第18話 恋愛相談(パート4)
俺は鶴田氏を待っていた。吉田さんが呼び出したはずなのでそろそろくる。
「失礼します」
丁寧なお辞儀とともに入室したのは恐らく鶴田氏。ダークグリーンの髪とそれによく似合っている紫紺の瞳。新山さんから貰った資料と外見の特徴は同じ。黒縁の眼鏡も同一だ。
俺は無言で着席を手で示す。鶴田氏はさして不快には思っていないようで深く座った。
「それで再起部が俺に何の用でしょう」
のほほん、という言葉がしっくりくるだろう物言いだった。彼本来の特性なのかもしれない。
「……では率直に。真鐘さんのことをどう思われていますか?良ければ教えてください」
「麗律の事はいい人だと思っているよ」
その“いい人”を詳しく訊きたいのだが、しぶとそう。俺が言葉を探していると彼はその続きを話した。
「ゲームの先輩でいろいろ教えてくれるし、いつも話を返してくれる」
お、脈アリだ。確信した。この時点で彼は帰ってくれても構わなかったがなぜか追い出す気にはならなかった。
「……他にありますか?」
「前に麗律の方から話を振ってくれたことがあったけどその時は嬉しかったよ」
「……ありがとうございます」
「どうしてそんなこと訊くのかな」
怪しんでいる訳ではなく不思議に思っている感じだ。どうしようか。そのまま教えてしまうのはよろしくないがヒントを与えなければ2人の進展が望めないかもしれない。
「……知りたいですか?」
カマかけ。彼の意識の心意を見極める。
「知りたくないって言ったら嘘になるけど…」
「……どうしますか?」
「し、知りたいです」
「……しかし相手の事もあります。再起部に入部すれば話は別ですが」
対等な条件へと持っていく。入部してくれれば部員問題も何とかなるだろう。
「そうですか。なら…「こんにちわー!」
絶妙なタイミングで吉田さんが入ってきた。わざとかな?
「あれ?ブチョーが既に来てる?!」
「……空気読め」
嫌いな言葉ではあるが他人に使う分には何も感じない。……吉田さんなら尚更だ。しかし。そこで空気を読めるはずもなく、
「あれ?相談中でした?」
やっちゃった?私…みたいな顔をされても困るんだが……。俺が放っていると彼は吉田さんに声を掛けた。
「大丈夫。再起部なんでしょ?」
別に訊かれて困ることは無い、と思っているらしい。そこまで俺が気を配る必要は無いので俺の隣の椅子をすっと引いてやる。
「ありがと」
礼を言われると何かむず痒い。鶴田氏の相談(?)は3人で行うことになった。
「真鐘さんの件?」
吉田さんがこそっと耳打ちしてくる。急な事だったので不覚にもドキッとしてしまった。
「……あぁ」
少し動揺した声が出たかもしれない。
「私、入って大丈夫なのかな」
「……邪魔になれば追い出す」
「えぇー。まぁ分かった」
俺達が小声で言い合っていると目の前の鶴田氏が笑った。
「あ、ごめん。2人は仲がいいなぁって」
「そ、そんなわけないよ!」
吉田さんは真に受けたようだが俺には彼自身がある人とこんな風になりたいなぁと言っているようにしか聞こえなかった。……俺は何とも思わなかったぞ。
「……憧れますか?」
言ってから誤解を生む発言に気が付いたがもう遅い。
「はい。正直」
「ちょっとブチョー?!な、何言ってるの?」
幸いにも彼は俺の思惑に気付いたらしい。誤解されなくてよかった。
「……では鶴田さん」
「莉櫻でいいですよ。部長さん」
「……こちらも潤平で結構です。……彼女は頑張っている。そして再起部はその行為を応援している。そのことを知って頂きたい」
「わかった」
「……ただし、莉櫻からの行動は今まで通りで構わない。むしろ変に動くな。彼女が動揺する」
莉櫻とすんなり出てきた事は俺自身驚いた。
「1ついい?何でおれはここに呼ばれたのかな?」
もっともである。相談をしに来たのではなく呼び出してここに来てもらっている。
「……それは」
真鐘さんのために、と答えればいいのだが何故か答えることが出来ずに言い淀んだ。
「そんなの友達になりたいからだよ」
今まで誤解しまくってあわあわしていた吉田さんが一言、そう言った。
「そうなのか?」
俺に問う。、この雰囲気で違いますとか絶対に言えない。俺は空気を読むことにした。
「……ま、まぁ」
真鐘さんのためや再起部のため、いろいろな言い訳、逃げ道はあったはずなのに俺は肯定の言葉を返していた。
空気とは恐ろしい。だから嫌い。
「なら初めから言えばよかったのに」
莉櫻は俺に向けて手を差し出してきた。握手だよな。ここで殺されるかもしれないと思うのがコミュ障だ。
「……よ、よろしく」
俺はびくつきながら莉櫻の手を握り返した。莉櫻の手は彼の内面を現したかのようにほのかに暖かく包み込まれる感触だった。
これは惚れるのも納得できる気がする。
暫く握っていた手を離すと隣で吉田さんが、
「名前呼びの時点で友達だよ」
と、ぶつぶつ言っていた。しょうがない。俺はコミュ障で恐らく彼もコミュ障だから。
「……これで用はすべて終わりだ」
「なら退室しようかな」
莉櫻が席を立った。しかし、莉櫻の服の一部が引っ掛かったようでそのまま椅子に戻される。それは“運命”だったかもしれない。
「こんにちは」「お邪魔します」
再起部に入ってきたのは話題の2人。その2人とは真鐘麗律とーー端山美玖だった。ーー
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