最終話 伝説の始まりの終わり
最終話。
今回も楽しんでいってください。
――0――
独りが集まって一人になる。
決してそれは独りぼっちじゃない。
――2――
そして、俺の十巡目が始まった。
名を「エンド」
姓を「ソード」
ミドルネームを「/」
と呼ぶ。
五体満足の俺だったが、幼く、父と母を無くした。たしか前線崩壊戦争だったか。3歳くらいの俺にとってはもう、頭の片隅で腐れてしまった記憶だ。そして俺は師匠に拾われた。師匠の名は、「ロード’ウルフ」だったか。俺はそいつに育てられた。師匠は元軍人のエースで、「王の牙」って呼ばれてたらしい。その頃は国一番の剣士だった。っつーありきたりな物語みたいな育ち方をした。15歳になって師匠を超えた。40年と剣を振るってきた「国の牙」は12年ばっかしか振るっていた少年に負けたのだった。その後俺は独り立ちして、何したと思う?魔王を殺しに行こうか。そう悩んだが、魔王になんて事実上この国一番の剣士の俺にだって叶わないだろう。なんなら城にすら入れないだろう。あの、魔物の数じゃ。ということで、自身の鍛錬を行いながら街で暮らした。この上ない体を作った。唯一無二の鋼の体とどれをとっても天下一品の無数の技。そして最高傑作の鎧と武具。そして俺は独りじゃ勝てないと考え、パーティを作った。史上最強のパーティだと褒め称えられた。魔王討伐の前日、俺達は王宮に招かれた。この話はそこから始まる。
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「剣士ソードよ。我はこの国から、こんなにも素晴らしい剣の使い手が産まれたことを誇りに思う。これから支配王討伐しに支配城に向かうのなら我らは国を上げてそれを全力でサポートする。それから・・・」
と、長々と祝詞と支援の話をしてくる。祝って欲しくないし、死ぬつもりで行くから支援を受けて、仮に生き残ったらこの後どうすればいいんだよ。家売ってこの剣にしちゃったよ。土地売ってこの鎧にしちゃったよ。色々な縁を切ってパーティ結成しちゃったよ。
耐えきれない。
「これらの物資と兵を・・・」
「あー、えー、ゴホンゴホン。
国王様?ちょっとすみません。物資も何もいらないんで兵だけくれますか?とりあえず前線付近の魔物を払えるくらいの兵と、支配城にこれ以上魔物が入らないように護衛してくれるだけの兵。ざっと15万ってとこかな?それだけでいいから。うん。よろしく。」
「な、なんとっ!この国王の名誉ある支援を無視するというか!全く無礼だ!今すぐこの王宮から出ていけ!」
「まあ、そう怒るでない。よかろう。15万だな。至急手配しよう。いつ、出発するのか?」
短気そうな家来が憤慨し、それを王がなだめる。しかも俺が面倒くさそうにしていたことを察したのか、話をこれで終わりにしてくれるそうだ。これからは宴が始まる。肉も酒も食えばそりゃ士気が上がるだろう。特に俺。
「ありがとうございます。国王様。ところで宴はいつ始まります?宴やって、朝一番には出ていきたいのですが。」
「よかろう。昼はまだこの祝詞が続く予定だったが、よし。宴は至急、準備を始めよう。」
「ありがとうございまーす。じゃ。」
と言って俺らは勝手に王に背を向け、スタスタと外に出る。王宮の中に存在する客室を目指し、そこのベットに飛び込む。
今は大体午前の10時ちょっと。多分宴は12時からか。暇だし昼寝して待とう。瞼を閉じて思考を止める。そして俺は眠りについた。
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今俺は宴を行っている。無限とも言える量の肉と飯と酒を鯨飲馬食。明日が不安になるぐらい食う。宴は国一番の踊り手や歌い手。演奏や落語と、つまらなそうなものばかりだった。落語は少し面白かったけど。
そんなこんなで時は午後3時。宴も終わり、俺は今からまた寝る。明日は朝一番。そして前線付近で休憩。その間に国王様に招集してもらった15万のうち、9万の兵達に前線をに穴を開けてもらう。そして支配城へ突撃する。突撃と言っても支配城まで1週間はかかるだろうが。
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この国を出て俺達は前線で一泊する。今は皆で夕食中。結構豪華な晩餐だ。ここで今更パーティメンバーを紹介していくぜ。
「なにやってんの。ソード。そこの皿取ってって。聞いてるー?酒飲みすぎたー?」
と、喚くうるさいあいつは職業:魔女のコード…アルズ。遺伝者で、大義の偽善の『破壊された遺物』を扱う。
「わかったわかった。はい。」
「あ、ありがと。じゃあついでにそれとそれと・・・。」
アルズは皿だけじゃなくて手を伸ばせば届きそうな距離にあるおかずを俺に取らせようとする。お嬢様みたいなやつだが、こいつ実はお嬢様。国王に直接仕える部下の一人がこいつの爺ちゃんで、かなり金なんかをもらって英才教育を受けたらしい。ちなみに支配王を倒しに行くってその爺ちゃんに伝えたら猛反対されたらしい。
「アルズちゃん、食いすぎて明日動けないなんて言わないでね?」
と、パーティメンバーの心配をするこいつは職業:英霊弓使いのクロス∩パララ。遺伝者で精霊に好かれやすい体質。精霊を利用して・・・と言うと怒られるので。、精霊に手伝ってもらって矢の軌道修正や、バフデバフをかける。
「だぞ、アルズ。太るぞ。てかお前太った?」
ガシャーンと、片仮名で表記できるくらい大きく、綺麗な音で皿が粉砕された。粉砕したアルズは俺の動体視力を振り切って踵を皿に押し当ててる。
「あっぶね!なにすんだよ!アルズ!食卓に足乗っけんな罰当たり!」
「うるせえ!支配王にどころかそこらのモブキャラに殺されて死ね!」
「うるせぇな。」
「あぁ?若い者どもの口論に首突っ込んでじゃねぇ!オッサン!」
「そうだそうだ!オッサン!」
「おい!アルズは許せるがソード、お前は許せんぞ!お前だって立派な大人だろ!オッサンだろ!」
「いやいやピチピチの24歳のこの俺がオッサン?ふざけんじゃねぇ!30超えてるあんたの方がよっぽどオッサンだわ!」
「はぁ!?俺の時代では20歳超えたらオッサンって呼ばれてたわ!あのなぁ・・・」
「昔のことは知らねぇよ!俺は今の話をしてるわけでな?」
と、なんか口論の矛先が変わってる気がするがあいつは職業:盾騎士のスルー:ストリ。大義の偽善の『乱反射の鏡』扱い、この国では「王の盾」と呼ばれていた。今は知らん。
ちなみに俺は職業: 剣士の・・・名前はいいか。装備しているものは大義の偽善の『砕かれた頭蓋骨』という鎧と『中身の無い龍』という龍の鱗でできた剣。このパーティのリーダー。
計4人のこのパーティで支配王を殺しに行く。まあ、遺伝者が数人混ざってるから王の犠牲でもある。
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時は進み1週間後。場所は移り支配城内部、支配王室前。順調に進む俺たちに遂に支配王が立ちはだかる。今は誰が開けるかじゃんけんをしている。くそう。アルズと俺の一騎打ちか。負ける訳には行かん。どんな賭け事勝負事にも本気で臨めと俺の師匠が言っていた。じゃーんけーんぽん。俺はグーでアルズはパー。アルズが負けた。
負けた者へ罰が与えられる。さぁその扉を開けて死に物狂いで支配王を殺そう。
「待っていたよ。勇者達。」
アルズが開けた扉は音もなく開いた。代わりにただただ広く、天井が空のように高い部屋の奥で話す支配王がいた。
息を飲んだ。
否、息を飲みたくない。そう思った。
ふと顔を上げてみたものは王とは言えないような見た目だった。闇のようなどす黒い泥のような体がどくどくと床の上で流動する。目であろう虫の複眼が無数にあり、体が流動するのと同時に色や大きさを変えて消えたり、現れたりする。体からは血のような、赤黒い液体が床いっぱいに広げられていた。数百メートルとも言えそうな距離から、遠目で見た俺でも吐き気を催した。
「ぐぅっ・・・」
ほかの3人も同じようだ。ただ気持ち悪い。この世のものとは思えないような黒い泥。見た目からしてスライムか?スライムが支配王の正体なのか?
「はは。王を見て嘔吐寸前ってとこか!」
笑えねぇ。
「でも驚いた。この俺を見て恐怖を感じないとは。先に気持ち悪いという感情が生まれている。そうかそうか。」
ん?感情?
そう考えるまもなく、支配王は姿を変えた。
彼は龍の姿になった。体中に例の複眼が無数に張り付いた、どす黒い龍。血のような赤黒い液体が滴っている。
彼は獅子の姿になった。体中に存在した複眼は顔の周りに集まり、たてがみの先端に移動している。たてがみ1本1本は蛇の如くうねうねと蠢いている。
彼は炎となった。黒く周りを照らす、矛盾と呼べる存在。黒く照らす床にある血のような赤黒い液体はキラキラと輝きながら波打っている。
そして彼は人の姿になった。あの闇のように黒い泥と同じ色のローブを羽織り、虹色に輝く複眼を持つ黒い王冠を被っている。皮膚は健康とはいえない青白い肌で、髪は銀色で光を眩しく反射している。戦闘シーンはおろか、相手がどんな能力を持っているのか、正体すらも知らないまま、4人は同じ感情を抱いた。
恐怖。
冷えた脂汗をじっとりとかき、カタカタと細かく揺れる首を横に倒す。
3人は
倒れていた。
顔を正面に戻す。いつ俺は足を進めた?俺は部屋の中央よりも前、玉座の前にいた。玉座には人の姿になった支配王がいる。
「ッ・・・。」
恐怖という感情とはこれまでほと恐ろしいものなのか・・・。足がくすむどころか、足が棒に。足が動かない。石になったみたいだ。
「俺はぁ・・・。」
声が続かない。脳が逃げることしか考えない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。
「ッ!」
どうしたんだい。そんなに怯えて。支配王はそんな眼差しでこちらを見てくる。正体不明という恐怖が体を襲う。
「俺はさ。君と、エンド君と同じ待遇者なんだよ。君は死んでもなお、死んでもなお、生き返る。でも、それに終わりはない。君はそれを知っているんじゃないか?
この何巡目かも記憶が廃れ風化した中、やっと思い出したんだろ?死ぬ時の恐怖を知っていても、死ぬ時の恐怖を体験したわけじゃないからそんなに怯えているんだろう?君は、その無限ループから脱したいんだろう?なら、本当の死をもってこの世から消え去りたいのなら、」
恐怖はなお俺を束縛し、動くことを許さない。
親の敵を討ちたい。
せっかく仕上げた装備を無駄したくない。
鍛え上げたこの体を無意味にしたくない。
みんなの期待に応えたい。
そして、
――今まで死んだ9人の俺の仇を取りたい。
そして、支配王は最後、口を開いた。
「死んでくれたまえ。」
とか言っちゃって、まだ終わってないけどね。だってタイトル見ればわかるやん。文字通り、11回目にてグランドエンドです。今回で終わらせません。次回でちゃんと、終わらせます。
続きがあるなら続きを、無いなら別シリーズを読むか、出るまでお待ちください。次回、お会いしましょう。




