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一つの世界の終わりに  作者: いちのはじめ
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異変 四

 迫る兵士! 原因不明の地震! 残されたわずかなエネルギーを駆使して、仲間を求めるユダイム達に、残された時間はあとわずか! 果たして全員無事に脱出なるか!?

 「ユダイム!」

 エルキューヴィの声と同時。

 その瞬間、その場を光が支配した。

 激突するローダー同士。

 周囲をえぐり取る銃弾。

 飛び散る破片。

 叫び。

 クラッシュ。

 乗っていたローダーで、相手ローダーに全力で突撃。投げ出された勢いを、とっさのプログラムで軽減したのだ。

 「痛っつ、無茶しすぎだぜ」

 上に落ちてきたエルキューヴィを、突き飛ばして起き上がる、少年。

 「……ベスペルハミル、無事だったのね」

 明らかに力の使いすぎであった。ユダイムの言葉がかすれる。

 突き飛ばされたエルキューヴィが、ペスペルハミルに抗議、それを起き上がらせてもう一人の<ダブル>エシュテンメイン。彼も皆と同じく、目の下にはくまができていた。

 これで<ダブル>が四人になった。ただの人間では太刀打ちできない程の力を持った、異能者が。

 だがこれで全員ではない。お互い顔を見合わせる。

 まだ座ったままなのユダイムを、エルキューヴィが起き上がらせる。

 こっそり舌を噛むユダイム。ぶれる意識をどうにかとどめる。先程のプログラムがこたえ、支えられてなお肩が重かった。内心舌打ち、とそれ以上に、脳が後ろから溶け出すような、恐怖。だが、仲間と合流できたのだ。まだ何とかなる、まだ皆で、まだ、諦めないとユダイム。

 「どうした、顔色が悪いじゃないか」

 軽口をたたいてベスペルハミル。皮肉屋で何かとユダイムとは喧嘩が絶えない仲だが、この言葉が彼なりの叱咤激励だと分かっている。

 そんなベスペルハミルも疲弊しているのだ。それでもいつもとこうして変わらない態度が、どれほど仲間を勇気づけているだろう。ユダイムが、彼へ武器を渡すようにエルキューヴィに。

 この状況下でなお、ユダイム以外は覚醒しなかった。それは、諦めていないから。最後の最後まで、その力を取っておく為だから。誰一人として、諦めていないから。

 絶対に生きて戻る。

 全員が強く思っていた。

 基地内に流れる警報に、アナウンスが混じる。この場所に<ダブル>がいると、監視カメラで捕らえられていた。

 「生きて戻るぞ」

 低い声でベスペルハミル。エルキューヴィを除く全員が、一つの事を思い出していた。

 あの戦争を生き抜いたのだから。

 ユダイムを除く彼らが覚醒するのは、メガホイールを、もはや第二の故郷とも呼べるその移動要塞を、確実に奪い返せると分かった、その時だった。

 ベスペルハミルは戦闘において、覚醒せずとも身体能力的万能である。彼なら小さい銃でも、ある程度までならローダーに抵抗できるだろう。

 「さて……」

 わずかに、次の言葉をためらうベスペルハミル。しかし時間がなかった。

 「ユダイム、残りの連中は分かるか?」

 「ちょっとベスペルハミル!」

 反射的にエルキューヴィが怒る、のも無理はない。支えて立っているのがやっとの状態なのに、これ以上無理をしたらと、思わず涙目で抗議したが。

 「ちょっと待って……」

 それを静かに制してユダイム。覚醒していなくても体力は減っていく。メンテナンスの無い今、覚醒していられる時間は、短くなる一方なのだ。そして、メンテナンスなしで耐えられるのは、ユダイムだけ。選択肢は一つ。それならば議論するのは無駄。

 プログラムを実行する。

 確かに疲労は限界にあるが、ユダイムも馬鹿ではない。後は先ほど検索していないところで、仲間がいそうな場所を探せばいいのだ。ベスペルハミルとエシュテンメインを探し当てた事で、探すべき場所は、だいたい予測できていた。普通の<ダブル>とは違い、長い間生き続けられた事が、豊かな経験となって。

 「……見つけた」

 かすれて消えていく声。

 支えるエルキューヴィにつかまる手のひらに、もはや力がない。効率的にプログラム実行しても、その衰弱は目に見えてひどくなっていた。

 泣きはじめるエルキューヴィに、優しく笑みで返すユダイム、大丈夫よと。だが声が出ない。

 「ベスペルハミル、ローダーを奪おう」

 エシュテンメインが言った。

 覚醒もせず、破壊するでもなく、ローダーを銃一丁で奪えというのだ。だがいわれるまでもなく、そのつもりのベスペルハミル。

 全員が、今できる事に全力をつくす。

 エシュテンメインなら、プログラムなしでローダーを操縦できる。しかもこの狭い通路を全速力で、だ。

 通路の先でシャッターが開き、近づくローダーの音。

 それににあわせて銃を構えるベスペルハミル。

 「!」

 一つではない、複数のエンジン音が近づき、ベスペルハミルはわずかに銃の位置を上げる。そしてローダーが現れるよりずっと早く、引き金を引いた。

 まったくもってタイミング違いっ。

 しかし打ち出された弾は、正確だった。

 砕けて飛び散る、落ちて割れる、監視カメラ。続けて反対側も。

 すると、すぐそこまで近づいていたローダーの音が急に小さくなり、そして止まった。

 こちらの様子がわからなくなった所為で、兵士達は怖気づいてたのだろう。

 彼らも馬鹿ではない。能力おいて、はるかに強力な相手と対峙しなければならないのだ。今<ダブル>達が、どれほど疲弊している状態なのか分からなければ、おいそれと飛び出こんではこないだろう。そこには一人ではなく、複数の<ダブル>がいるのだから。

 「 よし」

 一呼吸、対称的にベスペルハミル。

 「ふっ」

 飛び出し、構え、撃った。滑らかな、獰猛だが、しなやかで美しい、捕食者のような動きで。

 弱っていたユダイムには、銃の音が一つしか聞こえず、それほど早い射撃は、しかし、正確に的を打ち抜き、ローダーを二機、無傷で手に入れた。額を撃ち抜かれた衝撃で、兵士の死体から飛び出る目玉。

 「さすが」

 エシュテンメインがため息混じりに。そして今度は自分の番と、彼が邪魔な兵士をコックピットからひきずりおろすと、その銃をペスペルハミルに渡して席につく。血の匂い。

 彼が戦闘担当なら、エシュテンメインはメカニック担当、ローダー程度のメカなど、わけもない。この世でもっとも複雑な兵器であり、<ダブル>達の象徴でもある<モデル>を、一から作る事ができるのだから。

 「伊達に戦闘指揮官はやってねえさ」

 軽口、出発する。

 エシュテンメインがペスペルハミルと先行して、ユダイムが見つけた仲間の元へと急ぐ。後ろからユダイムと、それを支えてエルキューヴィが続いた。

 邪魔を蹴散らして進むが、兵士達も<ダブル>相手に直接戦うような事はせず、通路に搬入用のフォークリフトやら机やロッカーやらを障害物として、とにかく疲弊させる作戦にでたきた。確かにこれは効いていた。

 「おいっ、ユダイム!」

 金属音。壁にこすれて彼、彼女のローダー。火花が上がった。床に落ちる。気づいてペスペルハミルが叫び、予期せぬ減速にエルキューヴィが振り落とされる。思わずペスペルハミルもエシュテンメインのローダーから飛び出した。

 彼は、自分の身体が慣性で進む反対側に向いていながら、上手に足を滑らせ、そのままエルキューヴィをキャッチする離れ業。だが、遂にバランスを崩し、そのまま二人して床に倒れてしまった。

 「!」

 そこへコントロールを失ったユダイムのローダーが滑り込み、二人をひき潰す。

 「うおっ」

 「んっ!」

 ガンッ

 間一髪、引き返したエシュテンメインがローダーの体当たりで、なんとかそれを無理やり止める事に成功した。

 ユダイムはローダーの中でもみくちゃになったが、ベルトに身体を固定してあったので、大事には至らなかった。

 「ふう……」

 エルキューヴィが、自分を助けてくれた彼には目もくれず、飛び起きるとユダイムへ駆け寄った。その時。

 「! またか」

 再び地震。大きい。通路がねじれ照明が激しく点滅し、嫌な金属のきしむ音があちらこちらから走ってくる。

 よろけ壁に頭をぶつけても、まったくかまわずエルキューヴィ、ひたすらユダイムの元へ、大切な、大切な人。

 「これも、<歪み>って奴か」

 ベスペルハミル。

 おそらくこの地震も、物理的な現象にのっとったものではないだろう。説明のできない、まさに<歪み>と呼ばれる現象である。

 岩の中に作られたとは思えないほど、強烈に通路がうねり、そこかしこで壁が崩れ落ちる。

 遠くで激しく激突する音が聞こえるのは、制御しきれなかったローダーのものだろう。再び基地内の電力が止まり非常灯の明かりだけとなり、通路が暗くなった。床に倒れたローダーが、その激しい揺れに、通路を左右と引きずられていく。

 「ユダイム!」

 風までも青く染まるほどの空の下。草原の丘。初めて見る景色。けれど、どこかなつかしいようなくすぐったい感情。ふわりと浮かぶような風に青草の香りが濃く。そして丘の上に一人立っている、女性。長い髪がいくつかの束となって風にゆれている。暖かさ。嬉しさ。それと、涙。誰の涙だろうか。女性のすぐ後ろに気が付くと立っている。髪の匂いが分かるほど近くに。そして押さえ切れない衝動。ようやく迎える事のできた、この時、この瞬間。女性にゆっくりと手をのばす。その腕は確かに。

 「わ」

 顔と顔。ユダイムとエルキューヴィの。胸ぐらをいきなりつかまれて彼、彼女の虹彩がはっきりと分かるほど近づく、力強く。しかし、優しく、そして揺れ。

 「だい、じょうぶなの?」

 元気とまではいかないが、何故だか、ユダイムが回復していると、エルキューヴィにも分かった。

 ユダイムの吐息が甘く、彼にかかる。

 少し、残念そうに見える表情のユダイム。

 彼を、皆でローダーから下ろす。こちらのローダーは壊れていなかったが、ベルトが絡んでいたため、無駄な時間がかかってしまった。

 「皆は大丈夫?」

 と声をかけて、大丈夫と返すも、よく分からない理屈で怒っているベスペルハミル。面倒くさいので適当に謝るユダイムに、加勢するエルキューヴィ。

 それを見て一瞬、日常を思い起こしたエシュテンメインだったが、すぐに現実、ローダーを一気失って、じわり、追い詰められて、内臓をわしづかみされ身体をかがめた。さすがに一人乗り一機に、四人は多すぎる。

 「どうする?」

 浅い呼吸でエシュテンメイン。

 くだらない言い合いから顔を上げて、周囲を見渡すベスペルハミル。

 先の通路は崩れて、がれきをどけないと、ローダーは通れそうにない。それをどかしても、この先も後ろも、ずっと。

 「走るしかないか」

 ベスペルハミルが言った。あまり考えている余裕はないのだ。こうしている間にも、メンテナンスを受けていない身体は衰弱していく。

 不安、焦燥。

 それを誰も口にしないから、より、強い圧力で、じわり、脳が後ろから溶け出すような、黒い不安。

 「待って……突っ切る」

 ユダイムがそれをさえぎり、言った。

 「え?」

 ベスペルハミルは、ユダイムが壁を見て言っている事に気づいたのだ。

 「え、この先にいるの?」

 エシュテンメインもそれと気づいて。

 そう、通路の壁を抜け行いった向こうに、仲間がいるのだ。

 「?」

 エルキューヴィ。

 「おい、ちょっとま」

 声をかけ終えるより先に、ユダイムのプログラムが実行された。

 閃光!

 巨大なエネルギーを消費し、複雑なプログラムが一気に物理現象化していく。目の前の壁をまさに、かき消していくように穴が開かれていった。それはまっすぐな道、仲間への道。

 「嘘だろ……」

 たった今、死にかけた<ダブル>のできる技ではない。常識的に考えれば、これができるほどのエネルギー量は残ってないのだ。覚醒し続けるだけでも、本来であれば。

 ペスペルハミルは勿論、エシュテンメインでも、今のユダイムは明らかに理解不能だった。いくら<ダブル>でも無から有を生む事はできない。ではそのエネルギーは、いったいどこから湧いて出たというのか。

 「……」

 頭を軽く振り、今は仲間を助け、生き残る事が最重要だと、思考を切り替えるエシュテンメイン。

 エルキューヴィがぐったりと重い、彼女の身体を支える。

 再び電力が戻り、通路が明るく照らし出される。ユダイムがこじ開けた道も照らすが、暗くそして。

 「狭い」

 ローダーには。

 「いや、なんとか」

 エシュテンメインがペスペルハミルに答えて。

 彼の腕でも、ローダーで通り抜けるは難しいほどぎりぎり。しかしその先には仲間がいるだ。この穴はそこまで続いている。

 「よし」

 ユダイムを一瞥、ベスペルハミル。

 「エシュテンメイン」

 をローダーで先行、状況によってはそのままローダーをバリケードに使い、ベスペルハミル自身はすぐ後ろを追い、続いてエルキューヴィがユダイムを支えるとして、即座に行動開始する。

 通路の電力が回復したのなら、既に監視されている状況であり、同じ場所に留まっていられる余裕などないのだ。急がないと、行った先で狙い撃ちの可能性すらある。

 「よしっ」

 まずはエシュテンメインがローダーで進んだ。先程の転倒で、少し歪んだのか、あちこちにぶつかり始める。無理矢理破壊して作ったうえに、地震で脆くなっているのだろう、上からケーブルやら部品やらも落ちてくる。

 後ろに続くベスペルハミルも、進んでは何かを踏み思うように進めず、ひどく眉間にしわ。

 エルキューヴィはユダイムを支えながら狭い道を進むも、肩や足をすりむき、何度も倒れかかるユダイムを、それでも必死になって支えていく。

 「はあ……」

 息が切れるエルキューヴィ。

 「!」

 その時、爆音。穴の先から聞こえてきた。直後にエシュテンメインのローダーが穴を抜ける。

 「ちっ」

 ペスペルハミルは、背筋を寒くなるのを無視して無理矢理一気に駆けぬけた。

 「はあ、はあ」

 エルキューヴィの息に気づいてユダイム、自分の胸の皮膚一枚挟んで、心臓が外にせり出してきているように感じつつも。

 「エルキューヴィ」

 優しい声。ユダイムの、男であっても女であっても変わらない、パートナーへの愛情がこもった、声。

 「ユダイム?」

 既に顔も上げられない為、ユダイムの言葉がかすかにエルキューヴィへ。

 「つかまって」

 「!?」

 二人を淡い光が包み込み、プログラムの実行を感じてエルキューヴィ、思わず叫びそうになる。が、その前に身体が浮き上がり、一気に穴を突き進む。

 再びユダイムのプログラム、光の繭。そしてエシュテンメインとペスペルハミルの後を追って、光の繭が穴を飛び出した。

 小さく軽いエルキューヴィとはいえ、<ダブル>一人の質量を持ち上げ運んでみせたのだ。普段ならともかく、何度となく倒れたその身体では不可能。死んでいてもおかしくない、どころか、死んでいないとおかしいほど。

 そして穴を抜け終えた光の繭はほどけて、そのまま床に倒れ込む二人。周囲も気にせず、エルキューヴィが一緒に飛んだユダイムを抱きしめた。小刻みに震えている肩が怖くなって、おさえるように。

 「ギリギリじゃねえか」

 エルキューヴィの頭の上から、ベスペルハミルのバカにしたような声。そして彼の横にはパートナーのメルカンビア。

 「」

 そしてようやくエルキューヴィがユダイムを抱きしめたまま、少し起き上がって周囲を見渡すと。

 「良かった、エルキューヴィは無事ね、ユダイムは?」

 そういって疲労の激しいユダイムの首にふれるアイシー。

 目に涙をためながら彼を見るエルキューヴィに。

 「……大丈夫、何とか」

 全く大丈夫とは思っていなかったが、アイシーはそう言ってみせた。

 「今のところこれで全員?」

 エシュテンメインのパートナーであるウルハリオンが確認し、その後ろではエルキューヴィの次に若い、アマシアスがおろおろしていた。

 「皆無事だったんだ」

 素直に喜ぶエルキューヴィ。

 バリケードをたてて、どうにかローダーの攻撃をしのいでいた彼らを含め、これで八人の<ダブル>が揃った。

 これは軍側にとっては脅威であった。現に、今攻撃が止んでいるのだ。こちらの様子が分からないよう、ベスペルハミルが周囲の監視カメラを破壊している。

 しかし、それは彼らの絶対優位を物語るものではなかった。時間は彼らの敵なのだ。軍は戦って勝つ必要はなく、ただ<ダブル>達を消耗させればよい。既に一か月も消耗し続けさせた後なのだ。更に消耗させればプログラムは使えなくなり、更に消耗させれば、死ぬ。

 今ある武器は、壊れかけのローダー一機と銃一丁のみ。後は、ユダイムのいつ尽きるかわからない、覚醒の力。これで脱出は不可能だろう。どこかでユダイム以外の覚醒が必要になる。そして。

 「ミーメイヤーは?」

 うろたえながらアマシアスが。

 そう、捕らえられた仲間は後一人残っていたのだ。ミーメイヤー。メガホイールのキャプテンであり、先の大戦ではペスペルハミルと並んで最も活躍した<ダブル>の一人でもある、優秀な、アマシアスのパートナー。

 ユダイムを見ようとして、こらえるベスペルハミル。

 「戻ってるって事は、ねえか」

 まだ牢屋に閉じ込められているのだろうか。

 言いながらその可能性がないと、ベスペルハミルも分かっていた。

 メガホイールは軍の監視下にある。しかし、軍がメガホイールを捕獲する以上の事はできずにいた。

 メガホイールは、<ダブル>達が生まれた場所、アークヒルの技術をすべて集結して創り上げた、完全自己完結型の移動要塞である。それゆえ、人間では入る事すらできない強力なセキュリティが築かれていた事も理由だが、他にもある。メガホイールにはまだ一人、<ダブル>が残っているのだ。アシュタル。

 元々は普通の<ダブル>だったが、アークヒル出発後、旅の途中の戦闘でパートナーを亡くしてしまい、その時、アシュタルも重傷を負ってしまった。しかしそんな自分でも仲間の為にと、衰弱した能力を最大限に利用できるようメガホイールと直接接続の手術を行い、結果、常に覚醒状態でいる特殊な<ダブル>になったのだった。

 メガホイールがつかまる直前まで蓄えたエネルギーを細々と使いつづけ、皆が捕まっていたこの一ヶ月間、孤独にメガホイールを守りつづけていたのだった。

 そのメガホイールにキャプテンであるミーメイヤーが戻っているのなら、なんらかのリアクションを起こして、皆へ知らせているはずである。

 「まさか」

 「ベスペルハミル」

 言いかけた彼を、パートナーであるメルカンビアがたしなめた。その言葉の先を知って、不安がたまらずアマシアスが覚醒をしようと。

 「駄目、アマシアス」

 しかしそれをアイシーに強くとめられた。アマシアスだって疲労しているのだ。優秀なメガホイールの<ダブル>達の中にあって、能力的に劣る彼が今覚醒しても、極わずかな時間しか身体がもたない。その貴重な時間を今使ってしまえば結果は見えている。それは速やかな自殺行為だった。しかしそろそろユダイムが厳しいのも事実。

 「……」

 沈黙。

 アイシーは医師として無事戻れたなら、直ぐに全員をメンテナンスする必要がある。ペスペルハミルとメルカンビアは戦闘要員として、できる限り体力を残しておく必要がある。

 「そう、だね」

 状況から、メカニック担当として自分の代わりにはエシュテンメインがいると、ウルハリオンが判断、覚醒の準備を。

 「待って……分かる、かも……しれない」

 そうかすれる言葉のユダイムを、膝に抱えたまま、泣いて、もうやめてと懇願するエルキューヴィ。

 さっきは、捜索するにしても予想がついていた。だからこうして短時間でたどり着けたが、今度は全くの手探りだった。

 だがだれも止めない。限界などとっくに超えているはずだが、その事に誰もふれようとせず、考えない。誰も。口に出せば終わってしまうかもしれない、そんな根拠のない不安にすら、<ダブル>達はおびえていた。

 「…… 」

 大丈夫、そう音にならない言葉を、エルキューヴィへ言う。

 そう、大丈夫。ユダイムは自分自身の異変の元が何なのか、ようやく気づき始めていた。さっきから繰り返し見ているであろう、青。

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