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エルフの悪魔

よろしくお願いします。


 私はこの世界に来て初めて王様とライム以外の顔を見る事になる、番人には会ったが顔は見えていない。

 人間以外のこの世の支配者とはいったいどんな者なのだろうか。

 そしてあの城には王様と番人、スライムしか居なかったのかしら?



 今日は町に出る。

 朝日が少し首を上げたくらいの時間に城をでた。

 町までの道のりは木々が生い茂る一本道、狭く私の世界の自動車が一台通れるくらいの細い道、おそらく20、30分くらいは歩いただろうか、畑や農場がありその向こうに町がある。そう遠くはない、この世界には馬車はないが、トカゲのような大きな地竜がキャリッジを引く姿がちらほらと見られる。


 ライムはぴょんぴょんとカエルのように付いて来る、道中昨日の事が気になったこと、私はライムに問いかけた。

「昨日、王様が話してたエメラルドタブレットってなんなの?」


「その名の通りエメラルド色の書板だよ、俺の知っている文献では、エリルの世界のもっと前から伝わる秘物、錬金術を記した書と、そこまでは知っているのだが、各国が争っていたが、誰も手にした者はいないと聞いている、錬金術てのも怪しいんだけどな」


「無い物をめぐって争いを続けるなんて、人間と同じ愚かな生き物、争わずに譲り合い助け合えば世界は平和になるのにね」

 領土問題、主権争い、強欲なのは変わらないわね。


「やっぱり今も昔も愚かなのね、ライムは物知りね」


「発見された文献はほとんど読んでるからね、何でも聞いてくれよ」

「うん、ありがとー」



 しばらくすると城下町の入り口についた。


 住民はおよそ300らしく、本当に小さな町なのだが、華やかで賑やかでどことなく醸し出す幸福感を漂わせる町、王様を思慕していることが分かり幸せそうだ。

 しかし民は皆、髪の色は青や赤と珍しいけれど人間そのもの、やはり絶滅なんて嘘ね、ライムの様なスライムや亜人の特徴があるものが少しいるものの、ほとんどが人間と同じ姿だ、ちょっとホッとしたわ。


 住民も城に仕えるライムの事は知っているみたいで、親しくライムに挨拶してくる。

 賑やかとまでは言えない商店街だろうか、露天が並んでいる道を歩く、野菜、穀物……植物達は昔とほとんど変わらないってことなのね。

 パイナップル、マンゴー、ドラゴンフルーツ……熱帯の果物ばかりね、これも温暖化の影響なのね。

 その果物屋さんらしき前を通った時、ドラゴンフルーツを片手の平の上でバウンドさせている店員に、ライムが呼び止められた。


「いらっしゃい! スライムさん、元気かい? 王様もお元気ですか?」


 強面の坊主の気さくな店員、ライムは王様に仕えるのだから当然かもしれないわね、知り合いのようで普通に返答する。

「王様は元気だぜ、皆も元気か? 最近この町も変わった事はないか?」

 

 ライムと話している目線とは、全く違う冷たい目を、店員は私に向けた。

「お元気で安心いたしました、王様のおかげで、こうして商売もできておりますし、平和でなによりです、お隣の女性は?」


 私は青い髪の毛で隠れているにもかかわらず思わず両手で耳を隠し目線を下へとそらした、するとライムが耳を疑う言葉を発する、それに私は驚いた。


「平和でなにより、この子は最近城に仕えたハーフエルフのエリルだ、王様も歓待している、しかも王様候補だ」


 それを聞いた店員は大きな声を出した。

「ハ―――フエルフ! エルフなのか! あの絶滅した、エルフ―! 王様なんてとんでもない」


 その大きな声を聞いた店前にいた客や通行人がその声にざわつき始めた。



 ざわざわ……こそこそ……

 『「あの絶滅したエルフ……」

 「エルフは災いをもたらす悪魔」 

 「また争いが起こるわ」

 「王様は私達を見捨ててエルフなんかに……」

 「エルフが王様に、この国も終わりだな……」』

 私にはこんな言葉が耳に入ってきた。


 ただ私はキョロキョロとしながら、時に俯き一歩も動けず話せなかった、冷たい視線と言葉をを八方から受ける。

 

 そんな声にライムは反発した。

「みんな聞いてくれ、町の者はエルフの伝説を信じるのか? ここにいるエリルは王様が守ろうとしている、だから温かく受け入れてくれ」


 そんな言葉とは裏腹に民は冷ややかだった、長く繰り返されてきたエルフの血を求めた闘争や密猟、またここにエルフの血を求めた者達が襲ってくる恐怖、それが民達を反発させた、エルフは歓迎されない。


「スライムさん、エルフの生息を他国が知ったらどうなる、平和な町はどうなる? よく考えてくれ、王様の命までも狙われかねない、どうして王様はこんな悪魔を……もう争いはゴメンだ」店員は吐き捨てるように言い放ったのだ。


 民にはエルフなんて災いをもたらす悪魔だと……精霊とは全く反対の悪魔だと。


 それに対してライムは町人に、王様の気持ちを伝えようと一生懸命説得しようとしている、今ここではライムの行動が唯一の味方だ。


「王様を信じてくれ、王様はエルフの血を守り、皆のためにこの国を永遠のものにしたいと、だからこのエルフを王の後継者にしたいと言っておられる、ここに来たのもそのためだ、必ずエルフがこの町を救う日が来ることを信じて欲しい」


「今まで我々はサンクリアル様だからついてきたんだ、なのに後継ぎはエルフだなんて! 我々は、悪魔には絶対についていけないぜ」


「みんな、必ずこのエリルがここの町民を助けるから信じて付いて来てくれ、それが王様の願いなんだ」



 そしてハーフエルフが城にいるという噂は町中にすぐに広まった。

 エリルの居場所が無くなったのだ。



意見していただければ幸いです、よろしくお願いします。

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