伝説と言われる由縁
私は真っ暗な地割れの中に吸い込まれていく。
14歳なのに死を覚悟したのはこれで2回目、
「さようなら」
これでこの国も救われるわ、私はこの国にはいらない、ごめんなさい王様、ライム、山の仲間にも。
「エリル―――!死ぬな――――エリル―――!」
飛鳥さんの声がどんどん遠ざかっていく、地割れを覗き込む飛鳥さんに、その中から吹く強風が飛鳥さんの体を吹き飛ばす、地面に叩きつけられた瞬間「うっ!」声を出し飛鳥さんはライムに戻った。
その風と共に地割の底の方で私は何か温かく柔らかい感触を感じた、とうとう召されたのだ……心地のいい温かさ、これが天国なんだと。
ライムがもう一度割れた地面を覗き込み叫ぶ。
「エリル―――!」
「えっ!」聞こえる、ライムの声がはっきりと、なま温かい風と何か痛い堅い感触が私を支える。
その時だった、私を襲う浮遊感と狼の遠吠えのような重低音のきいた叫び声、私は耳を塞いだ。
グオォォォォォォォォォォ―――――!バサッバサッバサッ!
翼を持った真っ白な巨体が地割れの底から飛び出してきた。
それを見たライムは目を丸くして、こう言った。
「まだ生きていた、伝説の…………………………………ホワイトドラゴン」
バサッバサッバサッ!ドスン!
翼を大きく羽ばたかせ、飛び出したと思ったドラゴンだが、低空飛行、高くは飛べず、すぐに地に落ちた。
偶然私を助けたのかホワイトドラゴン……
ホワイトドラゴンは力無く地面に横たわり、甘噛みしていた私を地上へと落とす。
最後の力を振り絞ったのか、かなり弱っている様子……
ライムは知っているようで、ドラゴンに近づいて顔に寄り添い話しかけた。
「たいへんだったな、おとなしい伝説のホワイトドラゴンが生きているとは、ずっと人目につかないこの山に居たんだな、初めてお目にかかるよ、でも……」
途中で話を止めたライムをドラゴンの横に倒れている私は、顔を上げて話の続きを問いかける。
「でも?」
ライムは白い霧と共に飛鳥さんに擬態して首を横に振った
「んーん、もともとホワイトドラゴンは、エルフの使い魔だったんだ」
ホワイトドラゴンはエルフの乱獲に抗ったが、多勢に無勢、一匹で数万の軍勢には抵抗出来なかった、そして心優しいエルフが死ぬ前に使い魔としてのホワイトドラゴンを解放し空へと飛び立たせた、そしてこいつは安全なここへ身を隠したってわけだ
「きっとエリルが叫んだエルフの声が、数百年と言う時を超えて、エルフを助けるというホワイトドラゴンの本能を呼び覚ましたんだよ」
「私が目覚めさせた…ってこと?」
「エルフには従順で抵抗しないよ、でも、もうこのドラゴンも動けないな……」
優しそうなホワイトドラゴンは頭から尻尾まで動かせず、私を見つめ、瞬きと羽根だけをほんの少し動かしていた……私はドラゴンの前に立ち上がり、頭を撫でた。
「あなたは命の恩人ね、お腹も減ってるでしょ何か食べさせなきゃね」
「もうだめだよ、エルフが生きていて、こいつは、ほっとしてるんだ、これで旅立てると分かってるんだよ」
「でも魔物は寿命が無いって……」
「ドラゴンは魔物だけど、こいつは何年もエルフに仕えてなかったし、もしこの世に現れても殺されるだけだ、人間と同じ絶滅種だと思われている……僕達エルフと同じ最後の一匹だね」
人類は絶滅したが、ホワイトドラゴンを死滅させるのは絶対にダメ、私は迷わずに飛鳥さんにこう言った。
「じゃあライム!せめて命のある間に捕食して!命が絶える前ならドラゴンの能力は継げるんでしょ!」
「僕がホワイトドラゴンになるのか?」
「そう、あなたは使い魔なのよ、スライムであってもドラゴンであってもね、ホワイトドラゴンとエルフの意志を継ぐのよ、そして私と共に生き抜くの!」
ライムはドロドロと液体となり、ドラゴンにまとわりつき、捕食し始めた。
2度目の死の覚悟……だけどホワイトドラゴンに拾われたこの命、今まで私は何も達成してこなかった、しようとしたが成し遂げたことは何もなかった……さっきも逃げようとした、みんなを助けられなかった、だから王様を民を助ける、この飛鳥さん、スライム、ホワイトドラゴン共に!
いつしかドラゴンが眠っている事が伝説となり、それも忘れ去られていき山の名前になった、しかし本当の山の名の由来は残雪ではなくこのホワイトドラゴンだった。
また、遠くで声がする……
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