バレンタイン番外編1
お久しぶりです!
バレンタインという事で書いてみました!
お正月番外編と同じで真琴達は地球に帰って来ています。アルンやクロ、ルーン達も一緒に居ます。
それらを踏まえた上でお読みください
「ユキナ、ばれんたいんとは何なのだ?」
「んー?それはね……待って、今日何日?」
「えーと、2月12日だな」
「……」
その後優樹菜は事情の知らないルーンを連れて買い出しに出かけたのだった。
そして次の日。
「…で、こうなった訳だ」
「すみません…」
「今から何するの?」
「知らないけどお菓子作るみたいよ?」
「お菓子!」
「ティターニャさん、これは一体…?」
「私も何が何だか…ルーンさん?」
「いや、私もただ皆を集めろとしか」
その日の午前、優樹菜宅(例によって普通ではありえないぐらいに広いキッチン)には優樹菜、優衣の他にアルン、クロ、ルナ、ティターニャ、ルーンが集まっていた。いや、正確には日付けを知った優樹菜が招集をかけたのだ。
事情を知っている優衣は苦笑いだがそれ以外の人は未だに不思議な顔をしている。(アルンだけはお菓子と聞いて目を輝かせてるが)
「ユキナ、これから何するの?」
「ふっふっふ、今から皆でチョコレートのお菓子を作ります」
「何故チョコレートなのだ?」
「バレンタインだからね」
「「「…??」」」
未だ地球の風習に慣れない異世界の人達は訳が分からず固まる。そんな様子に笑いながら優樹菜はバレンタインについて説明する。
「バレンタインって言うのはね、大好きって気持ちをチョコレートに込めて男の人に渡すイベントなんだよ」
「えーと?」
「んー、アルンちゃんは真琴君の事好き?」
「大好き!」
「そういう気持ちをチョコレートと一緒に伝えるの」
その後10分ほどかけて異世界組にバレンタインとは何たるかを説明した。結果何となく分かってもらったようだ。
「そういえばマコトやユウイチは?」
「あいつらは何か用事があるって…」
優衣は何故かそこで不自然に言葉を切り優樹菜を見る。その視線で全てを悟り、何故か落ち込む優樹菜。雰囲気を読んでルーンが話題を変えようとする。
しかし
「そういえばユキナ、去年は何をしたのだ?」
「え…」
「あー…」
ルーンの何気ないこの一言に優衣と優樹菜は遠い目をする。
「ど、どうしたのだ!?」
「…ルーンって真琴君の料理食べた事あるよね?」
「あ、ああ。何度かご馳走になってるが…?とても美味しいぞ」
「そう!美味しいの!高級とかじゃなくてすごく優しい味で口に合うの!」
「そ、そうだな…」
突如始まった関係ない(と思われる)会話にルーンはしどろもどろになる。その時、見かねた優衣がストップをかけた。
「はいはい優樹菜ストップ。皆困ってるわよ」
「…はっ!?ご、ごめんなさい、つい…」
「いや、マコトの料理が美味しいのは分かったがそれが一体?」
「あれは去年の丁度今頃だったわね」
そう言うと優樹菜と優衣はどこか遠い目をしたまま語った。
○○○○
真琴達がまだ高校一年生の時の事。
そう丁度今ぐらいのバレンタインの少し前
「会長!どうか、どうかお願いします!!」
1年生の目の前で2年生が頭を下げる(しかも女性が男性に頭を下げている)という非常識な光景が繰り広げられていた。
「…とりあえず頭を上げてもらえますか、後藤先輩」
言うまでもなく男性の方が真琴で女性の方は後藤先輩だ。皆さん覚えているだろうか?生徒会副会長の後藤先輩である(詳しくは本編3話を読んで下さい)。
この頃から既に会長にほぼ内定扱いだった真琴は他の生徒会のメンバーとも交流があった。そのため度々生徒会の人が教室に来るのはおかしく無いのだが、さすがにこれは予想外だったようでいつもは賑わっている教室が静まり返っている。
「引き受けてくれるか?」
「…まぁ、いいですよ。だからとにかく「本当だな!?」……はい」
「ありがとう!感謝する!日程はまた放課後に相談しよう!それじゃ!」
言うだけ言って去っていった後藤先輩。あとには何とも言えずため息をつく真琴とどうしていいか分からないクラスメイトだけが残された。
「え、えーと…大丈夫?真琴君」
「ん?あー、優樹菜。ありがとう、大丈夫だよ」
「ところで何があったの?」
お昼という事もあって皆購買に行っていて優樹菜も飲み物を買いに友人と出ており、帰ってきたら後藤先輩が真琴に頭を下げているという謎の光景が広がっていた。
「なんか、料理教えて欲しいんだって」
「…料理?」
「そ、やっと山口先輩にバレンタインに告白するんだってさ。だけど料理の自信が無いから教えて欲しいって」
「ああ、それで…ていうかまだ付き合って無かったんだ」
料理の部分よりも後藤先輩が告白する部分に驚く優樹菜。というのも後藤先輩と山口先輩は傍から見てれば砂糖を吐きたくなるレベルで仲が良いいが、本人達は未だ友達だと言い張っており周囲からは生暖かい目で見られてた。それがようやく前進しそうなのだ、驚きもするだろう。
「後藤先輩の作ったやつなら山口先輩も喜んで食べるだろうに…」
「ま、まぁそれでも好きな人には美味しい物を食べて欲しいんだよ」
「だとしても何で僕なんだよ…もっと他にいるだろ」
「いやいや、真琴君程料理が上手い人居ないと思うよ、ね?」
そこで周りに声をかけてみれば全員が深く頷いた。
「いいよ気を使わなくても…家庭の調理実習ハブられてるし…」
「いやそれは…」
余談だが家庭の調理実習は大体5人1班で行っているが真琴だけはいつも1人でやるか先生の手伝いをしているのだ。これは決していじめ等では無く、ただ真琴の料理の腕が軽く高校生のそれを凌駕している為である。細かい事は省くが、先生がパワーバランスの調整のためやむを得ず真琴を1人にするしか無かった程の事態だった。
しかし未だに自分の料理の腕は普通だと思っている真琴は自分の料理の腕が壊滅的過ぎて省られたと思っている(もちろん真琴以外のクラスメイトは全員この事を知っている)。
「そ、それでどうするの?料理の件。やるの?」
「まぁ…一応引き受けたし丁度週末は予定無いしね」
(しかし何故恋愛経験0の僕がわざわざ休日を潰してまでリア充の手伝いをしなければいけないのか…おのれ山口先輩め、爆ぜろ)
内心は不満たらたらな真琴であった。
ちなみにこれを言っていたらクラスの男子から「お前が言うな!」と、一斉攻撃(口撃?)を受けていただろう。
「でも優樹菜、ちょっと気を付けた方がいいかもよ」
「え?風花ちゃん何で?」
「まぁ…大丈夫だと思うけど…」
一方で優樹菜は風花から意味深な忠告を受けていた。
その日の夜ーー
『あはははははっ、何それ!じゃあ真琴はカップル応援の為にわざわざ料理教室開くんだ』
「そうみたい」
『あははっ、あーダメ、あいつ絶対不満たらたらだよ』
今頃不満を零しながらも料理の勉強をしているであろう真琴を思い浮かべながら優衣は爆笑していた。先程、優樹菜から電話で事の顛末を聞いたばかりなのだ。
「真琴君大丈夫かな…?」
『まーあいつの事だから何とか出来るでしょ。そんな事よりも優樹菜はどうするの?』
「え?私?」
『そうよあんたよ。真琴の料理教室参加するのよね?』
「あー、うーん…」
『え?まさか悩んでるの?せっかく渡すチャンスなのに?』
「い、いやだって…」
何となくその場面を想像し、顔を赤くする優樹菜。
『はぁ…なら私と一緒に参加しましょ。ついでに悠一の作りたいし』
「う、うーん…」
『あと…確証無いけど参加した方がいいと思うよ』
「それ風花ちゃんも言ってたけどどういう…?」
『まぁ明日になれば多分分かるわ』
イマイチ釈然としないままその日は終わった。
次の日
「ねぇ、一年の工藤君が料理教室やるってさ」
「え?本当!?なら私も…」
「いつやるんだろ?」
「まだ参加出来るかな?」
桜ヶ丘高校の女子生徒の間では密かにこの話題でもちきりだった。
さらにそれに混じって
「工藤君がチョコレートの料理教室開くんだって」
「え?ならそれに混じって…」
「味見って事なら」
「最後に実は…って感じで」
何やら不穏な会話も聞こえてくる。
「優樹菜?どうかした?」
「え?あー、ううん何でもないよ。さ、行こ」
「…?そうだね」
真琴は聞こえていないようたが女子特有の第六感とも言うべき部分でそれを感じた優樹菜は直感的に昨日風花や優衣の言っていた事の意味を悟る。
そのまま教室に入ると優樹菜はいつになく真剣な顔をした女子達の話に巻き込まれた。
「…思ったよりも早かったわね」
「風花ちゃん…」
「何となく予想は出来たけど…優樹菜、焦った方がいいんじゃない?」
「わ、私は…別に…」
「はぁ…この娘はまだこんな事言いますか」
「あんたがそんなのだと工藤君取られちゃうよ?」
「それは!…その」
「嫌なんでしょ?」
「………はい」
何だかんだ言ってもやはり真琴が好きな優樹菜だった。
「ま、とりあえずあんたも料理教室に参加しなさい」
「はい…」
「安心しなさい。私達も協力してあげるから」
「え?」
「あんた達、分かってるね?」
「もちろん」「料理教室に入り込もうとする奴らを」「さりげなく排除」
「全ては?」
「「「優樹菜の恋愛成就のために!」」」
「もー!やめてよ!恥ずかしいよ!」
どんなシリアスになろうとも最後は優樹菜をいじって笑いに変える彼女たちであった。
○○○○
「って感じでねー」
「それは…なんというか、素晴らしい友人達だな」
「まぁ、そうなんだけどね」
「あ、なら旦那様は今」
「絶賛料理教室中ね」
そう言って優樹菜は苦笑する。
「ね、それでどうなったの?その料理教室って」
いつの間にかルーンだけでなくアルンやルナも興味深そうに聞いていた。いつもは仲が悪い二人が並んでいる光景に微笑みながらもどこか苦笑した感じで優衣は続きを話す。
「それがね…何とも無かったのよ」
「ん?」「え?」「なんで?」
「それは何と…」「旦那様らしいと言うか…」
アルンやルナ、クロの年少組は首を傾げたが、ルーンとティターニャはオチが読めたのか同情的な視線を優樹菜に送る。
未だに首を傾げる年少組に優衣は噛み砕いて教える。
「真琴に始めに料理教室をお願いしたのは誰?」
「後藤先輩って人?」
「そう。で、後藤先輩は誰のためにチョコレートを作るの?」
「誰って…確か山口先輩って人…あ!」
そこでクロは分かったようでなんとも言えない顔になる。しかし未だに分からないルナとアルンに優衣は答えを告げる。
「真琴は始めっから参加してる人は皆好きな人に想いを伝えるために居ると思ってるの」
「うん…それで?」
「普通好きな人の前でその人のために料理なんて作る?」
「……あぁ」「え?」
「つまり参加した時点でマコトからしたら全員別に好きな人が居るって、しかもそれは自分以外だって事になったのね」
「正解…」
最後はルナの説明だった。それに対して優樹菜が暗い顔で正解を告げる。
「どうしたのユキナ…あっ」
ここでようやくアルンもオチが読めたようだ。
「参加しちゃったんだよね…優樹菜」
「なんて言われたんだ?」
「当日ちゃんと包装して渡したんだよ?そしたら…」
○○○○
バレンタイン当日、優樹菜は真琴から習った事などを踏まえたガトーショコラを作りそれをラッピングして真琴に渡した。
「ま、真琴君!これ!」
「ん?優樹菜…どうしたの?」
「これ、作ってみたの」
「あ、前に教えたガトーショコラ。作ってきたんだ」
「そ、そうなの!だからこれを真琴君に…」
「え?くれるの?」
「そう!真琴君に!」
「ありがとう…」
そう言って真琴は受け取る。
(…あれ?何か軽くない?)
この時点で何か凄いすれ違いが起きている予感が優樹菜の頭を過ぎった。
「でも何で?」
「その、バレンタインだから」
「あ、それでか…だから後藤先輩とかみんな気合い入ってたんだ」
(あ、まさかのバレンタインって気付いて無かったんだ)
まさか大前提が崩れいた事に驚きつつも今までの態度から何となく納得する。
「……待って、"みんな"?」
「うん、料理教えた人達が朝から私のチョコどうですか?って持ってきてくれて…どうしたの?」
苦笑いしつつも嬉しそうに語る真琴に普通なら怒るところだが何故か違和感を感じる優樹菜。
「まさか、受け取ったの?」
「いや?受け取れるわけないだろ?僕にじゃあるまいし」
「…えーと、なんで?」
「凄く気合いの入ったラッピングだったから多分本命に渡す前の最終確認でもしてほしかったんじゃないかな?」
「…」
もはや何も言えなくなる優樹菜。ようやく違和感の正体が分かった、それは真琴が自分を見る時の態度だ。
通常なら少なくとも女子からのプレゼントにテンションが上がるはずだが真琴の視線はなんというか…
(巣立つ雛を見守る親鳥…みたい)
ここでようやく自分の失態に気付く優樹菜。
(つまり料理教室に参加した時点で真琴君から確実に相手にされてない!?)
愕然とする優樹菜。
「でも嬉しいな。今日初めてチョコ貰ったよ」
「え?」
「みんなのは確認してただけだから実際に僕に、って渡してくれたの優樹菜が初めてなんだ」
実はこれには訳がある。
実際に朝は後藤先輩を始めとする本命が別にいる人達が何人か教室に来て真琴にチェックしてもらっていたのだ。これを見た真琴に渡したい人達もストレートに言うのは恥ずかしいのでこれを真似をして渡そうと考えた。
しかしそれを考えたのは彼女たちだけで無く、風花を筆頭としたクラスの女子も同じ事を考えていた…主に利用する方向で。
その後はチェックしてもらうのを装って真琴に渡そうとしても風花達がさりげなく邪魔をする。結果、真琴は勘違いしたまま延々とチョコレートの出来を確認していただけなのだ(これにはさすがに男子達も同情的な視線を送った)。
ちなみにこの事は後日優樹菜が風花から聞いた。
「そう、だったんだ」
「そういう事。ね、これ食べていい?実は朝から何も食べてないんだ」
「うん…」
勘違いしている事や一人目になれた事などでどうしていいか分からず混乱しかける優樹菜。
しかし
「ん、美味しい!」
「そっか、よかった」
なんの裏表も無くただ単純に自分の料理を美味しいと言ってくれる真琴を見てるとまぁいいかと思う優樹菜だった。
(ら、来年こそは…!)
そしてまた決意を固めるのだった。
○○○○
「って感じかな」
「なんというか…大変だったんだな」
優樹菜に同情するルーン。しかしそこでティターニャが疑問を上げる。
「しかし…いくら旦那様でもバレンタインの意味を知っているならユキナさんの気持ちも分かるはずでは?」
「実はね、バレンタインって親しい人に日頃の感謝を伝えるって意味もあるのよ。その時の真琴は多分この意味で受け取ったんだと思うわ」
「ななるほど…」
さすがのアルンも若干可愛そうなものを見る目をしている。 そこで空気を変えるように優衣が手を叩く。
「さ、暗い話はこれでおしまい!皆心配しなくても今年はちゃんと受け取ってもらえるよ」
「そ、そうだよね!うん!」
瞬間的に二人の頭を嫌な予感が過ぎるのも仕方がない事だろう。
「ま、とりあえず作っていくわよ 」
「何作るの?」
「んー、とりあえず簡単なガトーショコラかな?」
「ま、妥当なところね」
「で、出来るかな?」
「大丈夫!みんなで一緒に作るから」
「それじゃあ頑張ろうか」
「「「おー!」」」
そして乙女達はお菓子作りを始める
愛しい彼の事を思いながら
いかがでしたか?
今日の12時にはパート2を投稿します!
よろしくお願いしますm(_ _)m




