表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/35

004 平穏すぎて逆にやばい

=== How about... ===


路地裏でオヤジ狩り…かと思ったら相手は魔王で、目が覚めたら人間やめてたでござる。

とりあえず会社いってくる。

その日は本当にいつも通りで、最初こそ色々考えたものの、11時過ぎてからは飯を食う暇もないほどに忙しく、14時に飯を食い始める頃まで、すっかり昨日からのゴタゴタを忘れていた。

とは言っても、思考の隅に追いやる事ができていただけで、たとえ飯の僅かな時間でも仕事から離れてしまえば考えてしまうことになった。


まず自分の事。次にウィルの事だ。


俺の稼ぎは、平均的な俺と同世代の月収と比べてどうなんだろうか。

一応、毎月22万程が手取りとして入ってくる。


家賃7万、光熱費・ガス代・電気代で1万行かないくらいだったが、人数が増えた以上はもっと嵩むだろう。

スマホ…月々5千円程度だったはずだ。

飯代が月3~4万。

付き合いの飲み代に1~2万。使わない月もあれば、めちゃくちゃかかる月もある。

タバコ…はやめたし、ってことは月に9万円近く貯金できてる計算?

いや、そうでもない。

せいぜい6~7万程度のはずだ。

何に消えてるんだ?俺の3万。


3万っつったらデカイぞ。

1日で使おうと思ったらかなり贅沢できるし、もし趣味なんかがあれば奮発して趣味のものも買えるぐらいだろう。

タバコは止めたし…。アルコール…は飯代に含まれてる。

課金と名の付くものは最近やってないし、おかしいな…。


いや、貯金の話は置いておこう。今は…これにウィルが加わる。

家賃・光熱費・ガス代・電気で9万かかるとしよう。

スマホを奴に与えるつもりはない。飯代は単純に倍にしてみよう。7万とする。

その他は今んとこ俺だけだからそのままで…18万5千!?

で、どっかに消えてる謎の3万を足せば21万5千…??!?


「ギリッギリじゃねーか?!」


驚いた。本当にギリギリだった。

しかも、これは推定だから、これを超えたらアウトである。

やばい。これはやばい。

思わず叫んでしまうぐらいにはやばい。


後でしっかりメモを取りながら計算しようと思う。


「何がギリギリだって?」


俺と同じ安定志向の同僚、狭川が寄って来た。

こいつも今から飯か…。そうなるよなぁ。

同期はこいつともう1人しかいない。最初4人だったが、1人は辞めてしまった。

新人が入れば3人に1人は2年程度で辞め、古株もポツリポツリと辞めて、ベテランも新人も殆ど増えないという不思議な会社である。


「いや、ちょっと今手持ちが厳しくてな…。計算してみたらとんでもないことに気が付いただけだ…。」


ごまかす、というより、坦々と事実を話す。

狭川はニコリと笑って何かボタンを押すようなジェスチャーを始めた。


「?」


分からない。


何かを押して、連続して横のボタンを3つ押し。

またレバーを押して、横に並ぶボタンを3つ素早く押す。

続いて、何かを軽く掴んで捻るような動作をしてからまたニッコリ笑う。


「仕事が終わったら行こうぜ。」


パチスロだった。


何が安定志向だ。とんでもない勘違いだ。

俺の謎の出費の元凶はこいつだった。


「手持ちが厳しい時にやるもんじゃねーだろ?!?」


チッチッチッとでも言いたげに人差し指を振ってみせる。


「だからこそ、だろ。」


コイツも独り者だし生活には困ってない。

だからこそ、貯金が無くともパチスロに興じていられる…と思ったのだが、先日の雑談で俺よりも貯金額がありそうな事を匂わせていたな。

そういえば、俺がちょっとづつ負ける傍ら、コイツの勝率はそんなに悪くない気もする。

ただし、良くも無い。

何度かおごってもらってるし…まぁ俺もおごり返すけど、そのおかげで勝ち分は残らない…ってよく考えたら常に赤字だな?!


「俺はもうパチスロには行かない。」


俺の宣言に、狭川が驚愕の表情を浮かべた。


「ま、まさか… お前…。」


何だ?

付き合い悪ぃな、程度の話じゃないのか?

だがとりあえず今日はウィルを放置するわけにもいかんし、帰るしかない。


「女でもできたのか?」


今日一番の真面目な顔で質問され、俺は飲みかけのお茶を噴き出しそうになった。


「んなわけねーだろ。どこで出会うんだよ。」


っつっても、もっとレアなモノに出会ってしまったので、出会いが無いと悲観することも無いのかもしれない。

いつか、もしかしたら、なんとかなる。…といいなぁ。


「そうか…なら明日行こう。」


「行かねーっつってんだろ。」


パチスロに行く・行かないの話しと、彼女がいる・いないの話をごちゃごちゃにしながら雑談をしていると、


「2人とも仲いいわね。」


と、会話に参加してきた人がいた。

同期の1人の女の子…だったら素晴らしいが、残念ながら同期は全員男である。

この人は、先輩の中林さん。

ちなみに割と性格が悪いという噂があるが、そこそこ面倒見のいい上司である。


「戸羽君はもう休憩終わり?」


「あっ、はい。もう行きます。」


どうやら休憩時間を教えにわざわざ来てくれたようだ。

さっさと仕事終わらせないとな…。


いつもなら仕事が終わったら気楽なプライベートタイムなのだが、待っているのは元魔王だと思うと気が重くなる。

木曜日はそんなに忙しくないとはいえ、定時…はいつも通り無理だろう。まぁ無難に乗り切ろうと思うよ。

=== Who are you? ===


戸羽

主人公。推定20歳前後の人型魔族ヒューマノイドなサラリーマン。

学生時代より資金力がある以外、特に取り柄らしきものはない。少し運動不足。料理はあまりしない。


ウィル(ヴィルアード)

元魔王様。主人公にオヤジ狩りの不良、そして謎の外国人だと思われていた。

黄金色の目と白っぽい金髪で、頭に黒い角、背中には蝙蝠のような翼が生えている。

PCに興味津々。留守番なう。


狭川

戸羽(主人公)の同僚。パチスロが好きらしい。


中林

戸羽(主人公)の先輩。性格が悪いらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ