表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/35

005 来ちゃった

=== How about... ===


路地裏でオヤジ狩り…かと思ったら相手は魔王で、目が覚めたら人間やめてたでござる。

そんな貯金額で大丈夫か?とりあえず仕事を済ませよう。

仕事を終えたのは7時40分だった。


8時を切ったか。まぁまぁのタイムだな(何が)。


狭山の「女か?女だな?」という視線を浴びながら帰宅の途に付く。

会社を出ると、そこに…


「ハルにぃ!!」


私立高校の制服姿の女の子が走ってきた。

この辺では珍しい制服なので、小柄なその子は中学生に見えなくもない。

その声、髪型、そして服装。間違いない。


ぼふっ!


俺の妹、結城だ。そして何故かそのまま抱きつかれた。


…何だ何だ。ん?泣いてるのか?


そういえば最近はずっと「お兄ちゃん」呼びだったのが、「ハルにぃ」に戻ってる。

何かあったみたいだな…。背中をぽんぽんと叩く。


ふと視線を感じて振り返ると、狭山がものすごく冷たい表情で立っていた。


「さすがにロリコンはいけないと思います。」


声まで冷え切っていた。

見回してみると、人通りの多いはずの会社前の通り道なのだが、通行人が俺の周囲5~6メートルを避けている。

とんでもない誤解を受けている。そう気付いた時、指先が冷たくなるのを感じた。


「…いや、そうじゃない…違うんだ…。」


何故か心臓をバクバクさせながら、誤解を解くために俺は声を振り絞ったのだった。






喫茶店。

結城と、俺と、何故か狭山の3人で事情を聞く事になった。


「色々、あったの…。色々…。」


狭山をチラッと見て、言い辛そうな結城。

既にコイツは妹だと伝えて誤解は解けている筈なんだが、何故お前はここにいるんだ。


「そうか…。」


何があったんだ?とか、どうしてここに?とか、聞きたい事は色々あるが、結城が狭山の事を気にして喋れない以上、聞いても意味が無い。

てか狭山おまえは早く家に帰れ。


「そういう時は、おいしいモノを食べて幸せな気分になるといいよ。

おごるから好きなもの頼みなよ。俺も相談に乗るし。」


ダメだこいつ。早くなんとかしないと。



数分後。


なんだかぎこちない空気のまま注文がされ、俺の前に生中とフライドポテト、結城の前にパスタ、ちょっと遅れて狭山の前にステーキセットが運ばれてきていた。


「生中って。女子高生の相談受けてるのに生中って。アルコールってちょっと失礼じゃない?

ほら客観的にテーブル見てみ?明らかに浮いてるだろ?空気読めよー。」


だからお前が空気を読めと。

むしろお前のガッツリ系メニューが浮いてるように見えるよ、俺には。

俺が先に座ったのが悪いんだが、狭山のせいでさっきからサラダバーが取りに行けないんだ。


「私、お兄ちゃんのサラダ取って来るね。」


そして空気の読める妹である。

もう立ち上がっているが、さすがに妹を使うわけにいかない。


「や、俺が自分で行くわ。」


狭山を押しのける覚悟を決める。

と、結城が空のドリンクバーのグラスを軽く揺らした。


「…一緒に行こ?」


…うん。結城もこの気まずい状態にちょっと辟易していたようである。



結城が空のグラスを持ったまま、俺の後をついて来る。

俺はさして広くもないサラダバーのスペースを、ゆっくりと歩いた。


「…何があったんだ?」


…。


「うん…。」


話すタイミングじゃない感じか。まぁ仕方ないな。


「どうしてここに?」


…。

チラッと結城の表情をチェックしようとしたが、ただでさえ小柄なのに俯き加減な為、全く見えなかった。

と、顔を上げて視線が合う。潤んだ瞳。思い詰めたような表情かお。そう思った。


「…あのね。――」


「あっ、結城ちゃん。あそこのスムージーめっちゃうまいよ。マジおすすめ。」


狭ぁ山ぁああああああ!!!

お前は席で大人しくしてろよ!何こっちまで付いてきてんだよ!

席に荷物置きっぱなしじゃねーか!何やってんだ!


結城は再び俯いてしまった。


ダメだこりゃ…。




そして会計は全て狭山に払わせる事にした。全くふざけんなってんだ。



で、今、とても困っている。


「今日、お兄ちゃんの家に泊まりたいの。」


狭山は何か面白い表情をさせて口をパクパクさせているし、絶対何か誤解している。

あ、聞こえた。「お泊り…  お泊りだとっ…」黙れ。

でも、分かる気はする。だって狭山こいつのせいでマトモに話ができてないもんな。

分かるは分かるんだが…


「土曜日じゃだめか?」


「ゆっくりとお泊りだとっ…?」お前は黙れ。


「……うん……。」


結城のこんな思い詰めたような顔を見るのは久しぶりである。

だが、家には元魔王ウィルがいるし、はいどうぞどうぞというわけにいかない。

どうしたもんか……。


「とりあえず、そこの公園で話を聞こう。」


「公園……だと…… ? 」


とにかく狭山アホを帰らせないと、そのままの意味でお話にならない。

公園では狭山アホにしっかりと説教し、帰らせることには成功したのだが。

結局、結城が家に来ることになってしまった。どうするよ、これ。


=== Who are you? ===


戸羽

主人公。推定20歳前後の人型魔族ヒューマノイドなサラリーマン。

学生時代より資金力がある以外、特に取り柄らしきものはない。少し運動不足。料理はあまりしない。


ウィル(ヴィルアード)

元魔王様。主人公にオヤジ狩りの不良、そして謎の外国人だと思われていた。

黄金色の目と白っぽい金髪で、頭に黒い角、背中には蝙蝠のような翼が生えている。

PCに興味津々。留守番なう。


狭川

戸羽(主人公)の同僚。パチスロが好きらしい。


戸羽 結城

主人公の妹。小柄でいつもは男勝り。何かあったらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ