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第88話 プロト①


「…ん?ぅん…?」


(…どこだ?ここ?)

目覚めると知らない場所に居た。周りを見回せばどうやら畳の部屋の中央に寝かせられているようで入口の障子の間から見える景色でどうやら今は夜中だと理解する。

(何で…?あぁ、そうか)

ゆっくりと今までの事を思い出す。ペインの事、デュークの事、皆の事、自分自身の事…

(ティターニャ、大丈夫かな…、それに皆も)


「よぉ、目ぇ覚めたみたいだな」

「…ペイン?」


いきなり声をかけられ、隣をみると今まで誰も居なかったはずの場所に仮面の無いペインが立っていた。それを理解すると同時に唐突に意識がはっきりする。


「い、今は?それに皆は?あと此処は…」

「まぁ落ち着け、あれから丸二日経った。とりあえず全員無事だ。怪我人もお前以外はもう回復してる。そして此処はプロト、お前達が目指す三つ目の場所だ」

「そうか…良かった」


とりあえず全員無事な事に安堵する真琴。そんな彼の隣に腰を降ろしたペインは真琴を見ながら口を開く。


「今は丁度日付けが変わった辺りだ。他の奴らは皆寝てるだろう」

「そうか…」

「それより質問タイムは終わりか?なら今度はこっちの番だ。お前も色々混乱してるだろうからその辺の説明をしてやる…でもその前に、マコト、お前何で魔法使った?」

「いや、あの時はその…」

「違う、デュークの時は別に良い。むしろよくやったよ。だが日常的に使うなと言ったはずだ。例えば…身体強化とか」

「…」


黙り込む真琴にため息をつくペイン。


「はぁ…何故使った?違和感はあったはずだ」

「…」

「黙りかよ。ま、大方使ってみた身体強化が使えたから皆を助けられる…とか考えたんだろな」


嫌味ったらしく語るペインに言い返そうとしたが実際その通りなので何も言えない。結局出て来たのはどう聞いても負け惜しみの言葉だった。


「…悪いかよ」

「別に。あのダッドの息子ならそうするさ。それに使っちまったもんは今更言ってもしょうがない」

「そもそも何で使ったらダメなんだ?」

「ふむ、そうだな…」


これ以上は不利と悟り話題を変える真琴。そんな真琴に対してペインは少し考える様にしてから説明を始めた。


「まず第一に、これから話すのはあくまで俺が立てた仮説だと言うことを念頭に置いて聞いてくれ」

「…うん」

「俺は今のお前の魔力が壊れた蛇口の様になっていると考えている」

「壊れた、蛇口?」

「ああ、そもそもお前がそうなった原因は前の魔神化の影響なのは間違いない。その時お前は堕天する事で別次元に存在する膨大な力の塊と一時的に繋がっていた」

「…」


その言葉に少し振り返る。確かにあの時、無尽蔵に力が溢れてきた事は覚えている。


「力はそのままお前の身体から出ていくかと思っていたがどうやらお前の中で何かがあったようで上手く出れず、暴走するように辺りに無理巻き散らかしすようにして外に出てたんだ」

「…」

「その結果あそこで大量の魔物が発生した訳だがこれは今回重要じゃないから置いておく」


ワーダの事は優樹菜から聞いたのでなんとなくわかった。


「重要なのはお前の中で魔力が暴れた事だ。それも辺りに散らばるぐらい派手に、な」

「どういう事だ?」

「…お前達風に言うと、そうだな。例えば携帯の中身を思い浮かべてみろ。大量に配線がしてある奴だ。それが正常なら携帯は当然正常に動く。だが今のお前はその配線がぐちゃぐちゃに乱れて変な所に繋がったりしている状態、で分かるか?」

「まぁ…なんとなくは」


ペインの口から携帯何て単語が出て来た事に違和感を覚えるが、彼が一時的とは言え地球にいた事を考えると特におかしくないのでとりあえずスルーしておく。


「じゃあ今僕が魔法を使ったら」

「適当な配線をした回路に電気を流してマトモに動くか?大体ショートするだろ。それと同じだ、上手く魔力が巡らず、その状態で魔力を使えばどうなるか分からない」


(それでクラリッサ先生があれだけ使うなって言ってたのか)

これで一応話は繋がった。


「でも僕は普通に身体強化使えたしそこまで心配しなくても…」

「死にたいならそうしてろ、大体話はまだ終わってない。魔神化の件が終わった時点でお前の魔力は制御を失って壊れた蛇口みたいにダダ漏れの状態だったんだぞ?それを俺たちが無理矢理押さえ込んだってのにお前は…」

「…すみません」


聞けば聞くほどヤバかったらしい。いや本当にすみません…


「まぁそれは後だ。それにお前は重要な事を忘れている」

「…重要な事?」

「確かに漏れでる魔力は魔物を生み出すから危険だ。でもな、お前の魔力の道がぐちゃぐちゃって事は外だけじゃなく内側にも漏れてるって事になる」

「あ…」

「コントロール出来る分にはまだいいがあんな力の塊を扱える訳がない。そう判断して俺たちはお前が寝てる間に魔力の道を塞いで力が溢れないようにしてたんだ」

「ち、ちょっと待って!それだと僕がまだ」

「繋がってるさ、あんなもんと一時的とはいえ繋がったんだ。そうそう切れるもんじゃない」

「そんな…」


突然の事実に愕然とする真琴。しかし言われて見れば身体強化を使った時の魔力が湧き上がってくるような、コントロールしきれないあの感覚にも納得がいく。


「それを塞いだんだが、やはり無理だったようでな。お前が魔法を使った事で道が繋がってしまい再びあの力が流れ出したんだ」

「で、でももう1回塞げば…」

「そうそう何度も出来るもんじゃない。大体俺たちがやってるのは簡単に例えるとダムの外壁に空いた穴を木の板で塞いでいるようなものだ。いずれは水圧で無理矢理剥がされる」

「…じゃあ今回僕がしたのは自分から木の板を剥がしに行ったようなものだと」

「話が早くて助かる」


ま、あくまで仮説だがな。と言うペインだがその顔は半ば確信しており、真琴自身もこの話の矛盾点を見つける事が出来ない。


「…僕が魔法を使えない理由は分かった。なら今回のデュークは?あいつは何だ?僕の事を"イデア"って言ってたがあれは?」

「落ち着けって。時間はあるんだ、ちゃんと説明する」

「あ、ごめん…」


謝る真琴を見ながら再び考え込むように黙るペイン。


「これも仮説…って言いたいが今から言うのは残念な事に全て事実だ。いいな?」

「…うん」

「じゃあまず状況を整理しよう」


そう言ってペインは今までの事を整理する。


「1、お前がダッドとリカから産まれた」

「ちょっと待って、そんな前から?」

「重要な事だ。むしろここから全部が始まっている。…まぁいい、続けるぞ?

2、ダッドとリカ、俺、ミサキが地球からこっちに戻りお前だけが取り残される」

「…?」


何か引っかかる言い方だったが今は黙っておく。


「4、ミサキのみが再び戻りお前達が召喚のターゲットになるように仕掛ける。

5、計画通りにお前達は飛ばされ、途中であの龍族と悪魔のガキに会って内側に入れる。

6、ダンジョンで霊装を発動、サティバを殺す

7、その後に俺に半殺しにされる」

「…嫌味か?」

「事実だ。まぁその後も人族にけっこうやられてたみたいだがな。じゃ、続きだ

8、お前が魔力をコントロール出来るようになる。

9、俺達が帝国を襲撃し、お前を捕らえる。そしてこの時にお前の魔力が一時的に使えなくなる」


今となっては思い出したくない記憶が蘇る。


「10、お前が堕天し別次元の力と繋がる

11、一時的に塞いだが再び繋がる

…んで、今に繋がる。ここまではいいな?」


いいなも何も実際にその通りなので素直に頷く。


「なら、これらに何の関係があるか?」

「…分からない」

「正解はお前の魔力関係の部分が大きく動いた事だ」

「それが何でデュークと繋がるんだ?」

「お前は覚えてるか?あいつはお前の事を"イデア"じゃなくて"イデアの器"と呼んだんだ」


言われてみればそう呼ばれてたかもしれない。


「そもそものあいつらの目的、それはこの世界の存続だ」

「…は?」

「あいつら教団は過去に一度この世界を壊しかけている。その影響は今もなお響いている。だからそれを止める為にイデアの器…つまり真琴、お前が必要なんだ」

「ち、ちょっと待って。え?世界?どういう事?」


急に話のスケールが大きくなり慌てる真琴。


「あぁ悪い、話が飛びすぎたな。とりあえず教団の目的はこの世界の存続、ここまではいいか?」

「あ、ああ」

「そのために必要なのがイデアの器、つまりお前だ」

「そ、そうか」


よく分からないがとりあえず"そういう事"で納得しておく。


「じゃあそもそもイデアの器とは何なのか」

「そりゃ…何だろ?器?」

「そうだ、イデアとは教団が神と崇める存在の事。その器とはイデアをこの世界に顕現させるための触媒。詰まるところ巨大な魔力の受け皿の事だ」

「魔力…」

「お前も理解してるんだろ?自分の魔力保有量が他人とは桁違いに多い事」

「…」


実感は無いが周囲の反応から薄々それは分かっていた。


「お前の両親はリカとダッド、つまり巫女と防人だ。この一族はただでさえ他人よりも神に近い存在として魔力の保有量が多い。でもその中でもあの二人は別格だった。それはおいおい話すが、そんな二人の子供だ、魔力の保有量が桁違いなのは納得出来る。そしてそんなお前は教団にとっては喉から手が出る程に欲しい存在だってことだ」

「…今まで気にしてなかったけど僕の魔力ってそんなに多いの?」

「あー、一般人の魔力を一としよう。そうすると巫女と防人の一族はだいたい二十、ダッドとリカは百、んでお前が…だいたい二千前後って感じか?」

「は?」

「まー細かくは分からんがな。要は一般人なんか足下にも及ばないぐらいの魔力の保有量だって事だ」

「そ、そうなんだ…」


イマイチピンと来ないがとりあえず桁違いだって事は納得した。と、ここでそもそもの疑問を思い出す。


「でも神様ってそんな簡単に顕現されられるものなのか?」

「まぁ器さえ用意すれば後は簡単だ」


その器が中々無いんだけどな、と苦笑いをするペイン。しかし彼はそこから急に真面目な顔になる。


「で、ここからが問題なんだが…足りないんだよ」

「…何が?」

「お前程の保有量を持ってしてもイデアの足元にも及ばない」

「え?」

「さっきの基準で行くと例え一部とはいえこの世界に顕現させようとすると少なくとも四千は保有量がいる」

「そんなに…あれ?じゃあ何で教団は僕を…?」

「足らないとは言え現状一番保有量の多い奴だからだろうな。恐らく教団はとりあえずお前を力の塊とこの世界を繋ぐパイプにするつもりだ」

「パイプ…」

「その力を利用しつつ徐々にお前の保有量を増やし、最終的にイデア自体を顕現させるつもりなんだろう」

「なるほど」

「簡単に聞こえるかもしれないがこんなのやれば確実にお前は廃人になりマコトと言う人格は消えるだろうな」

「うぇ…」

「神の力とはそういうものだ。常人が手を出していい領域じゃない」


ペインの語る内容は聞けば聞くほど恐ろしい事だった。


「…あれ?なら今も影響が?」

「安心しろ。あの力は基本攻撃的思考にしか反応しない。覚えがあるだろ?いつも以上に感情的になる瞬間とか」

「…」


言われてみれば先の戦闘の時のアインとツヴァイに対する反応にも納得が出来る。


「それにこの部屋…と言うよりこの家は特別な結界が張ってあるからここに居る分には大丈夫なはずだ。ここまでで質問は?」


そう言われて改めて今までの会話を振り返る。

(まず僕が魔法が使えないのは、あの別次元の力が流れ込むから。で、教団はそれを利用して僕をその力を引き出すためのパイプにしようとしてる、か)

軽く整理してみても何ともスケールの大きい話だ。


「大丈夫、だけど。なら僕は何をすれば…?」


話を聞く限りこのままだと一生教団に狙われるだろう。それに対抗すればいずれ魔力の暴走で死ぬ、何もしなくても廃人になってアウト。

(…無理ゲーじゃん)


「安心しろ、対策はある。と言うよりタイミングが良かった」

「タイミング?」

「ああ、お前は今すぐ神樹へ、と言うよりヤシロへ行け。あそこなら何とかなる」

「そう、なのか?」

「あそこは魔力の扱いに関してはスペシャリストの集団だ。そこで徹底してお前の魔力の道を治してもらう。そしてお前がその膨大な魔力のコントロールを身につけたら…これ程強力な武器は無いと思わないか?」

「あ…」


確かに今まで押さえつける事ばかり考えてたが、逆にコントロール出来れば…無限に湧き上がる魔力が手に入る。つまり教団を撃退する事も可能になる。


「なるほど…でも、そんな上手くいく物なのか?」

「確かにこんな膨大な力の扱い、常識的に無理だ。まぁ無理にでもやってもらうがな」

「うーん…」


若干及び腰になる真琴にペインはニヤリと笑うと特大の爆弾を落とす。


「ならお前にいい情報をやろう。教団の規模は絶大だ。デュークみたいな奴がゴロゴロいる。それにお前達勇者の魔力保有量は平均的に五百ぐらい、そしてあの、ユキナ?だったか。あいつの保有量は千ぐらい…つまり現状この世界では二番目に多い事になる」

「…!」


それはつまり真琴がダメな場合自動的に優樹菜が標的になる事になる。それだけは確実に阻止しなければならない。


「それにお前の集団は全体的に魔力の保有量が多い奴らばかりだ…意味は分かるよな?」

「つまり…僕じゃなくても確実に教団は近くにいるだれかを狙う」

「お前の"大切"を失う事になるな」

「…全力でやってやる!」


それだけは絶対にダメだ。それを守るためなら魔力のコントロールだってなんだってやってやる。そう決意を固める真琴をペインはどこか楽しそうに見ていた。


「まぁ座りながら言われても残念感が漂うだけだがな」

「…言わないでくれ、これが限界なんだよ」


おちょくるように言ったペインの言葉に若干恥ずかしくなる真琴。目覚めてから何とか身体を起こす、腕を動かす、ぐらいは出来るのだが下半身は全然ダメだった。


「身体強化…」

「今までは偶然出来てたみたいだが、今使ったら死ぬぞ?てかそもそも結界内でお前は使えないしな」

「…やめとく」

「まぁ安心しろ、お前のそれの原因は魔力の道の一部が筋肉を邪魔しているからだ。つまりヤシロで元に戻せば身体は動くし五感も戻ってくる」

「そうか…」


その言葉に安堵する真琴。そこである疑問をぶつけてみる。


「ここまでしてもらっててあれだけどお前は何で僕に情報をくれたんだ?」


それが分からなかった。父さんとは仲いいかもしれないが、僕とは逆に何度か殺し合ってる感じだ。そんな奴に何で優しくするのかが分からない。


「あー、あれだ、謝罪の意味を込めてってやつだ」

「…謝罪?」

「俺の偽物のせいで随分迷惑かけたみたいだからな」

「偽物…あ、デュークか」

「ああ、そうだ」


そもそも今回ペインが来たのも偶然外交のために移動していた父さん達に会い、そこで今までの話を聞いたところ身に覚えのない事がある事に気付き、そこから教団がペインに姿を変えて動いて居ることが分かったらしい。ちなみに言うと僕のペイン絡みの事も半分程は教団の偽物がやった事らしい。


「…あれ?じゃあルナの故郷襲ったのも」

「多分教団だな。俺がやるメリットが無い。そもそもお前達が地球に行ったのは教団の目を誤魔化す為だったしな」

「…は?」

「色々情報が交錯してるみたいだがあれはそもそもお前の事を教団から隠す為の作戦だ。多分そこに魔族の移住計画とかが混じってややこしくなったんだろう。と言うかお前知らなかったのか?」

「いや、全く…」


初めて聞く話に驚く真琴にペインが面倒そうに後頭部をガリガリ搔く。


「まぁ、ならまだ色々勘違いしてるんだろ。説明してやろうか?」

「…うん」

「そうだな…」


それからペインは思い出すように目を瞑りながら語りだした。

真琴にとっての始まりとなる10年前の真実を。


いかがでしたか?

とりあえずデューク関係の説明をしました。本当はこの一話で説明回終わらせるはずが思った以上に多くて終わりませんでした…

続きは明日投稿できる、はず…きっと……頑張ります!


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