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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第二章『ダブルカップリング』
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第23話 ダブルカップリング4

 お互いに一口ずつ食べた後、何とも言えない雰囲気になったのだがまだ別れてから時間が経っていない。俺はゴミをそこら辺にあったゴミ箱に突っ込みながら、これからどうしようかと考えていた。


「どうしよっか。まだ時間ありそうだけど」


 俺は左手にある彼女のぬくもりを感じながら、


「……一周回るか?」


「2人、大丈夫かな」


 少し気がかり、見たいな感じだ。とはいえそこは俺も同意見。しかし何度も言うようだがこればっかりは当人たちの問題だ。


「……大丈夫だろ」


「潤平君が任せろって言ったからね」


 美玖は歩き出した。俺は繋がっているため引っ張られる感じになったが急いで隣に行く。並走ならぬ並歩。


「……え?言ったっけ?」


「えー?言ったよ?もしかして無意識?」


 悪戯っぽい笑みを浮かべる美玖。……言ったか?この顔に嘘を言っている様子は無い。……無意識か。


「……うん」


「そっかー。せっかくちょっと嬉しかったのに」


 頬を膨らまして抗議をしてくるが残念かな俺にとってはノーダメ……何か申し訳なくなってきた。


「……嬉しかったって?」


 そこだけが引っ掛かる。自身の経験に基づいて少し考えてみましたが全く心当たりがない。


「んー」


 持ったぶるような声を出す。ジェットコースターの時に感じたものと何か関係があるのだろうか。と一瞬浮かんだが消去しておく。


「……な、何?」


「潤平君はさ」


 少し言い淀む美玖。先を訊かない方がいいと理性では言っているが感情で気になってしょうがないという身体崩壊レベルの感じが俺を襲ってくる。


「……うん?」


「陰キャラになったじゃない?」


「……ま、まぁな」


「その時の私は今までの私とは違う。……今の感じになりかけてた」


 俺と美玖は同時期に性格がひっくり返った。俺は明るく社交的だったが、暗く独りを好むようになった。

 逆に美玖は何のきっかけか独りを好んでいたはずがいつの間にか社交的に誰にでも話せる人になっていた。


「私は潤平君に近付きたかった。近くに行きたかった。近くに行ってたくさんお話ししたかった。その為に……そのために頑張ったのに」


 美玖の眼尻には涙がいっぱいにたまっていた。俺はここでようやく美玖が“どうして”性格を変えようと頑張ったのかを知った。


「……美玖」


 だが、知ったからこそ俺は名前を呼ぶことしかできない。俺は俺の理由で性格を変えた。……最低だ。一番大切だと思っていた美玖の想いにすら気づかないなんて。


「けど……今日、潤平君が昔の口癖を無意識に使ったり、再起部の部長になったりしても昔に戻っているとは思わなかった」


 繋いだ手がぎゅっと握られる。その力は暖かくて彼女の心を現しているかのよう。


「……」


「前よりかっこよくなったよ」


 目頭が熱い。いつの間にか下を向いていた俺は地面に液体が落ちるのを見て初めて泣いているのだと気付いた。


「……ありがとう。ありがとう」


 本当はごめんなさいというべき場面なのかもしれない。本当は俺の方が美玖を慰めるべき場面なのかもしれない。だけど、俺が言いたかったのは感謝の言葉だった。


「ん~ん。どういたしまして!」


 俺に向けて満面の笑みを見せてくれた美玖の顔には一筋の涙の痕があった。


「あと、私もありがとう」


「……え?なんで?」


 俺は勿論困惑する。ここまでの話で泣かせたのは俺、気付かなかったのは俺な訳で、罵声を浴びせられることはあったとしても感謝される筋合いはない。


「……俺は全然気付かなかったんだぞ?」


「そうだよ。そこは反省して」


 急に怒られる。だが、正論であることと、何より俺自身が言いだしたことなので何も言えない。


「ふふっ。冗談ではないけど、それはいいの」


 急に柔らかくなる空気。


「……なら、どうして?」


「それは……何か秘密を教えてくれたら教えてあげるよ」


 名案!とばかりに目を開き、俺に交渉してくる。しかし俺は再起部部長であり、チャラとはいえあの会長と殺り合ったこともある。俺が早々負けるわけがな……


「どうする?……あっ!」


 俺があまり乗る気ではないような顔をしていたためか腕を振って反応を促していた美玖が驚きの声を出したのは自分のしていた行為に気付いたからだろう。

 俺の左手を両手でつかみ腕をブンブン振っているのだ。それは振っているというよりも縋り付いているという表現の方が正しいかもしれない。


「ご、ごめんなさい……うぅ」


 こんな姿を見ていると何かしてあげたくなってしまうではないか。


「……謝る必要は無いだろ。気にするな」


 そう言いながら俺は右手をポンと頭の上に置く。自然に身体が動いたのには驚いたが、手を置いてからが流石に何もできなかった。

 美玖は下を向いてプルプルと身体を小刻みに揺らしている。怒っているのか…恥ずかしがっているのか。


「うん。ありがとう」


「……おう、こちらこそありがとうな」


 恥ずかしげに笑う美玖につられて俺も笑う。


「……そろそろ戻るか」


「そうだね」


 何故、美玖が俺に礼を言ったのかはわからなかったが、こうして2人で歩いていると感じるだけど些細なもんだと思った。

 時間を見て行動したわけでも連絡を取り合っていたわけでもないが俺達が解れた場所についたのと同時間に真鐘と莉櫻もアトラクションから帰ってきた。


「……待たせたか?」


「いや、全然。それよりもうしてないんだね」


「莉櫻はもう喋らないで」


 真鐘の顔が今までで一番真っ赤に染まっていた。

 きっと何かがあったに違いない。

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