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第81話 チール①

お久しぶりです!


「やっぱり服は何着か欲しいよねー」

「確かに。さすがにこうも同じ服では…」

「だよね。あ、あとお菓子食べたいな」

「お菓子!?」

「さすがはアルンちゃん…」

「ふむ…お菓子か」

「なんか有名なのある?」

「そういえば…」


などなど…

出発して早四時間、話題が尽きること無く女性陣の会話は続く。

コロコロと変わる話題について行く事を早々に諦めた男性陣はただボーっと座っているだけだ。しかし窓から見える景色だけは猛烈な勢いで移り変わっている。つまり現在馬車はかなりの速度で走っている。

(なんでこうなってるんだっけ?)


思い返す事数時間前。目立つとダメなので早朝にコルンを出る真琴達は馬車前でジョゼフに挨拶をていた。


「お世話になりました」

「ああ。マコト、いつでも相談に来い。俺はお前の答えを楽しみにしてる」

「…はい」


ここまでは良かった。しかし去り際のジョゼフの


「そういえば次はチールだろ?急いだら間に合うんじゃないか?」

「間に合う?」

「ま、まさか!」


この一言。訳が分からず首を傾げる真琴だがその横でルーンが目を輝かせて異常な反応を示す。


「間に合うのか!?」

「あ、ああ確か明後日だったからな」

「マコト!すぐに行くぞ!こんな所でグズグズしていられない!」

「わ、わかったから一旦落ち着こう、ルーン」

「はぁ…姉さん」


訳が分からず混乱しながら真琴達は慌ただしくコルンを後にした。

こうして今に至る。




「でもそんなに大きなお祭りなんだね」

「正確には大市場らしいがな。もともとチールは交易都市としてかなり栄えている場所なんだ。そこで半年に一回、一日だけ開催される大市場というのがある。そこでは東西南北様々な地方から沢山の商人が集まってきて出店を開くんだ」

「へー。そんなに大規模なの?」

「なんせ国を挙げての一大企画だからな。普段ではお目にかかれないような珍しい物もあるし、通常では手が出ないような高級品も交渉次第では格安で入手出来たりもする」

「まさに大市場ね」


という事らしい。

要するに第二目的地の交易都市チールの大市場に参加するためにこうして休憩を取ること無く急いでいるのである。


「でもこんなに急ぐ必要があるのか?」

「チールはコルンから普通に行くと二日半ぐらいかかるからね。今回は休憩が必要無い精霊の馬車だからこの勢いで行くと明日の午前中にはチールに着くと思う」

「ほー」


悠一の質問にリオンは丁寧に説明する。

(これだけ走っても疲れないとか…さすが異世界。もういいや、寝よ)

早々に思考を放棄し眠気に身を委ねる真琴だった。





「…と君、真琴君!」

「う…ぅん?」

「あ、起きた?そろそろ着くよ?」

「あぁ、もうそんなに?」


あれから何度か起きたり寝たり(ほぼ寝てた気がする…)しているとどうやら目的地に着いたようだ。

身体を起こすと悠一と目が合った。


「お、起きたか?」

「おはよ悠一」

「と言ってももう昼前だけどな」

「じゃあ間に合ったんだ」

「みたいだな」


外に目を向けると視界の先にチールが見えた。どうやらコルンとは違い城壁に囲まれておらず、中心に向かう程に背の高い建物が増えているようだ。


「マコト!マコト!あそこがチールだよね!」

「ああ、どうやらそうみたいだね」

「大市場やってるかな?」

「日にちが間違ってなかったら丁度今日だね」

「よしっ!」


そんな掛け声とともに満面の笑みでガッツポーズをするアルン。よっぽど楽しみなのか先程からアルンは上機嫌ではしゃいでいる。何も言わないがクロとルナもソワソワして落ち着かない様子だ。


「うん、どうやら大市場に間に合ったようだね」

「リオン、どうして分かるの?」

「関所に警備隊が居ないでしょ?チールは大市場の時だけは人の出入りが激しくて一々対応してられないって理由で国境警備隊が居なくなるんだ」

「え?でもそれだと犯罪とかヤバくない?」

「いや全然。国境警備隊が居ない代わりに中の警備はいつも以上に厳重になってるからね。ちょっとでも犯罪したら即逮捕、だよ」

「なるほど」


リオンの説明に納得する一同。確かに合理的な対策だ。


「まぁだから僕達もコルンの時みたいにしないで堂々と入れる訳だ」

「だが済まないがミラ姉さんに会うまでは馬車から降りれない。少しだけ我慢してくれ」


ルーンが補足しつつ申し訳なさそうに謝る。


「まあ無駄に騒がれるよりマシだよ。アルンもちょっと我慢だね」

「う、うん…」

「大人しくしてたらあとでお菓子買ってあげよう」

「っ!わ、わかった!我慢する!」

「よし、いい子だ。もちろんクロとルナもね」

「わ、私は別に」「に、兄さんがどうしてもって言うなら…その」


真琴の言葉にクロとルナは顔を背けるが赤くなった耳と若干上がった口角が全てを表していた。そんな微笑ましい光景を見ながら馬車はついにチールへと入り、馬車はそのまま真っ直ぐ領主の館へと向かう。


「止まれ!領主館へ何用か!?」

「…どうするの?」


当然領主館の手前で止められる。しかしそこはコルンと違い人の往来のある場所だ。迂闊に外には出られない。


「まぁ大市場だからね。これで大丈夫」

「ああ、なるほど」


しかし真琴の疑問にリオンは得意気にオペラマスクの様なものを着けて立ち上がった。確かにそれならば一目でわかる人は居ないだろう。そのままリオンは外に出て何事か話すと戻って来る。


「どうだった?」

「コルンと同じ。そのまま入れそうだ」


リオンの言葉通り馬車はそのまま領主館の裏側まで案内される。馬車が止まると扉がノックされた。


「ここならば誰も来ませんので、どうぞ」

「ありがとう」


その言葉を受けてコルンの時の様に皆が降りる。周りには兵士が3名程居るだけだった。

(さすがに今回は無い…よね?)

何となく周りを警戒してしまう真琴。まぁこれはコルンの一件を考えると仕方のない事だろう。するとそんな真琴の耳に誰かが駆けてくる足音が聞こえた。


「ルーン!リオン!無事だったか!?」

「ミラ姉さん!」「お久しぶりです」


乱暴に扉を開けて現れたのは赤毛の短髪ですらりとした長身の女性だった。何となく海賊の女船長のようなイメージが湧いてしまう。先程の言動から彼女がチール領主のミラさんだろう。そのまま彼女はルーンとリオンを抱きしめた。


「全くお前達は…本当に」

「姉さん…」

「私がどれだけ心配したと思っている!」

「す、すみません…」

「はぁ…まぁ、こうしてお前らが無事だっただけでも本当に良かったよ」

「姉さん…ありがとうございます」


感動の再開の場面に何となくいたたまれなくなる真琴達。


「それでお前達は「あ、あの…」…ん?なん、え?王女様?」

「あ、えっと」

「し、失礼しました!まさか王女様が居るとは知らず」

「あの、だから」


頑張ってティターニャが声をかけたが相手は彼女の正体に気付くとかしこまった感じで頭を下げ、逆にティターニャが困惑する。


「ま、まぁ二人共とりあえず落ち着きましょう」

「ん?なんだお前は?」「旦那様…」


見かねて声をかけるとミラさんから睨まれティターニャからは嬉しい顔で見られた。そんな対照的な二人に挟まれ、何とも居心地の悪い中で自己紹介を含めて事情を簡単に説明する。


「ふむ、なるほど。つまりお前達があの噂の勇者達か」

「まぁそういう事です」

「ミラ姉さん、その…」

「ん?ああ、そうだな。立ち話もなんだ、中に入ってくれ」


そのままミラに続いて裏口から領主館に入る。


「…ん?」

「ミラ姉さんどうかした?」

「…いや、別に。行くぞ」

「…?わかった」


その後、ミラの案内で応接間のような場所に通された。その場で改めて自己紹介とこれまでの経緯を説明した。


「なるほど…それでお前達は神樹に向けて旅をしていると」

「そういう事です」

「…」


(な、なんだろう…めっちゃ見られてる)

何故か先程からミラは真琴をじっと見つめている。


「あ、あの」

「ああ済まない。それで?お前達はいつまでチールに居るんだ?」

「明日の朝には出発するつもりです」

「なるほど、大市場の後なら行商人に混じって出立すれば目立たないからな…そういえばお前達は昨日の朝コルンを出たと言ったな?」

「え、ええ。そうですけど」

「ほー」


突然の話題に戸惑いつつも答えると何故か横のルーンが気まずそうに顔を逸らす。


「ルーン、こっち来なさい」

「ひっ!」

「聞こえなかったの?…こっち来なさい?」


ミラはとても丁寧な口調とその顔に見る者を魅了するようなとても素敵な笑顔が浮かべてルーンを呼ぶ。

…ただしルーンを呼ぶ声はまるで地獄から響くように冷たいものだったが。その声に青ざめた顔でルーンはミラの前に行く。


「ねぇルーン、私は記憶力には多少の自信があるの。そしてコルンからチールまでは普通なら二日半かかるはずなのよ。私の記憶では、ね?」

「は、はいっ!」

「それをあなた達は、一日半?おかしいわね?そう思わない?」

「わ、私もそう思います!」


(僕もそう思います!)

気分はまるで軍隊だ。自然と全員が居住まいを正している。いつもはふざけるアルンでさえピシッと背筋が伸びている。


「そうよね、記憶違いじゃないのよね?ならあなたは…どうやって来たの?」

「い、いやそれは…」

「ルーン?」

「はいっ!実は…」


その後ルーンはここまでの経緯を洗いざらい話した。その時彼女が涙目だったのは気の所為だろう。うん。


「…そう」

「ひっ」

「ルーン、私教えたわよね?他所の人に迷惑かけないって」

「いやですが」

「…ん?」

「イエ、ナンデモナイデス」

「そう」


もはや蛇に睨まれた蛙状態だった。そしてルーンの言葉にミラは立ち上がると…この先は彼女の名誉の為に伏せておこう。

ただ一言…拳骨ってガチでやるとあんなえげつない音が鳴るんだ、と真琴達は新しい事実を発見した。





「くっそ…あの怪力女め」

「ま、まぁ姉さん」

「ははは…」


ところ変わって街中。現在真琴達は大通を歩いていた。


あれから10分程ミラの説教(物理)が続いたところでミラはため息をついた。


「まぁいい、お前達は大市場に参加するために来たんだろ?なら行ってくると良い」

「え?いいんですか?」


ちょっとルーンの言葉遣いがおかしいのは気の所為だろうか。


「なに、今は人が溢れかえっているからな。髪色変えてローブでも被っておけば多少目立ったとしても正体がバレる事は無いだろう」

「なるほど」

「細かい事はまた夜にでも聞こう。とりあえずそのお嬢さん達を早く連れてってあげな」

「う…」「…」


ミラは最後にアルン達を見てウインクした。やはり早く行きたいのか先程から聞こえてくる街の喧騒にアルン達がそわそわしていたのを見られてたようだ。ミラの気遣いに感謝して真琴達は街に行く準備(とは言え髪色を変えることぐらいだが)をする。

ちなみに僕の髪は白、悠一がオレンジ、優樹菜が金、優衣は濃い青色になっている。


「ヤバい…なんか別人みたい」

「これでおかしくないのがこの世界なんだ」

「なんか改めて異世界って感じね」

「なんか不思議…」


そんな感じで盛り上がる地球組。


「マコト、早く行くぞ」

「はいはい」


待ちきれないとばかりに急ぐルーン達に苦笑しつつ真琴達も続く。


「あの…すみません。先に行っててもらえますか?」

「あれ?ティターニャは?」

「後からすぐ追いつきますので」

「そう?大丈夫?」

「はい」

「…なら先に行ってるね」


何やらミラに話があるようでティターニャだけは残りあとの九人で領主館から出ていく。

そして現在に至る。


「にしてもなんか、改めてすごい規模ね」

「ねー」


優衣の呟きに優樹菜が同意する。実際真琴も同感だ。街に出て見て初めに驚いたのは人通りの多さだ。どこを見ても人、人、人…。この世界こんなに人居たんだ、と思わず感心してしまう程に人が居た。

チールは半円のような形の領地で丁度半円の中心に領主館がありそこから北、東、南の三方に大通が通っている。道幅はそれぞれ馬車が3台は並べれそうな程広いのだが今は大市場という事もあって道の左右に所狭しと出店が出ている。その間を絶え間なく人が歩き回っていた。


「さて、どこから回ろうか」

「お腹減ったー」

「そうだね、とりあえず何か食べれる所を…」

「あ、ならおすすめの場所が…」


そんな感じで話し合っているとティターニャが合流した。


「すみません。遅くなりました」

「全然。まだどうしようか話し合ってる所だよ。ところでティターニャは大丈夫だった?」

「ええ、大丈夫です。ですが悩んでるのでしたら西通りはどうでしょう?」

「西通り?…あ、確かにあそこには美味しいお店があるな。そこでいいか?」

「もうここはルーンとリオンに任せるよ」

「よし、なら行こう」


ルーンの言葉にほっと息をつくティターニャ。どうやら気付いたのは真琴だけのようで一行は目的地に向けて歩き出していた。

「…」

しかしどうしても先程のやり取りに疑問を覚える真琴。

(なんだろ?焦ってる?と言うより…うーん。そんなに西通りにこだわる何かがあるのか?)


「旦那様?」

「ティターニャ、本当に大丈夫?」

「え、ええ。私は大丈夫ですよ。…それよりも旦那様の方が」

「え?何て?」

「いえ、何でもありません。さ、行きましょう」

「あ、うん」


やや強引な切り上げに戸惑いつつも真琴も歩き出した。

ちょっとチールでやりたい事が多すぎて…切り方が大分雑ですみませんm(_ _)m

次回はファッションショー的なのやります(謎)

よろしくお願いします!

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