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コミュ障になった俺とコミュ障だった彼女の不可解な生活  作者: 戦告
第九章『予想できない道』
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第105話 演説

「潤平くん?私もいるよ」

「……マジか」

「驚きすぎだろ。自分が一人で男子のところに来るわけがないだろ?大体は美玖と一緒さ」


 ねー、と二人で顔を見合わせて笑う。その顔は俺達の会話をずっと聞いていたせいか、やけに赤く染まっていた。

 俺達男子組も顔を見合わせる。莉櫻も俺も自分達の彼女が口には出さなくとも喜んでいることが分かっているので、言葉にならない幸せな感情が湧き出てくる。


「んで?ここで莉櫻と何を話してたんだ?」

「明日の選挙のことじゃないの?」


 美玖が少し食い気味に麗律の言葉に連ねた。俺と莉櫻が「大人のキス」の話をしていた時から実際はここにいたようなので、どうにかして話を進行させ、深く訊かれないようにしたいらしい。

 けれど、そんな見え見えの作戦ともいえない作戦に莉櫻が引っかかるわけもなくて。


「ま、選挙の話だよ。ところで、キスしたって本当かい?」

「おい莉櫻……」


 美玖がこちらを睨んでくる。ひどい。これは完全に莉櫻に責任があると思うんだが。

 莉櫻はお構いなしに美玖へと質問を投げかける。


「しかも、大人の、らしいけど」

「莉櫻君……鬼畜」


 美玖の強烈なカウンターにより、莉櫻は瀕死のダメージを負った。俺に聞いても答えはしないが、美玖に聞くのは最悪手というやつだ。


 麗律は莉櫻に無言で近づいた。

 ここで、慰めの言葉の一つや二つ、かけてやるのかな、と思ったのは俺だけではないはず。しかし、残念ながらその仮説は実証されず、結果は、


「答えづらいことを質問するんじゃない」


 ドがつくほどの正論で論破され足をげしげし蹴っていた。

 うん、俺の代わりに莉櫻に手を下してくれたのはありがたいが、自分の彼氏だということを忘れてないですかね……。遠慮なく思い切りに見えるほど蹴ってますが。


 まぁ、莉櫻が嬉しそうなので放っておくことにしよう。


「話を戻すぞ。俺が明日する演説の内容を考えようかと思っていたことろだ。会長からの推薦、というのはもう切符みたいなもので、演説しなくとも大体は通るらしいが」

「それでも人前で話すなら最低限は考えようよ」

「私も演説しているところ見たいし」

「おっ?美玖が自分達の前でストレートに言うとは」

「もうっ!からかわないでよ!」


 どうしてだろう。男子二人だと下ネタとかどうでもいい話とかになってしまうのに、女子がいるだけで見た目と話の内容に花が咲き、楽しいと思えるのは。


 麗律が美玖をからかう。冗談の延長線だと分かっているためどちらもにこやかに笑っている。


「でも、見たいのは本当だから」

「よし、全力を尽くして内容を考えよう」

「潤平……単純だね」


 複雑よりいいだろ!!

 俺と美玖は自分でいったことを相手が聞いていると思うと恥ずかしくてかっと熱くなってしまっている。逆に莉櫻達は俺達がこうなっているのを見てどうしようかと思いながらもからかってくる。

 時々目を合わせて笑っているのはお見通しだけどなっ!


「んんっ!莉櫻の指摘は置いておいて」

「そうそう。ってちゃんと拾って!」

「二人ともバカばっかりやってないで本題いけよ」

「麗律……言い方が男の子だよ……」


 どうしても久しぶり揃ったせいか雑談をもう少し興じていたいと思ってしまう。そんな俺に感化されてなのか、はたまた俺と同じことを思っているのか、他のみんなも強引に話を主軸に戻そうとはしていなかった。


 麗律がいったけど、あれは「押すなよ押すなよ、絶対押すなよ」というやつである。


「じゃあ、俺達のやることだけもう決めちゃおうか」


 莉櫻が麗律に言われたからなのかやる気を出した。

 やる気を出す必要は全くない、とは言えないが少なくとも今じゃないような気がする。


「私達が手伝えることってあるかな?」


 美玖の質問に莉櫻は間髪入れずに答える。もうここからは俺ではなく莉櫻が話の中心に立ったようだ。俺と話していた時にはわかっている様子ではなかったが果たして大丈夫なのだろうか。


「最初に結論から言っちゃうと、美玖ちゃんには潤平のそばについてあげて、視界得ないね」

「そばでどうすればいいの?」

「何もしないんだよ。美玖。ただ大切な人がそこにいるだけで頑張ろうって思えるし、気持ちが強くなれる」


 麗律が分かったような言い方をしたので帰ってからでもメールで詳しく訊いてやろ。


「そうなの潤平くん」

「……まぁそうだな」

「照れちゃって」


 莉櫻……マジで刺すぞ。

 美玖は俺から肯定の言葉を受け取ってようやく納得したのか「分かった」と了解し、俺の隣によって来た。……今じゃない、けど嬉しい。


「麗律は俺と一緒に風紀委員として行動して不正がないか監視する」

「それは風紀委員で言われた任務とそう変わらないぞ?」

「違うのは見るものだ。風紀委員は聞く生徒を監視するけど、俺達は“大原先生”“沖田優”を特に監視するんだ」


 莉櫻と麗律が熱心に話し合っている時、くいくいと腕を引かれた。


「ん?どした?」

「……」


 何か言っているが、声が小さすぎてなんと言っているのかわからない。

 俺が必至に聞き取ろうと耳を傾けると、美玖はぐいっと俺の体を自分の方に引き寄せ、耳元で囁いてきた。


「私応援してるからね」


 どうしよう。にっと笑った笑顔が眩しすぎて、それが俺の彼女だということを実感して、俺は莉櫻と麗律に見えないようにして手を繋いだ。

今日はもう一話分あげます

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