれがあった。どちらに座っていたら得だったかは男ならわかるだろう。


「うわっ!すっごい凝ってるよ。おじいちゃんよりすごい」


 事あるごとにおじいちゃんと比べられてしまう。しかも俺の方がひどいってどういう事?!

 新山さんは我関せずと手元の本に目を落とした。すっと空気になりやがったぞ。あの人。


「……あぁ。おぉ。これはなかなか気持ちいいな」


「声が完全におじいちゃん!」


 とは言ってもしょうがないではないか。気持ちいいんだし、肩凝っているんだし。


「……あー極楽」


「ブチョー大丈夫!?」


 俺がなおもおじいちゃんになっていると吉田さんは少し強めに押してきた。……しかしまた、これがいい感じの強さで。


「……上手いな。肩もみ」


「でしょっ!私、肩揉みグランプリなら優勝できるかも」


「……いや、そんなグランプリは無い」


「むふ~。それは残念」


 俺はツッコミを入れながら肩もみをされること、しばらく…


「うん。これで大丈夫になったはず。どう?」


 ポンポンと俺の肩を軽く叩いてきた。俺は夢見心地だったのであまりよく覚えていないが肩が軽くなったのは確かだった。


「……んんっ!あぁ、軽くなった。ありがとな」


 精一杯の伸びをしながら答える。重みは空気中へ溶けたかのように肩には首の重さと重力しか感じられない。


「これぐらいで疲れが取れるならいつでもやったげる」


 ……やられてから思ったが、これ部活の部員とやることじゃないよな……。どっちかというと美玖とかにやってもらう……。


「……まぁ。当分はだ、大丈夫だから」


 急になんか変な意識がわいてきた。

 吉田さんはふわっと大きな欠伸を一つした後新山さんの隣に座った。

 俺もパイプ椅子から立ち上がり、部長椅子に座り直す。


「何ですか?」


「シズシズの様子を観測中」


「鑑賞ではないのですか?」


「うん。観測中」


 新山さんはそれ以上追及することなく、無言がしばらく続いた。

 やがてぱたりと本を閉じた新山さんはおもむろに立ち上がった。


「部長。あなたはどうしてそんなに仕事ができるのでしょうか」


「……ん?は?」


 何せ急なもんで。唐突過ぎて一瞬何の事かわからなかった。


「私はこの再起部で部長が居なくなってからも続けられるように今まで頑張ってきました」


 部長、というのは恐らく俺の前に居た人の事だ。この人は会長と先生の話の中にも出てきた人物であり俺が部長になる原因を頼んでもいないのに作ってくれた人だ。


「……部長、ね」


 俺にはどんな奴かわからない。が、この2人を置いて辞めて行った人情の無いやつだと思ってる。


「けれど、再起部に残ったのは私と彩花だけでした」


 新山さんの人付き合いが悪そうなあの態度ではこうなることも想像できたはずだが……。俺は新山さんの突然の告白にいろいろ言いたくもあったが黙っておく。


「シズシズ…」


 吉田さんは名前をそっと呟く。


「対して部長は2週間ぽっちで廃部寸前だったこの再起部を、私達を救ってくれました」


「……」


 俺は無言を貫いた。というより何も返すことが出来なかった。廃部寸前?元からそんな話は無かった。2週間ぽっち?やることが無くて嫌々やってただけだし、美玖の協力もあったから俺の実力とは言えない。言うべきことはあるのに喉がつっかえて音が出るのを嫌がっていた。


「私はシズシズに救われた。だからそんな顔しないでよ」


 新山さんは恐らく自分のふがいなさから後悔の顔をしていた。俺はこの再起部に何とも感情を持っていない。だが、彼女は違う。きっとこの中で最も思いがあり、想いがあるのだろう。

 吉田さんが新山さんの元へと行き、軽く背中をさすっていた。その眼にはきらりと光るものがあった。


「……俺に何を求める」


 泣かせてしまっては後味が悪いから。と言い訳をしておこう。


「自分の力を引き出す方法です」


「……これは仕事か?」


「はい。仕事です」


「……なら、2人目の()()()依頼人だな」


 新山さんがふっと軽く笑ったような気がした。

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