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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第二章『ダブルカップリング』
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第22話 ダブルカップリング3

「次は何しようか……ってずっと手繋いだままか」


「俺も思った。潤平は本当に付き合ってたんだな」


 ジェットコースターを降りた後も俺と美玖は手を離すことなく歩いていた。


「……離すタイミングがない」


 無理に離せば変な誤解が生まれる。「嫌なの?」とか。……考えすぎか。いや、それ以前に離す必要は無い。恋人なのだから。……この台本(セリフ)言ってみたかった。


「そんな見ないでよ。……は、恥ずかしい」


 前方の2人は美玖の可愛さにやられたのか回れ右をして俺達に背中を向けた。俺?俺はもうメロメロ。


「次はアレにしよう」


「またハードなアトラクションかいっ!」


「何?嫌なの?」


 前方で何やら物騒な話をしているような気がするがまぁいい。寛容な心で許してやろうではないか。


「決まった。美玖、松平。次はあそこ」


 真鐘が指を指したのはこの遊園地で一番高い建物だ。

 パンフレットも何も持っていない俺と美玖とたぶん莉櫻は大人しく真鐘についていくしかない。


「エレベーターが壊れた感じのアトラクション」


 莉櫻が分かり易く俺を絶望に突き落とす。先程の寛容な心などどこへやら、


「……変えないか?」


「交渉は自由だけど無理だと思う」


「……だよな」


「大人しく乗るしかなさそう。私も本音は嫌」


 美玖が嫌なものに乗せてたまるか。俺は美玖のその一言で先を歩く真鐘に声を掛けた。


「……真鐘、変更を希望する」


「松平か?美玖か?返答次第で答えは変わるぞ」


 それは俺の方を応えたらダメな奴だろうなぁ。ちらっと美玖を見る。その顔には不安が張り付いていた。


「……俺だ。俺の意思」


 真鐘は美玖をちらりと見てから俺の方を向いた。


「わかった。けどそこら辺で待っててくれ。自分は鶴田莉櫻と乗ってくるから」


 何故にフルネーム。まぁ俺の意思は伝わったからいいか。何せ2人の問題(?)だからな。俺達はいない方がいいだろう。


「行くぞ……り、り、莉櫻」


 声小っさ!!あれじゃ天然な莉櫻は気付いてくれな……


「俺は行くのか……まぁ良いけど。麗律、走れ!!」


 気付いた?その上呼び捨てとは……。進歩したなオイ。

 2人は走って正式名称の知らないアトラクションへ向かっていった。取り残された俺達は「そこら辺で待ってて」と言われたが守る気は毛頭ない。彼女も同じ考えのようで握っている手から悪戯をするようなウキウキ感が伝わってくる。


「……少しぶらぶらするか」


「うん」


 遠目から見ると物凄い量の人が行列を作っている。これは多少遠くまで行っても大丈夫そうだ。この時間中に勝手に進展してくれていると良いんだけどな。

 繋いだ手は離すことなく本当にアトラクションに乗ることもなくぶらぶらと歩いていく。

 このようなことをしているカップルは俺達以外にも大勢いるためあまり目立った様子は無い。


「……何か食うか?」


「麗律がお昼ご飯は皆でって言ってたから…」


 重い物は避けたほうがよさそうである。


「……ならあれはどうだ?」


 俺が開いている右手で指示したのがチェロスを売っている売店だった。


「あれなら大丈夫そうだね」


 ふふっ。っと小さく微笑む彼女。どうやら食べたくないという事ではなかったようだ。……一安心。


「……どうする?」


 俺が訊いたのはチェロスの種類の事だ。シナモンかショコラ。俺はどちらでもいいがどうせなら別種類のものを買って“あ~ん”イベントが始動して欲しいという欲望があった。……ちょっとだけ。ミジンコぐらい。


「ん~。潤平君と違う方がいいな」


 ……ん?今何て?俺と同じものは嫌という事か?そうか。先程の俺のよくも別種になることが必須ではあるのだが、こんなぐっさり心に刺さる感情があるか?!言外に「お前と一緒のものは食べたくない」と言われているようで辛い。

 俺のこの感情を吐露したとすれば面倒だな、と言われそう。


「……シナモン、ショコラ1つずつ」


 コミュ障であると自負している俺だがこういう事務的な問答は人並みには出来る。

 金を2本分払い、チェロスを受け取る。その際に手を繋いでいるのを見て機転を利かせたらしい店員が俺にシナモンを、美玖にショコラも持たせた。


「決まったね」


「……そうだな」


 決めてくれたのはありがたかったかもしれない。


「……食べ歩くか?座るか?」


 直ぐそこに空いていたベンチがあったので訊いてみる。だが美玖は首を横に振った。


「嫌。食べ歩きしよ」


 何が嫌なのだろうと思ったが訊かないでおく。今のこの良いムードを崩したくはない。


「……これ美味いな」


「うん。あ、でも私はショコラだからわかんないや」


「……食べるか?」


 俺は美玖に自分のチェロスを差し出……おい、今俺すごーい事口走らなかったか?とはいえもう遅い。

 美玖が気付かなければそのまま黙って押し通せば……


「ありがと……って、こ、こ、こ、こ、これって」


 あー。気付いてしまった。しかし人間というのは不思議な生き物で自分よりもテンパっている人を見ると冷静になることが出来る。


「あわわわ…」


 美玖の慌てようで俺は冷静さを取り戻す。カップルでそんなもの当たり前にやれよとか言った奴!こっちはつい最近まで手も繋いだこと無かったんだぞ!

 ハードルが高すぎる。


「……あー、どうする?」


 声が上ずって全然普通に聞こえない。彼女は水族館の時よりも赤い顔になっている。意識して行うのと無意識で行うのはこんなにも違う事なのだろうか。


「じゅ、潤平君はこっち食べる?」


 こっち、というのはショコラチェロスのことだ。どうやら今の間に自分で折り合いをつけ、俺と同じならという結論になったのだろう。俺が望む形ではなくなっているがイベント自体は進行中……ならばっ!


「……じゃ、貰う」


 平然。普通に。考えるな。感じるな。一口をかじる。……美玖の手にあったチェロスを。


「はうっ!潤平君……今日テンション高くない?」


 雰囲気のせいです。というよりあなたもですよ。美玖さん。

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