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ホワイトドラゴンにみる夢

『広くて狭い』ずっと脳裏に焼き付いている。

 部屋に帰る途中もずっと脳内でローテーションしていた、いったいどういう事なのだろう。


 王様に私の使い魔にと言われたのが、たいそう堪えたのだろうか、部屋に帰ると不満そうにスライムさんが窓の外を眺めて私を待っていて、ぶっきらぼうに尋ねてきた。


「どうすんだよ、これから、使い魔なんて聞いてないぜ」


「それは、私も急に言われたから……」それ以上言い返す言葉はなく沈黙が続いた。


 私はあの日の出来事を知りたかった、みんなからはぐれた事も、すべてが真っ白になったあの時の雪山での出来事、遭難してからの事、何年間眠りについていたのか、どうしてここに居るのかスライムさんならいろいろ知ってるのかもしれない。


「スライムさんがよかったら、いろいろ教えてほしいの、そして一緒に日本に帰りたいの」


「日本がどこだか知らないけど、今更、帰っても何もないぜ、もし極圏外だとしたら、何も住んでいないのは明確だ」

 

「でも、一度この目で確かめなきゃ」


「灼熱地獄を行けるかどうかなんて保証はないぜ」


 スライムさんが言うには、南北極圏外と標高3000メートル以下は砂漠や乾燥地帯、熱風が吹き荒れる気温70℃以上にもなる灼熱地獄だという、日本は四季があって一年を通して過ごしやすい国だった、信じられるはずがない。

 今いるこの国は心地のいい風の吹く場所、灼熱などとは無縁の場所のようで想像もできなかった。



 するとスライムさんが、手? なのか、胴体の一部? みたいななにかで、私にツンツンしながら言った。

「それよりさ~僕はお前の使い魔になったんだからさ、お前の名前くらい教えてくれよ」

「使い魔って、認めたわね!」

 私は笑顔になった。

「王様の命令は絶対なんだよ」

 スライムさんは少し頬を赤らめて膨れている。

 確かにここに来て名前で呼ばれたことなかった。

「あ、私、佐久間英里、みんなにはエリって呼ばれてるわ」


「エリって今の時代の名前じゃないな、だから……エリルだな、サンクリアルのルだ!」


「エリルねっ気に入ったわ!」

 人生で初めてあだ名で呼ばれた、嬉しさのあまり微笑みながら話した。

「愛称で呼ばれる感じいいわね、いい名前、スライムさんは名前はないの?」

「魔物にあだ名なんてのはないよ」

 スライムさんは、ぶっきらぼうに答えてきた。


「いつもなんて呼ばれてるの?」

「スライムだよ」


 クスクス。笑いながら、私はスライムさんの真っ正面に回り込み、スライムさんを持ち上げた。

「おいおい、よせよ!」

「じゃあ、私が付けてあげるね、スライムさんだから、ライムさんね」

 安直にスライムのスを取っただけなんだけど、やけにスライムさんは嬉しい様子。

「照れるからやめろよ」

「スライムも照れるんだ~」

 でもライムさんは先輩風を吹かせてきた。

「恥ずかしいからやめろってば、ダメだダメ、僕はお前の使い魔なんだぜ、さんはいらないだろ、ライムでいいぜ」


 頬を赤くしながら、ツンツンしたライムがかわいい。

「気に入ったのね、わかったわ、ライム、よろしくね」

「別に気になんか入ってないぜ、よろしくな」

 なぜだかこの時、私の心は晴れ渡っていた、やっとこの世界で仲間ができたもの、魔物のライムさんだけど嬉しい。

「あははははっ!」

 ライムを抱きかかえながらクルクル回った。


「エリルやめろよ、目が回るじゃないか」


「ねっ、ライムお城の外を見せてくれない?」

 高々とライムを持ち上げ、ぎゅっと抱きしめそして下ろした。


 ちょっと目が回って、千鳥足になったライム。

「いいぞ、おっとっと……付いて来いよ」


 部屋の扉を開けて、左右に長く続く廊下を歩き、廊下の窓からのぞむ青空、長い螺旋階段を下り玄関ロビーに出た、そこにある大きな玄関扉を開けると、太陽が眩しく輝き暖かい光をはなっていた。


「まぶしー!」

―――――――私は手を目の上にかざし目をしかめる。



 一歩外に出た瞬間、私は驚いた。


「こ、ここは、サウスコル……」

 この城はあのサウスコルに建っていたのだ。


 

 そしてその場から眼下に見えるのは、鬱蒼としげるジャングルと見間違うほどの木々、城まで続く一本の道と、遠くに見える城下町、そして城の周りを少し歩き、裏側まできたときもう一度驚いた。


「エ、エベレストがそこに…」


 愕然とした私に対して、ライムは不思議そうに答える。

「出会った頃からエベレスト、エベレストって言ってるけど何なんだ?あの山はホワイトドラゴンて言うんだぜ」



「ホワイトドラゴン?」



 私は頭を傾げた……エベレストにわずかな残雪がドラゴンの形に見えるからそう呼ばれているらしい、どこから見ても私にはドラゴンには見えない、逆さま向いて見てみても、おそらくは見えないであろう。

「ドラゴンには見えないわね、まーアヒルかガチョウね」


 

 この国がここに城や町を構えたのは、要塞のように外敵の侵入を防ぐ難所を利用し敵国や魔物から住民を守るためで、ここまで来る途中に頭痛や幻覚に襲われる場所として知られていた、そのため敵の侵入を簡単に防げるというのとだとか、それゆえに攻めいられたら逃げ道がない、これがこの国の弱点だという。


 この国の周りにはもっと大きな国や、部族が沢山あるのだとか。


 今なら夢が叶えられると思った、そして世界は広くて狭いという言葉が少しわかった気がした。


 待ってて、エベレスト、そしてホワイトドラゴン!

「ねっライム、じゃあ、ホワイトドラゴンに登るわよ」




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