第82話 チール②
「お父さん、お父さん!あれ何!?」
「えーと、それはイヤリングだね」
「いやりんぐ?」
「こうやって耳につけるんだよ」
「く、くすぐったい…でもこれキレイ」
「兄さんあの服ステキです!」
「あ、いいね。色がルナの髪と同じだ。きっと良く似合うよ」
「えへへ」
「横の服はクロに似合いそうだね」
「わ、私は別に…あ、でもかわいい」
などなど…
現在真琴達一行は露店の一つの比較的服屋が集中している場所に来ていた。ここに来てから女性陣のテンションは上がりっぱなしでさっきから何かを見つける度にあーだこーだと言い合っている。
「ゆ、優衣ちゃん、ルーン恥ずかしいよこれ…」
「何言ってんの?こういう時こそ度胸よ度胸!」
「う、うー…」
「大丈夫!ユキナは綺麗だから!」
そして現在、真琴達の目の前にある垂れ幕の向こうでは優樹菜達の生着替えが…失礼、試着が行われている。「あんた達を見直させてやるわ!」などと言い出した優衣とルーンが優樹菜を巻き込んで服を選びそれを試着して僕達に見せてくれるようだ。
「…なぁ、どうなると思う?」
「うーん、なんだかんだ言っても結局いつもと似た服装になりそう」
「いや、でも姉さんとかこういう時に限ってすごい服選びそう…」
「そしてそれに優衣が乗っかり…」
「優樹菜が強制的に巻き込まれる…」
(((…どうしよう、簡単に想像出来てしまう)))
その状況は簡単に想像出来るが結局どうなるか分からない結論に達する男性陣だった。
「ま、いいけどさ」
「今はとりあえず…」
「「「早くしてくれ…」」」
いや分かってる、女性の着替えとかって長いよね。それは分かってるよ?だけどさ…さすがに女性服売り場で、しかも試着室の前で男三人で固まってるって言うのは…ねぇ?
要は先程から周りの視線が気になって仕方がないのである。正直アルン達が居なかったらもっとまずいことになっていただろう。うん。警備員待ったなしである。
「悠一?ちゃんと居る?」
「おう、3人とも居るぞ?」
「よーし、覚悟はいいわね?いくよー…オープン!」
「「「おぉー…」」」
優衣の威勢のいい声と共に開かれたカーテン。その先に居た三人の格好に真琴達…ではなく店内に居た他の人達が感嘆の声をあげた。
そして肝心の真琴達は…完全に固まっていた。
「へ、変、かな?」
「…あー」
「えー、あの…うん」
「よく似合ってるよ、うん」
「やったね!」
「作戦成功だな!」
そんな男性陣を見てハイタッチを交わすルーンと優衣。
予想外。というか彼女達の行動が完全に予想の斜め上を行っていた。まず優衣とルーンがロングスカートの比較的大人しい感じの服を来ていた事。伊達眼鏡や帽子を被ることでまるで文学少女のような印象を受け、普段の彼女達とのギャップもあってとても可愛い。
そして優樹菜。彼女が一番予想外だった。
「え、えーと真琴君?」
「…え、えー」
「変、だったかな?ミニスカート」
「いや良く似合ってるよ!うん!」
「そう?良かった」
そう言って微笑む優樹菜。
そう、優樹菜はミニスカートを穿いていたのだ。優衣達とは逆に普段は大人しい感じの服しか着ないが、今回は黒いミニスカートに白の肩出しブラウスの様なものを着て、髪をポニーテールでまとめていたので普段とは真反対の活発な印象を受ける。
「なによ、もっと言ってやりなさいよ」
「うぇ!?いや、その…」
「優衣、辞めてやれ。そろそろ真琴がフリーズする」
「そういう悠一は彼女に何か無いの?」
「あー、いやその…似合ってるよ。うん」
「んー、50点」
「えー」
と、途中から悠一と優衣がいちゃつき出したので優樹菜に目線で合図しそっとその場を離れる。
「いやでも珍しいよね、優樹菜がミニスカートなんて」
「こ、これは優衣ちゃんとルーンが…無理矢理」
「あー…でも、うん。その服も似合ってるよ」
「そ、そうかな?ちょっと脚が落ち着かないけど」
「うん、可愛い可愛い」
「も、もう!真琴君!」
「ん!んんっ!」
「ひぁっ!?」「おっと」
危うく二人の世界に入りかけたところをルーンが横から咳払いをする事で防ぐ。見るとすごく不機嫌なルーンとその後ろで苦笑いをしているリオンが居た。
「全く…マコトといいユキナといい、ユイもユウイチもそうだがお前達はもう少し周りの目を気にした方がいい」
「いや、うん。すみません」
「分かればいい。そ、それでだな…その、私はどうだろうか?」
「ん?」
「だ、だから!私の格好だ!」
そう言われて改めてルーンの姿を見る。
「うーん、ルーンは普段もっと動きやすそうな服着てるけどそういう大人しい感じの服も似合うんだね。色も落ち着いた感じで素敵だしその帽子とかすごくいいと思うよ」
「そ、そうか?それは…良かった」
「え、ちょっとルーン?」
その言葉に顔を赤くして俯くルーンとそれを見て何か変なことを言ったかと慌てる真琴。そんな二人を見て
「何で優樹菜以外ならああスラスラ褒めれるのか」
「まぁ…真琴だから」
「「はぁ…」」
「優樹菜も何か言ってやりなさいよ」
「あはは…でも真琴君はずっとあんなんだし…」
「はぁ…あの彼氏にしてこの彼女あり、か」
「だな」
みたいなやり取りがあったとか無かったとか。
その後、再び服を選び出した女性陣から一旦離れ男三人は店の外に出る。外はすっかり太陽も上がりお昼時だ。
「…にしても完全に予想外だったな」
「うん。まさか姉さんがあんな大人しい服着るなんて」
「優衣も普段はもっと動きやすいやつしか着ないのにな」
「「でもな…」」
「な、なんで二人ともこっち見るの?」
リオンと悠一は隣にいた真琴を見る。
「いやユキナさんが」
「一番予想外と言うか何というか」
「あーいや、うん。言いたい事は分かる」
「「「あれはもう別人だ」」」
大体彼女達は多分忘れているだろうが全員髪の色が変わっているのでそこであんな服を着たらもう別人としか言いようが無い。
「まぁでも可愛かったけどな」
「悠一、惚気けるなら他所でやれ」
「あれ?ならマコトはユキナさんを見ても可愛く無かったと?」
「…リオン、謝るからそんな目で見ないで。割とキズつく」
などなど男三人の会話は続く。
「てかとりあえずうちの女性陣はもう少し危機感を持つべきだと思うね」
「ユウイチ、その心は?」
「いや単純に皆美人のくせに脇が甘いというか何というか」
「あーなるほど」
「ここに来るまでもすごく視線集めたからね」
実際に移動の時も食事の時も真琴達はかなり目立っていた。尚、これはみんな女性陣が美人だからと考える彼らもかなり女性達の視線を集めていた事に全く気付かないのはお約束だろう。
そんな感じでダラダラと話していると年少組と一緒にいたティターニャが出てきた。
「…ティターニャ、大丈夫?」
「旦那様は先程からそればかりですね」
「いや、でも明らかに元気が」
「それを言うなら旦那様の方でしょ?」
「え?」
一瞬何を言われたのか分からず首を傾げる真琴。そんな真琴に悲しそうな顔を向けるといきなり真琴の腕を掴んだ。
「ユウイチさん、リオンさん。すみませんが旦那様を少しお借りしますね」
「え?あの…」
「ユキナさん達には夜までには戻りますと伝えて下さい」
「え?え?ちょ…」
未だ状況が理解出来ずに混乱する真琴達。そんな男性陣を無視してティターニャは真琴を引きずって行く。
「え?あ、あの、ごめん、夜までには戻る!」
「お、え?真琴!?」
「…行ってしまいましたね」
「…どうするよ?」
「ありのまま伝えるしかないでしょ」
「「…はぁ」」
訳が分からず固まるアルン、クロ、ルナの3人。とりあえず面倒事が増えた事は分かる悠一、リオンの2人。
えーと、どうしよ?
その時5人が思った事は恐らくこれだろう。
「え!?てか本当にどうすんの?」
「…ユウイチ」
「え?俺!?これ俺がやんの!?」
いかがでしたか?
次回はティターニャと真琴メインの話になる予定です。
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