仲間
よろしくお願いします!
私が王様のあとを継ぐなんてやっぱりムリなことね。
私はピッケルとザックを持って、城を出る、この国の為にも。
『エルフの私がいては国は滅びます、国を出ます』
手紙は机の上に残した、ホワイトドラゴンへと向かう、そうまだ登頂を果たしていない、登りたかったエベレストへと。
やはり昔の山とは違う。
コツ、コツ、コツ……こんな鷲刺繍模様の正装でも軽く登れていくからおかしくなっちゃうわ、口角が上がり少し笑みがこぼれる。
遠くから声がする……
「おーい」
この世に目覚めた時と同じ、私を呼ぶ声……
遭難した、あの日の事がフラッシュバックする。
「はっ!」と我に返る。
「おーいどこに行くんだよ」
足を止め振り返ると飛鳥さんがこちらに向かってホワイトドラゴンを登って来る姿が見える。
まるでラストアタックのあの日を思い出す。
あの日と同じ……また同じ夢を見ているようね。
私は山へと向きを変え再び登り始める、飛鳥さんは追いついてきた。
私はホワイトドラゴン山頂への足を早め、冷たく飛鳥さんに話した。
「ライム飛鳥さんの姿は反則よ」
「はぁ、はぁ、はぁ、ゴメンよ、エリル」
「私、城を出るわ」
「エリル……待ってくれよ、民を受け入れさせるから、なーエリル」
「受け入れさせるんじゃダメなの、受け入れてもらえなきゃダメなのよ、民にとって私は悪魔でしかないの、国をを滅ぼすのよ」
その言葉に私はライムを叱り飛ばした。
「ごめん、エリル……王様の思いはいずれ民も分かってくれる」
「どうして、どうして私をエルフなんかにしたのよ!」
「ーーーーーー」
何も答えられなかった飛鳥さんは、その場に留まった、その間の沈黙が私を少し冷静にしてくれた。
飛鳥さんはしばらくしてから、山頂まで追いついてきた。
山頂からの眺めはやっぱり素晴らしかった、私は初登頂を喜ぶ事もなく座り、ここからの眺めはずっと望んでいた事なのに、私の世界では、私にとっては神聖な場所のはずなのに。
飛鳥さんは神妙な面持ちで話し始めた。
「ちゃんと話すよ、僕もエルフの血を引くスライムなんだ、数百年前に死を目前にしたエルフを補食したスライムなんだ」
昔を懐かしんでいるのか、感慨深いよう、ライムの目が潤んでいる。
「民を回復してエルフにする事もできず、争いをするような戦士たちをエルフにしても汚れている、そんなときエリルを見つけたんだ……僕が捕食したり、血を与えた者はすべてエルフになる事に気づいたんだ……」
ライムの話によると、ライムは乱獲にあっているエルフを助けていた、だが抵抗しきれず逃げまどうエルフが、血を求めた者達に捕まり殺されていく、永遠の命なんか得られることもないのに。
そして最後に会った逃げ残りのエルフに、「補食して私の血を受け継いで欲しい」と言われ、本意ではなかったが補食した、そしてライムはエルフの血を受け継ぎ数百年間エルフの血を守ってきた。
飛鳥さんは白い霧と共に金髪の飛鳥のエルフ姿に擬態した、そう飛鳥さんの姿そのものでエルフになったのだ、私は飛鳥さんに向かって叫んでしまう。
「エルフ!どうして!」
一呼吸置いて、もう一度冷静に飛鳥さんへ質問した。
「どうして王様にエルフだと、言うことを話してないの?」
飛鳥さんは私の隣に座り膝を抱え遠くを眺め話しだす。
「僕は王様が民を見捨てず大切にする姿をずっと見てきた、僕も王様を慕って、ついて来た一匹だったんだ、エルフと分かればこの国を滅ぼしてしまう」
「もう一度聞くわ、じゃあなぜ私をエルフにしたのよ」
「君があまりにも綺麗だったから、会いたかったんだ、それまではエルフの生き残りは僕だけだったんだよ」
「そんな身勝手な理由で私をこの世界に呼び起こさないでよ!」
飛鳥さんは寂しそうな顔をしている、その姿でこんな話をするのはずるいと思った、そうずるいと。
飛鳥さんは立ち上がり私の前に立った。
「王様が後継者として国民のためにエリルを選んだ、それは僕も望んでいた、まー使い魔になるとは思ってもいなかったがね、早かれ遅かれ後継者になるエリルの事を民に伝えなければいけないそう思ったんだ、必ず王様の思いは民に伝わる」
私が後継者だなんて、そんな事納得いかない、信じられない。
「そんなのムリよ……」
私は山に向かって叫んだ。
「この世界の私は、悪魔なのよーーーーー!邪悪な人間なのーーーー!」
叫んだ直後
ゴォーーーーーーー!!!!!
地響きが聞こえ、
ガタガタ!ガタガタガタガタ!!
地震のように山が揺れ動いた。
目の前で地割れが足を掠める、私はよろめき足を滑らせた。
「あっ…」
地割れに落ちていく……
「助けて!」
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