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第84話 チール④

チール完結です!


「…そろそろ戻りますか?」

「そうだね」


あれから二人で他愛のない話をして笑いあっていたがそろそろ帰らなければならない。

(そろそろ大丈夫かな?)

試しに魔力を流してみるとちゃんと流れたので身体強化を発動させて立ち上がる。そんな真琴をティターニャがじっと見つめていた。


「ん?どうかした?」

「い、いえ。ただ、大丈夫かな?と」

「…ああ、これか。そういえばティターニャはなんで身体強化の事分かったの?」


そういえばまだ何故ティターニャが気付いたのか聞いてなかったのでその事について聞いてみると


「いつものマコトの魔力の流れ方ではなかったので」


との答えが返ってきた。


「魔力の流れ?」

「はい、私達精霊は魔力を一筋の道として感じる事が出来ます。それが魔力の流れです」

「なるほど…それで異常に気付いたと?」

「はい、今の真琴はなんと言うか、その魔力を制御しきれていないような…」


若干言い難そうにティターニャが話す。


「実際マコトはどうなんですか?」

「うーん、まぁその、ティターニャの言うとうりなんだけど…これってアルンとクロにも影響あったりするのかな?」

「…いえ、激しく魔力を消費するような…例えば戦闘ですね。そういった事をしない限り影響はありません」

「アルンとクロは気付いてる?」

「恐らく知らないでしょう。私レベルで魔力が扱えなければマコトの変化には気づけません」


そう言いながらちょっとドヤ顔するティターニャ。

(うん、可愛い…じゃなくてとりあえず一安心、かな?)

とりあえずあの二人に心配をかけずに済んだことに安心する。


「しかし、本当に大丈夫なのですか?」

「ん?ああ、ちょっと制御が大変だけどそこまでじゃないから大丈夫だよ」

「なら、いいのですが…」


未だ納得しきれていないようだが大分日も暮れてきたのでティターニャを促して立ち上がる。


「でも何かあったらすぐに言ってくださいね。どんな些細な事でも後々大事になるかもしれませし」

「うん、了解です」

「あと極力身体強化は使わない事。それと無茶な動きもしないでください。あとそれと…」

「ストップ!ティターニャストーップ!そ、そんな一気に決めなくても追追、ね?」


一気にまくし立てるティターニャに慌ててストップをかける。このままだと立ち歩くの禁止とか言われかねない。


「まぁ…そうですか」

「そうそう。時間はいっぱいあるんだしさ」

「そ、そうですよね」


しかしそこで何故か顔を赤くするティターニャ。


「これからも、ずっと一緒に…」

「あ…」


ティターニャの呟いたその一言に唐突に先程の会話がフラッシュバックしてお互い顔を赤くして黙る。

(い、いやいやいや。落ち着け工藤真琴。その前にちゃんと伝えるべき事を伝える。ちゃんとはっきり言うんだ。よし)

そう、あそこまで言って貰ったティターニャにちゃんと伝えなければいけない。あの事を。


「マコト?」

「…ティターニャ、その、ずっと一緒にって言った後に凄く申し訳無いんだけど…僕は優樹菜と「知ってます」付き合っ…て、え?」

「はい、だから知ってます。マコトがユキナさんと付き合っている事ですよね?」

「はい、そうで…え?」


勇気を出して伝えようとしたらまさかの相手は知っていた、と。

(いやいやいやちょっと待て。落ち着け。まずなんで知っている?あと知っていたならなんで"一緒に"なんて言ったんだ?)

またも混乱する真琴。そんな真琴をおかしそうに見ながらティターニャが順を追って説明する。


「私が知っているのはユキナさんから直接聞いたからです」

「…え?」

「マコトがまだ眠っている時にあの時マコトの内側で何があったのかを私とユイさんとユウイチさんにユキナさんが説明していて、その流れで、その」

「…何やってんだ優樹菜は」


思わず頭を抱える真琴。

(いや別にいいけど…いいけどさぁ)


「いやでも、ならなんで…」

「突然ですがマコトに少々授業を」

「授業?」


それから数十分。僕はこの世界の結婚事情についてティターニャから授業を受けた。

(一夫多妻が基本って…なんだよそのご都合主義展開は)

正直言うと純粋に喜んでしまう。いや、その…ね?僕だって普通の男子高校生だしその、ハーレムとか夢見ちゃうじゃん。ね?


と、どこの誰に向けてかよく分からない言い訳をしながらもちょっと落ち着いてこの状況について考える。


「と、言う事なんですけど」

「え、えーと、うん。とりあえず状況は理解した。それで…えっと、優樹菜はこの事知ってるの?」

「はい」

「うぇ!?」

「ついでに私の気持ちもユキナさんには伝えてあります」

「…それで、優樹菜は何て?」

「"全部真琴君に任せます"だそうです」

「そう、か…」


そう言って少し考える真琴を見ながらティターニャは優樹菜に改めて思いを告げた時の事を思い出す。



「…だから私は旦那様と一緒に居たいと思います」

「そう、ですか」

「…やはり、嫌ですか?」

「それは、ちょっと分かりません」

「え?」

「確かに嫌だとは思います。でも最後に決めるのは真琴君自身です。私は真琴君がどんな答えを出しても受け入れるつもりです。真琴君が私だけを選んでくれたならとても嬉しいし、例え私以外も選んだとしても私はその人達と協力して彼を支えられるような存在になりたいと思います」


まぁちょっと嫉妬はしますけどね、そう言って微笑む彼女の心は誰よりも強いと感じた。だから自分も彼女と一緒に彼を支えたいとより強く感じたのだ。




「ティターニャ」

「は、はい!」


回想していると唐突に呼ばれて慌てて返事をすると不思議そうな顔をする真琴と目が合う。


「ど、どうしましたか?」

「ああいや、その、正直まだ色々と混乱していて上手く伝えられないかもしれないけど僕の気持ちを聞いてほしい」

「…はい」

「さっきも言ったけど僕は今までティターニャを母さんみたいな人だと思っていた。多分無意識に母親って言うものを求めていたからだと思う。でもそれは違うって、ただ自分の理想を押し付けているだけだって分かった。でもそうしたらティターニャとどう接していいのか分からなくなってきた」


そこまで言うとティターニャは悲しそうに目を伏せた。


「なら、やはり私は」

「いや、違う。多分今のまま無理に答えても中途半端なままだと思う。だから、その、少し時間をくれないか?この旅の間にもう一度ティターニャとしっかり向き合って、気持ちを整理したい。そしてこの旅が終わったら…今度は僕から気持ちを伝えさせて欲しい」

「…!」

「その時の僕がどんな答えを出すのかは分からないけど、絶対に逃げずに君に気持ちを伝えるから、この旅の間だけ、待っていてほしい」

「マ、コト…」

「だめ、かな?」

「いいに決まってます!」「うぉっ!?」


感極まって思わず真琴の手を掴んでしまうティターニャ。


「…正直、また逃げられるかもしれないと思っていたので、マコトが私と向き合ってくれるだけでも凄く嬉しいです」

「う…でもごめんね。こんな待たせるようなこと言って」

「いえ、大丈夫です。私はいつまでも待ちますから」

「えっと、その…ありがとう」

「ただ、待たせるからにはちゃんと見ていて下さい。…期待してますからね?」


そう言って小悪魔めいた微笑みを浮かべる彼女はどこか楽しそうに笑っていた。





「…もう夜なんだね」

「そろそろ帰りますか」

「そうだね」


気付けば日は落ちて辺りはすっかり暗くなっている。裏庭にはいつの間にか松明が燃えていた。


「にしても綺麗な場所だね、ここ」

「そうですね」

「ティターニャはどうしてここを?」

「実はミラさんに教えて貰ったんだです」

「あ、だから朝」

「はい、今回の事を相談したので」

「それでミラさんが居たのか」


今まで疑問だった事がやっと解決された。

そのまま二人で寄り添うように手を繋いてしばし裏庭を眺める。


「…行こうか」「はい」


やがてどちらともなく歩き出す。そんな二人からは来た時のようなどこかぎこちない感じは消え、出来たばかりの恋人同士のようなどこか甘い雰囲気が漂っていた。


未だ賑わっている大通りを二人、手を繋いで歩く。

街の中心にある領主館前の広場では松明が煌々と灯され、オーケストラのような集団が楽器を奏でていた。その周りではみんなが自由に飲み、歌い、踊っている。彼ら彼女らの顔には例外なく笑顔が浮かんでいた。


そんな光景を通路の端から眺める真琴とティターニャ。


「ティターニャ」

「はい」

「踊ろう」

「…はい!」


真琴が手を差し出すとティターニャは嬉しそうに己の手を重ねた。二人はそのまま、手を繋いで踊る人々の波に加わる。周りの例に漏れず、踊りながら笑みを浮かべるティターニャにつられて真琴も自然と顔がほころぶ。

形式も何も無く、ただ心のままに踊る二人。それはまるで何の枷も無く自由に大空を飛ぶ鳥のようだった。





そんな二人を影から見守るフードを被った5人の人影。

言うまでもなく優樹菜達だ。アルン達年少組は夜遅いという理由で領主館に残して優樹菜達で真琴とティターニャを探していたのだ。

…もっとも悠一、優衣、リオンの三人は心配し過ぎだ、と始終呆れ気味だが。


結局見つからず諦めて帰ろうとした所、偶然真琴とティターニャが踊っているのを見つけたのだ。


「ほら、だから心配しなくてもいいって言ったのよ」

「そうだけど…」

「けど?」

「…ちょっと、悔しいな。真琴君をあんなに笑顔に出来るのは私だけだと思ってた」

「それは驕りだな。…でも、ちょっと分かる」

「ルーン?」

「相手を自分の思いどうりにできる何ていうのはただの驕りだ。でも好きな人にとっての特別な存在で居たいと思うのは当然の事、だと思う」

「そっか…難しいね」

「そうだな」


そう言いながら真琴達を見つめる彼女達が何を思っているのかは誰にも分からない。そんな二人に悠一と優衣、リオンは苦笑して肩をすくめた。


様々な思いを抱えながらも踊りは続く。








なんの憂いもなく踊る彼らの上空では、純白の羽を生やした天使が一人、静かに佇んでいた。

いかがでしたか?

一応これでチール編は終わりです。


なんと言うかティターニャと優樹菜では真琴を見る角度が違うんだと思います。優樹菜は地球からの幼なじみの工藤真琴として見ていて、ティターニャは異世界から来た憧れのマコトを見ている、と言った感じです。…説明下手ですみません

それを伝えたくて書いたのがチール編です。少しでも共感してもらえたら嬉しいです。


さて、次回は次の領地に!…行く前に事件起こります。久しぶりにあいつ出します。


よろしくお願いしますm(_ _)m

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